「21年生きてきて、この舞台が一番大変です(笑)日向というキャラクターだからこそ、最後まで乗り切れた」 - 須賀健太 | Deview-デビュー
須賀健太

撮影/booro(BIEI)取材・文/永堀アツオ

2015年11月に上演され大きな話題を呼んだ、大人気バレーボール漫画『ハイキュー!!』を原作とした舞台作品、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」。初演の興奮が冷めやらぬ中、この春に、早くもパワーアップしてカムバック! 初演に続き、主人公・日向翔陽を演じる須賀健太に、前作での手ごたえ、再演の感想、意気込みなどをたっぷりと語ってもらった。
「21年生きてきて、この舞台が一番大変です(笑)。日向というキャラクターだからこそ、最後まで乗り切れた」
須賀健太
――ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」の再演が決まった時の心境から聞かせてください。
「再演というのは、本当にお客様の声があったからこそ決まったことだと思うんです。僕らはもともと、“前例がない、新しい演劇を作ろう”というところからスタートしていて。何が正解か見えない状況でやっていたので、再演決定という形で、僕らが正しい方向に向かって進んでいけていたんだなっていうのを実感しました。一人でも多くのお客様に見ていただきたいので、また新しいお客様に見てもらえるチャンスをいただけて、素直に嬉しいです」
――初演の舞台では手応えを感じていましたか? 
「幕が開くまでは、すごく不安なところが多かったんです。まず、人気漫画が原作なので、その中で僕らは演劇らしさをどれだけ出せるかということをすごく考えて、この作品と向き合っていて。この作品は、プロジェクションマッピングとか、技術的なところも見どころの1つではあるんですけど、僕ら役者はお芝居に対して熱量を注いでいて。『映像を作ってくださるスタッフさんに負けないお芝居を見せよう』って、常に言っていたんです。だから、お客様はもちろん、舞台関係者の方にも、『お芝居として面白かった』って、演劇に対して誉めていただけたのは、すごく嬉しかったです。あと、1幕終わって休憩に入るときに、客席の声がバックステージまで届いてきたのも嬉しかったです。客電がついた瞬間に“うわ〜!”っていうような感じの盛り上がりを初日に感じられたのは良かったなって」
須賀健太
―― 最初は、映像の斬新さに目を奪われますよね。プロジェクションマッピングによる映像や音と演劇の融合は大変ではなかったですか?
「本当に一歩一歩という感じでした。最初は、“バレーボールの試合を舞台で見せる”と聞いても、全然想像がつかなくて。“バレーボールとお芝居を同時に楽しんでもらう、新しいものを作らないといけない”というところから始まっているので、すごく試行錯誤をしました。ただ、ありがたいことに、ものづくりを一緒にさせてくれたスタッフさんたちで、僕たち役者にも作って いく部分から参加させてくれたんです。『キャラクターのことはお前らが一番分かっているだろうから、個々のポーズや動きは自分たちで決めてほしい。外から見た流れや大筋を調整するから』という感じで接してくれたので、僕たちはやりやすかったし、一緒に作品を作っている感がより強く感じられました。ただお芝居をしているだけではない感覚も味わえたことが、一人一人のモチベーションにも繋がったんじゃないかなと思います」
須賀健太
――新しい舞台の形を作る中で特に苦労したことは何ですか?
