撮影/草刈雅之 取材・文/根岸聖子 ヘアメイク/平山直樹 スタイリスト/本田博仁
大ヒット映画『帝一の國』をはじめ、次期 連続テレビ小説『わろてんか』ではヒロインの兄役を演じるなど、数多くの話題作に次々と出演している千葉雄大が、約5年ぶりとなる舞台作品『危険な関係』で、初の翻訳劇に挑む。様々な作品で幅広い役を演じている千葉が感じる、役者、そして芝居の魅力とは!?
「昔は引っ込み思案で感情を表に出せなかったけど、役者としていろんな自分でいられるのは楽しい」
――舞台出演は、朗読劇『ラヴ・レターズ』以来、約5年ぶりということですが、出演が決まったときの想いは?
「舞台自体久しぶりですし、ご一緒する方も年上のキャスト方が多いので、初めて挑戦するつもりで臨もうと思っています。シアターコクーンという、自分もいろんな作品を見てきた劇場でやらせていただくというのは嬉しいですし、いろんな方に『シアターコクーンの舞台に立つんだ、すごいね!』と声をかけていただく機会が多く、頑張りたいです」
――千葉さんが演じられる、純粋な青年・ダンスニーという役柄について、教えてください。
「要所要所で登場して、周囲に身を委ねているので振り回される若者です。純朴な中にも、青年ならではの青臭さと熱さがあったりして、若さが強調される人物かなと」
――ワークショップに参加されたそうですが、演出家のリチャード氏の印象はいかがでしたか?
「とても物腰が柔らかくて、一人一人ちゃんと見てくださっていて、いろいろと指示を出すというよりは、こちらに考えさせてくれる方でした。こちらが考えて提案していく難しさがあると同時に、楽しさも味わえました。受け皿として、とても器の大きな方なのかなと」
――役者を志す読者にとって、ワークショップというものへの興味も尽きないところです。今回は、どんなことを行ったのでしょう?
「僕も、ワークショップがほぼ初めてという感じだったのですが、台本の読み方というか、一つ一つの台詞についての理由づけや、その台詞の背景にあるものについて細かく解説をしていただきました。あとは、表と裏というか、本音と建前をつくって思っていることと言葉にすることが一致しないお芝居をして、他の参加者がどう感じたかディスカッションしたりとか。ペアを組んで、それぞれが同じ題材でお芝居をして、演じる人が変わるとどれだけ変わるのか……といったこともやりました。1日5〜6時間、全部で3日間だったんですが、集中するので疲れもありましたが、すごく楽しかったです」
――得るものは大きかった?
「そうですね。最近はドラマや映画といった映像作品に関わることが多かったこともあり、やっぱり(舞台は)アプローチの仕方が違うなと。大きく芝居をすればいいというのでもないし、その加減が難しい。ワークショップを受けさせていただいて、台本の読み方についても、今回の舞台はもちろんですが、その後に参加した別の作品でのお芝居についても、少し変わった気がします」
――そうなんですね。
「言われたことに対する瞬発力といったことも含めて、とても勉強になりました。ただ、すべてにおいてそういった準備ができる環境にあるとは限らないですし、必ずしもそれが現場で活かされるわけでもないと思うんです。僕は、もともとはレッスンとかよりも現場を先に経験させてもらいましたし、何の経験もない中で、いきなり現場を経験したほうが成長のスピードが早い場合もある。でもやっぱり、ワークショップって、インプットすることがたくさんあると思うし、そこで学んだことを現場で試すことができたりもすると思うので、興味があるならワークショップを受けてみたほうがいいと思います。僕もまたやってみたいなと思いました」
――主演を務める玉木宏さんや鈴木京香さんについては、どのような印象を抱いていますか?鈴木さんとは初共演となりますが。
「鈴木京香さんは、ポスター撮影のときにご挨拶させていただいた程度なんですが、鈴木さんも宮城県出身の方で、同郷の方とご一緒させていただく機会もあまりなかったので、今回共演できてすごく嬉しいです。玉木さんとは何度かご一緒させていただいて、先日もご飯に一緒に行かせていただきました。すごく話しやすい方なので、舞台で共演できることが楽しみです」
――いろんな現場で、演じる作品や役柄の幅が広がっていくにしたがって、感じてきた芝居のおもしろさというのは?
