『Nのために』榮倉奈々と若手俳優たちの切なさ(3/5) | Deview-デビュー
2014年12月8日

 『Nのために』で主人公の希美の高校時代から15年間を演じる榮倉奈々。本人は今、26歳。と改めて確認して驚いた。高校生の場面でも、まったく違和感がなかったから。

 実際の高校時代は『Seventeen』のトップモデル。当時、本人が「誌面に出た自分の写真を見て、すごく笑っていたのでビックリした」と話していたが、ハチ切れるような笑顔がチャームポイントだった。

 モデル系事務所から研音に移籍すると、女優活動が本格化。NHK朝ドラ『瞳』や実話を元にした映画『余命1ヶ月の花嫁』のヒロインなど多くの作品に出演している。身長170pとスタイルは抜群。

 モデル出身の女優は『ドクターX』の米倉涼子のように大成することもあるが、数でいえば「モデルだけやっとけ!」と思うセリフ棒読み系が多い。榮倉は成功例ではありつつ、やはりヴィジュアルの印象が強く“演技派”のイメージはなかった。

 だが、『Nのために』での女優ぶりと言ったら。島での高校時代は、裕福な家を追い出されてもプライドだけは高い母親が、なけなしの生活費で高級化粧品やブランド品を買い漁るのに憤る。怒鳴って責めながら、交錯する怒りと虚しさ。自分への依存を強めて「行かないで」という母親を振り切って東京に出てからも、電話が来ると「昔に引き戻される」と硬直して出ることができない。

 そんな苦悩が生々しく、観ていて胸が痛くなる。モデル時代から武器だった笑顔ナシで引き込む。『黒の女教師』では笑わない役がぎこちなかったが。逆に成瀬とのシーンでは、昔と変わらぬピュアな笑顔を見せて。その落差に希美への愛おしさが募る。これだけ心を動かされる女優は少ない。というか、榮倉自身、ここまでの演技をしたことはあったか?

 そして、成瀬を演じる窪田正孝にも同じことを感じるのだ。(続く)


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