「映像と動きを合わせるっていうことです。セリフや音の中に、何百何千というきっかけが隠されていて。それが、少しでもズレてしまうと、お客様に伝わってしまうので、1つ1つをクリアしていく作業はすごく大変でした。でも、それが、冷静でいられる要素にもなっていて。100%感情だけで芝居に夢中になってしまうと、映像と合わなくなってしまうので、そこの冷静さは絶対に気をつけていました。他にも、動きの中では、ストップモーションやスローモーションを大事にしていたし、リフトやフォーメーションも意思疎通をしっかりととって、全員で息を合わせないとカッコよく見えない。リフトに関しては、誰かが間違えしまうと怪我にも繋がってしまうので、最初はすごく苦戦しました。公演中も毎日終演後に、定点カメラの映像を観て確認しながらやっていました」
――スパイクを打つときに、みんなで持ち上げるリフトやダンスなど、様々な演出方法を駆使して、“バレーボール”を表現されていましたよね。
「バレーボール特有のスピード感も見せたいと思っていたし、レシーブしてスパイクを打つまでの、ボールがコートを行き来する感じを、ボールを使わないシーンだったからこそ大切に見せていくことを意識しましたし、“今、ボールがどこにあるか”という共通認識も持ちながらやっていました。いろいろとすごくシビアだったので、みんな悲鳴をあげながら練習していましたね」
――体力的にも大変そうですよね。ずっと走ってるか、ジャンプしてるかで、特に日向は最初から最後までずっと舞台に出っぱなしでした。
「21年生きてきて、この舞台が一番大変です(笑)。制服からユニフォームへの着替えも舞台上でやっちゃうくらい、舞台上に出っぱなしなので、全てをひっくるめて右に出るものはないですね」
須賀健太
――肉まんを美味しそうに食べまくるシーンもありましたが、本当は水が欲しかった?
「あの肉まんの辛さったらないです(笑)。1幕の最後、口がパッサパサなのに、“まだ水分を奪うか!”って(笑)。実は、前回の宮城公演ではあんまんに変えてもらったんです。そうすると、不思議と入るんですよ。きっと体が糖を欲していたんだろうなと思います」
――そんなことがあったんですね(笑)。日向翔陽というキャラクターに関してはどう捉えてました?
「僕はもともと原作の漫画 が大好きで、日向はまっすぐで純粋で、すごく人が大好きなんだなって感じていて。中学生時代は仲間がいない中、一人でバレーボールをやっていた。だからこそ感じる劣等感や、背が低いことへのコンプレックスもあるけど、それ以上にバレーボールが好きで、仲間が好きで、だからそんなこと関係ないんだよ!という強さがあると思っています。だから、僕も日々の稽古場でキャストのみんなやスタッフさんの良いところや好きなところを見つける作業をしていたんです。そうすることで、さらに作品やカンパニーを好きになるという、すごくいい環境の中でやらせてもらえた。でも、人を好きになるというか、無条件で信頼するのは、ものすごくパワーがいることだなとも感じて 。改めて、日向の生き方の大きさを感じました。あと、日向はエネルギーの塊で、普通の人だと諦めてしまうような瞬間から、さらに一歩踏み込んでボールを追う力があるんですけど、あのシーンは、あと一歩踏み出すことがリアルにきついんです。すごく大変だし、キツイこともあるけど、日向というキャラクターだからこそ、ちゃんと最後まで乗り切れた感はあります」
須賀健太
――カンパニーはどんな雰囲気ですか? 同世代の男子ばかりの集団になってますが。
「みんなそれぞれに“『ハイキュー!!』愛”を感じるので、それが一番、良いカンパニーだなと思う大きな要因ですね。稽古場でも、合間に端で漫画を読みながら、それぞれのキャラクターのフォームを研究したり、こっちではボールを使ってバレーボールの練習をしたり、こっちではダンスの練習、あっちでは芝居をやっているとか。それぞれがちゃんと目標を設定して、足りない部分を補い合うことが自然とできていたカンパニーだったなと思います。あとは、若い世代ばかりなので、本当に部活みたいな感じ。朝から晩まで一緒にいて、ご飯も一緒に食べて。ただ、舞台の稽古をしているだけじゃない感覚もありました」
――初演を経ての再演に向けては、どんな意識でいますか?