「楽しいこと……なんだろう?(笑)。いや、楽しいんですよ! 気の合う人と現場で出会える楽しさもあれば、“今の瞬間、何か生まれた!”と感じられる楽しさもある。けど、やっぱり悩んだり考えたりと大変な部分もあって。両方あるから、おもしろいのかな。苦しい時期、楽しみを見いだせないようなときでも、その一瞬一瞬をどう捉えるかで、変わってくるとは思うんです。些細なことで伝わり方に変化があるのは、おもしろいなと思いますね」
――悩む、考えるというのは、“これで良かったのかな?”といった迷いのようなもの?
「それもありますし、作品だけでなく、自分の役者人生を考えたときに、これからどういう方向に進んでいけばいいのかな?といったこともですね」
――イメージとしては、話題作への出演も続いて、とても順風満帆な印象ですが。
「いろんなジャンルの作品だったり、役にしても本当にいろんな役をやらせていただいていて、今の状況はとてもありがたいなと思います。あと『バラエティ番組での出方が特殊ですね』と言われることもあるんですよ。別に自分では狙ったわけでも何でもなく、普通に出たつもりだったんですけど(笑)。でも、今だけが良くてもダメなので、細〜く、長くやれればいいかなって。ドカンと一気に注目を浴びるのも楽しそうだし。疲れそうだけど(笑)」
――疲れそうというのは?(笑)。
「大変そうだなと。でも、そういうものに憧れていた時期もありました。20代前半の頃は、ドカンと売れたいみたいな気持ちはありましたけど、最近は、おもしろければいいかなって」
――おもしろい作品に関われればと。
「やっぱり、自分の中にも好みというものがあるんですよ。おもしろいなと思えるものもあれば、共感しづらいものも、うっかり安易に共感しすぎてしまうものもある。でも、おもしろいかどうかっていうのは、それを観るお客さんが決めることであって、関わる以上、好みうんぬんではなく、きちんと楽しむべきだなと思うようになりました。大変だなと思う瞬間もありますが、どんな作品も自分なりに楽しめるようになってきたと思います」
――コメディもシリアスな作品にも出演していますが、どちらがより精神的に消耗するとか、そういう違いはありますか?
「吉沢(亮)とそういう話をするとおもしろいんですよね(笑)。彼は『コメディタッチの役のほうが疲れる』って言うんです。僕は、彼のコミカルな演技、すごい好きなんですけどね。僕自身は性格的に決して明るいタイプじゃないけど、あえて、どちらかを選べと言われれば、明るい役のほうがやりやすいかなぁ。暗めの役を演じているときって、なぜか突然大きな声を出したり、急に笑い出したり、奇行に走るクセがあるんです(笑)。周りからは『大丈夫!?』って言われるけど、おそらく、精神のバランスをとろうとしているんでしょうね。どちらにしても、台本を読んでいるときは悩みますよ。現場に入ってお芝居をしていく上で、徐々につかんでいく感じです」
――自己評価と、世間での評価のズレを感じることは? 例えば、自分では“これで良かったのかな?”という気持ちがあったけれど、評判がよくてびっくりした……など。
「自分では上手くハマったか不安だったりしても、『すごく良かった!』と言われることはあります。よくわからないですよね(笑)。だから、自分が納得できないとしても、監督がOKを出してくれたなら、それでいいんだって思うようになりました。客観的に見ている人の目は間違っていないんだなって」
――自己評価とギャップのあった役で、印象に残っているのは?
「最近だと、『帝一の國』ですね。僕は割と反省点が多かったんですよ。でも、公開した後に、周り『あそこ、良かったよね』って言われるところが、大体、監督から言われて直した部分だったんですよ。“ああ、やっぱり監督、すごいな”って思いました」
――そんな千葉さんにとって、転機となった作品というのはありますか?
「よく聞かれるんですけど、転機とかって、自分ではよくわからないんです。全部、一生懸命やっているし。なので、常に最新のものになりますね。目の前にある役に対して、心を込めてやっています」
――10月からは、NHKの連続テレビ小説にも初出演します。ファン層がさらに広がりますね。
「広がったらいいなって思いますね。この間、テレビを観ていたら、年代別の俳優人気ランキング的なのをやっていて、僕、唯一40代の部門にだけ入っていて、3位だったんです。それがすごく不思議で、“40代の方たちには何が響いたんだろうか!?” って。『家売るオンナ』とかかな?って考えたりしましたね。いろんな世代の人たちに楽しんでもらえるように頑張りたいです」
――気になるところですね。では最後に、デビューを目指している読者にメッセージをお願いします!
