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2015/08/22 19:15
21名の次世代女優による舞台『転校生』開幕。演出の本広克行「スターが生まれ、この舞台が10年後に評価されればいい」
平田オリザの戯曲を、映画監督の本広克行が21名の新進女優とともに上演する舞台『転校生』が22日に初日を迎え、公開ゲネプロがZeppブルーシアター六本木で行われた。
21年前に初演されて以来、高校演劇のバイブル的存在の戯曲『転校生』。とある女子高の、いつもと変わらない教室を舞台に「朝起きたらこの学校の生徒になっていた」という転校生と、彼女を迎えた生徒たちの一日が、平田オリザ戯曲特有の「同時多発」会話で紡がれる。今回は1474名の応募のなかからオーディションで厳選された21名の若手女優を起用し、複数のスクリーンと映像を駆使した最新の演出で上演される。
上演後の囲み取材には、キャストと演出の本広克行が登壇。寺岡理恵子役の折舘早紀は「観ていただいたお客様に、生きるということはどういうことか、生まれるということはどういうことなのかを考えていただいて、それをお家まで持ち帰ってもう一度考えていただけたらと思っています」とコメント。堀田早苗役の坂倉花奈は「21人の女子高生が同時にしゃべるお芝居なのですが、細かいところに本広さんのこだわりやエンターテインメントがまぶされているので、そこを楽しんでほしいです」と見どころを語った。
注目すべきは、本広がオーディションで選び抜いた21人の新進女優。その選考基準について「映画だったら全然違う見方をするんですが、演劇のオーディションなので、皆で一つの作品を作ることを大テーマに選びました。(審査では)“見えない縄跳びを皆で跳ぶ”とか(のエチュード)をやって、出過ぎる人はカットしていくんです。で、あんまり出なくて、みんなのことを考えてお芝居している子のなかで、“この子は倒れないな”という子を選びました。丈夫そうだなって(笑)。一人倒れると全部狂ってしまうので。よく倒れずに初日まで来れたなと思っています」と語った。
公募で全キャストを選ぶというチャレンジについて「70倍の倍率から選ばれている方たちですから、それはもう千載一遇のすごいチャンスだと思います。映像を若手の監督さんたちに撮ってもらっているんですが、ここからいろいろな出会いが起きて、たくさんの作品が生まれて、みんながスターになっていって、僕らのやったことが10年後に評価されればいいなあと思っています」と、今回のキャストがこの舞台をきっかけに大きく羽ばたいていくことに期待した。
これだけたくさんの女優たちとの仕事は大変ではないのか、という質問には「実は去年から『幕が上がる』の映画と舞台をやって、ずーっと女の子たちとやっているので、もう男の子、野郎にしか見えないですね、最近(笑)。女子高の先生ってこんな感じなのかな」と笑う本広。その演出法について、野本小百合役の清水葉月は「一歩引いて、みんなから出るエネルギーを待ってくださるという感じがしました。はじめから“こうだ”って決めるのではなくて、稽古を重ねていくうちにみんなのいいところを引っ張り上げて、それを融合させていくという演出だったと思います」と語る。
それを受けて本広は「演出家って上から怒ると楽なんですね。怒って制圧していくのは楽なんです。でも、この子たちを怒ると何にも出てこなくなってしまうので、待つしかなかった。今日ですらまだ待っていて、初日の幕が開いてもまだ待ってるいくつかのポイントがあります。気が長くてよかった。気が短かったら出来ないと思います」と説明した。
飛び抜けたスターがいるカンパニーではないため、囲みの締めの言葉を譲り合ってグダグダになってしまうのはご愛嬌。秋山美和子役の川面千晶は「みんな女子高生に見えるようにしてますが、ほとんどが女子高生じゃないんです、実は。女子高生に見えるようにメイクと髪形は日々研究しているので、映像で細部まで観てもらえると、コイツがんばってんな、プロフィールの写真と違うなって思ってもらえると思うので、その辺が見どころだと思います」と自虐を交えて笑わせた。
舞台『転校生』は22日から9月6日まで、Zeppブルーシアター六本木で上演される。なお21名の女優全員のインタビュー記事とオーディションの模様が、オーディション情報サイト「デビュー」に掲載中だ。
舞台『転校生』キャストと本広克行。(前列左から)逢沢凛、伊藤優衣、清水葉月、折舘早紀、桜井美南、本広、坂倉花奈、伊藤沙莉、今泉玲奈、生田輝、南佳奈(後列左から)森郁月、永山香月、秋月三佳、多賀麻美、石渡愛、芦那すみれ、石山蓮華、藤松祥子、堺小春、吉田圭織、川面千晶。