「前回は、ただただガムシャラだったんです。一から作品を作り上げるということに対して全力だったし、運動量も多かった。出せるものを全て出して、持ち寄れるものを全て持ち寄って作った作品だったので。その良さは残しつつ、もうちょっと表情とかを突き詰められたらいいなと思っています。映像とかもさらにパワーアップしてきてくださると思うので、僕らも芝居の面で負けないように、もっと豊かに、それぞれの魅力が見えるようなお芝居を心がけてい けたらいいなと思っています」
――『Deview』読者のなかには、舞台観劇の経験が少ない読者も多いんですが、映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍されていて、すでに15年のキャリアを積んでいる須賀さんが感じている“舞台の魅力”とはなんでしょう。
「舞台に出演するようになったのは、ここ3〜4年なんですけど、僕が舞台の魅力に気づいたのは、やっぱり実際に生で観てからなんです。生で目の前でお芝居をする、あのピリピリした感覚。役者が目の前で叫んでいたら、同じような感情にさせられてしまう瞬間があって。ストレートに感情が見えるのが舞台なんじゃないかなって思うし、それこそ、役者になりたい方は、ぜひ、たくさん舞台 を見てもらいたいです。役者さんの技術がすごく出る場所でもあると思います。あと、舞台はいくら稽古をしても、初日とか特に、手足がガタガタ震えて出たくないとすら思ってしまうようなプレッシャーを感じる瞬間があるんです。でも、幕が上がると時間がものすごく早く進んでいって、“もう終わっちゃう”っていう感覚になってくる。終わったあとに、お客様に拍手していただいた瞬間、“これを見るためにやって来たんだな”って感じるし、たくさんのことを教えてくれ る場だと思います」
須賀健太
――では、最後に芸能界デビューを目指す読者への応援メッセージをお願いします。
「なんか、カッコイイこと言いたいですね(笑)。う〜ん……『好きこそものの上手なれ』っていう言葉がありますが、僕は本当にその通りだなと思っているんです。好きでいればいるほど、良いものになったり、良い感じ方ができるんじゃないかなって。僕自身、なんでこの仕事をしているかと言うと、やっぱり好きだからだし、楽しいからっていうのが一番大きい。もちろん、一筋縄ではいかないし、簡単なことではないし、今でも”ああすれば良かった、こうすれば良かった“って思うことはたくさんある。正解がない仕事だけど、そういうのも込みで“好き”とか“楽しい”って思うことが一番大切なのかなと思うので、そういう気持ちを絶対に忘れないで、持ち続けて欲しいなと思います」
Profile
須賀健太(すが・けんた)●1994年10月19日生まれ、東京都出身。ホリプロ所属。4歳で子役としてデビューし、その後、ドラマ、映画、CM、舞台等、様々な作品で活躍中。映画『シマウマ』(5月21日公開)、映画『バースデーカード』(2016年10月公開)への出演が決定。
ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」"頂の景色"
【大阪公演】4月8日(金)〜4月17日(日)シアターBRAVA!
【東京公演】4月25日(月)〜5月8日(日)AiiA 2.5 Theater Tokyo
『ハイキュー!!』
原作は『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて絶賛連載中の大人気バレーボール漫画『ハイキュー!!』。2015年11月に上演された初演は、東京、大阪、宮城の3都市で行われ、全公演が完売&大千秋楽には日本演劇史上初の全国92館、2万人がライブビューイングで見守る中、大盛況のうちに幕を閉じた。そして、その興奮が冷めやらぬまま、2016年春、"速攻"再演が決定!! 熱い演劇と最新映像テクノロジーを高次元で融合し、さらにパワーアップした漫画×演劇×映像のハイブリッドパフォーマンスで、"頂の景色"に挑む!
≪story≫
「小さな巨人」に憧れ、バレーボールに魅せられた少年・日向翔陽は、やっとの思いで出場した中学最初で最後の公式戦で、「コート上の王様」の異名をとる天才プレイヤー・影山飛雄に惨敗。リベンジを誓い烏野高校排球部の門を叩いた日向だが、何とそこにはにっくきライバル・影山の姿が…!? 練習の中で、変わっていく日向と影山、そして烏野高校排球部。 それぞれがバレーにかける熱い思い。ボールを落としてはいけない、持ってもいけない。3度のボレーで攻撃へと“繋ぐ”スポーツ、バレーボール。 仲間と繋いだ先に見える景色は!?

(C)古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会
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