低視聴率でも感動を呼ぶ『あすなろ三三七拍子』(5/6) | Deview-デビュー
2014年9月3日

 人の応援だけして楽しいのだろうか? と自分は応援団について思っていたが、『あすなろ三三七拍子』で応援団OBの齊藤はこう言った。「本気でやってたら、自分の応援が届いてるかなんて邪念は一切出てこない。頑張ってもらいたくて、とにかく声を出す。祈りに近いな」

 だが、彼と同期で野球部のエースだった野口は、病床で奇跡的に一瞬意識を取り戻し、息子の健太に言った。

「俺はあいつらに励まされて投げ抜いた。風が強い日も齊藤がビシッと旗を立ててるのを見て、俺も逃げ出すわけにいかないと」

 いよいよ危篤となった病院に、応援団とOBの2人が駆けつける。彼にエールを贈るために。大介との行き違いで団を辞めさせられていたチャラ金髪の翔も「僕にも応援させてください! 美紀ちゃんのことと関係なく」と懇願する。フェミニスト論の原先生の地方研究会に同行していた沙耶も抜け出してきた。「こっちのほうが大事ですから」と。応援団の体質に否定的な彼女の中でも、何かが芽生えていた。剛力彩芽の男前ぶりが光る。

 意識のない野口の病室を見上げ、土砂降りの雨の中で、病院の中庭から無言のエールを贈る一行。まさに祈りのように。そして野口はひと筋の涙を流して旅立って行った。

 ベタと言えばベタだが、胸を打つ話の連続。考えたら、原作は重松清の小説だし。このドラマ自体から、自分が応援されているような気持ちにもなる。とはいえ、視聴率は大苦戦中。初回7.7%から2話で5.1%に落ち、4話では4.1%に。でも、感動の5話で5.0%に持ち直した…と言えるのか? 2話カットして事実上の打ち切りという噂もあるが。

 視聴率が低いとつまらないと先入観を持ちがちだが、それで『あすなろ三三七拍子』を観ないのはもったいない。そして自分が観たきっかけの飯豊まりえにも、注目どころがある。(続く)


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