「僕なんかが偉そうなことは言えないんですけど、この流れだと言わなきゃいけないみたいなので(笑)。僕は、自分のできることは多いほうがいいし、できないことを作らないっていうのは大きいと思っているんです。一芸秀でたものあったら武器になると思うし、ないならないで努力すればカバーできることもあると思います。僕自身、どんなに苦手なことでも『できない』とは言わないようにしています。大変なこともありますけどね。あと、この仕事は両親に楽しみも与えられますよ……って、そういうことじゃないか(笑)。役者というお仕事は、僕みたいな、昔は引っ込み思案で感情を表に出せなかったような人間でも、いろんな自分でいられるのは楽しいです。なんだかまとまりがなくなっちゃったけど(笑)、ぜひ頑張ってください!!」
千葉雄大(ちば・ゆうだい)●1989年3月9日生まれ、宮城県出身。ジャパン・ミュージックエンターテインメント所属。2010年『天装戦隊ゴセイジャー』(テレビ朝日)で俳優デビュー。その後、ドラマ、映画など様々な作品に出演。2017年は、映画/『Bros.マックスマン』、『暗黒女子』、『ReLIFE リライフ』、『帝一の國』、『兄に愛されすぎて困ってます』、ドラマ/『ファイナルファンタジーXIV光のお父さん』(MBS・TBS)、『帰ってきた家売るオンナ』(日本テレビ)、『ソースさんの恋』(BSプレミアム)などに出演。今後も、9月30日公開の映画『亜人』、10月2日スタートの連続テレビ小説『わろてんか』(NHK)、10月スタートのドラマ『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』(フジテレビ)への出演が控える。
シアターコクーン・オンレパートリー2017
DISCOVER WORLD THEATRE Vol.2『危険な関係』
10月8日(日)〜31日(火)Bunkamuraシアターコクーン
DISCOVER WORLD THEATRE Vol.2『危険な関係』
10月8日(日)〜31日(火)Bunkamuraシアターコクーン
昨年10月の『るつぼ』続く、シアターコクーン×海外演出家による“DISCOVER WORLD THEATRE“第2弾。上演作は18世紀フランスの作家ピエール・ショデルロ・ド・ラクロの恋愛心理小説を原作にした『危険な関係』。
≪story≫
社交界に君臨する妖艶な未亡人メルトゥイユ侯爵夫人(鈴木京香)は、かつての愛人ジェルクール伯爵への恨みから、その婚約者セシル・ヴォランジュ(青山美郷)の純潔を踏みにじろうと稀代のプレイボーイであるヴァルモン子爵(玉木宏)に助力を求める。しかしヴァルモンは、叔母ロズモンド夫人(新橋耐子)のもとに滞在している貞淑なトゥルヴェル法院長夫人(野々すみ花)を誘惑しようとしているところで、その依頼を断る。ところがセシルの母ヴォランジュ夫人(高橋惠子)こそが、トゥルヴェル夫人に彼を非難し近づいてはならぬと忠告していることを知り、ヴォランジュ夫人への復讐を決意、メルトゥイユ夫人の計画にのる。
一方、清純なセシルは純粋な若き騎士ダンスニー(千葉雄大)と恋に落ちていた。そこにメルトゥイユ夫人の策略が、そしてヴァルモンはトゥルヴェル夫人を誘惑に……。 二人が仕掛ける退廃に満ちた恋愛ゲームが繰り広げられていく。
≪story≫
社交界に君臨する妖艶な未亡人メルトゥイユ侯爵夫人(鈴木京香)は、かつての愛人ジェルクール伯爵への恨みから、その婚約者セシル・ヴォランジュ(青山美郷)の純潔を踏みにじろうと稀代のプレイボーイであるヴァルモン子爵(玉木宏)に助力を求める。しかしヴァルモンは、叔母ロズモンド夫人(新橋耐子)のもとに滞在している貞淑なトゥルヴェル法院長夫人(野々すみ花)を誘惑しようとしているところで、その依頼を断る。ところがセシルの母ヴォランジュ夫人(高橋惠子)こそが、トゥルヴェル夫人に彼を非難し近づいてはならぬと忠告していることを知り、ヴォランジュ夫人への復讐を決意、メルトゥイユ夫人の計画にのる。
一方、清純なセシルは純粋な若き騎士ダンスニー(千葉雄大)と恋に落ちていた。そこにメルトゥイユ夫人の策略が、そしてヴァルモンはトゥルヴェル夫人を誘惑に……。 二人が仕掛ける退廃に満ちた恋愛ゲームが繰り広げられていく。
『危険な関係』公式サイト |
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