土曜日の午後、神宮前にあるスタジオに集まって来たのは、下は18歳の女子高生から、上は68歳の男性まで、年齢も、性別も、キャリアも様々な人たち。現役の俳優の指導に合わせて、全員でストレッチ・発声・滑舌・そして台本読み・演技に取り組んでいく。ここはグリーンロード俳優スクール。俳優プロダクション「UNCUT（アンカット）」が運営する、俳優育成スクールだ。プロの俳優志望者から、純粋に演技を楽しみたい人までが、現場と直結した実践的なレッスンを受講している。

この日見学したのは、演技レッスン未経験者向けの「オリエンテーションコース」。昼下がり、近況を報告し合う何気ない会話から、和やかな雰囲気で始まったレッスン。みんな意欲的ではあるが、ピリピリはしていない。数名の欠席者がいるようだが、その人たちは「ＵＮＣＵＴ」から紹介された映像の仕事のため、現場にいるのだそう。先の68歳の男性も、映像に出ている人が羨ましそうで、「もっと演技が上手くなって、現場に呼ばれるようになる」というのも、レッスンのモチベーションになっているようだ。

見られている自分を意識しながらのストレッチの後は、発声しながらのスキップ・カニ歩き・2ステップ・ボックス、そして早口言葉の入ったセリフ読みに、抑揚をつけた外郎売。すべて自分を知って、意識して自分の身体をコントロールするための導入編だ。普段日常生活で何気なくやっている動きも、意識してやろうとすると意外と難しい。実は演技の基本に繋がっている作業を、自分で発見し、楽しみながら行っていくのがオリエンテーションコースだ。

身体も、声も、心もほぐれてきたところで、台本を使った演技に。台本は「夢に向かって勘当同然で家を飛び出し上京した娘に、5年ぶりに電話をかけた父が、母が癌に侵されていることを伝える」というシーン、そして「病室の母を5年ぶりに帰郷した娘が見舞う」シーンだ。受講生の年齢差を考慮し、感情移入しやすく組み合わせで演じやすい台本。まずはそれぞれが自分なりの解釈で演じ、その後「気まずいけど、心の底では深い愛で結びついている」「自分が思いつくことを全部やってみて」「瞬発的に感じて演じないと、リアリティが出ない」など、講師のアドバイスを受けながら、より台本を深堀りする作業を行った。

初心者のためのコース「オリエンテーションコース」は週1回3ヵ月の全12回。プロ志望の10代から、純粋に演技を楽しみたい70代まで、多彩な受講生を受け入れている。最大でも16人という少人数制で、３ヵ月間講師は固定。途中入校も可能なコースになっており、演技のスキルを引き上げるだけでなく、受講生のパーソナリティーを把握し、コミュニケーションを取りながら適切な指導ができるように配慮している。「オリエンテーションコース」が終わると「ベーシックコース」へ進み、エチュード、エクササイズ、シアターゲームなどで、さらに表現を掘り下げていけるレッスンを用意している。

同スクールは、演技の専門学校で10年経験を積んだスタッフが、そのノウハウを踏まえ、「どの受講生が何に悩んでいるか」を3ヵ月ごとに見極め、今必要とする最適な講師を連れてくることができるのが特徴。さらに、エキストラ部を持つ芸能プロダクション「ＵＮＣＵＴ」が運営していることで、レッスン生の「もっと演技が上手くなりたい」という要望に応えてレッスンを提供できるのもメリット。レッスンに通いながら映像の現場に出られ、現場を踏みながらレッスンで学んだことを試すというサイクルで、さらに演技を深く追求できるのだ。

自社併設の専用スタジオを持ち、芸能マネージャーと近い距離でレッスンを受けられ、密にコミュニケーションを取りながら、現場紹介やオーディション紹介など、在籍中から映画やドラマに出演するチャンスが多い「グリーンロード」。演技未経験者も経験者も、学校や仕事と両立させながらレッスンできるので、どうやって俳優をめざしていいか分からない人も、一度俳優の夢を諦めた人も、生活に余裕が出来て好きな演技を追求してみたい人も、あらゆる人に学びの機会を与えてくれる俳優養成スクールだ。