『若者たち2014』で蘇る夢を捨てた記憶(3/5) | Deview-デビュー
2014年8月18日

 『若者たち2014』で妻夫木聡が演じる5人兄弟の長男は、両親を亡くした後に弟たちを養ってきた。オリジナルと同じ設定だが、恋人の妊娠を機に自らの結婚を決めた途端、失業して職探しに明け暮れる。

 瑛太が演じる次男は、恋人の海外での移植手術費用を工面しようと3000万円の詐欺事件を起こし、刑務所帰り。満島ひかりの長女は看護師で、医師との不倫関係に悩む。

 などなど個々に描かれるストーリーは特に昭和的でもないが、そもそも5人兄弟というのが少子化の現代にそぐわない。ちゃぶ台で揃って食事する光景も、家屋の作りも。

 そして、妻夫木が熱い。

病院で初対面の相手に「子供が幸せになれるかどうかでなくて、親が幸せにしてやるんだろう!」と叫んだり。とにかく声がデカい。兄弟にはなおさら。

生き方について熱弁をふるい、弟たちが反論すれば、本音のぶつけ合いが始まる。挙げ句「表に出ろ!」と雨の降る中で、ケンカというかプロレスもどきで決着を付けようとしたり。

 今どき、こんなケンカをする兄弟はいない。

「昭和にはいたのか?」と言われたら、それもわからないが、最近のお互い傷つかない距離を保つ人間関係では皆無のはず。だから視聴者に引かれて、裏のキャラ刑事もの『ST』に持って行かれるのか。

だがハマれば、この熱さは悪くない。

役者たちの芝居が存在感を放つだけに引き込まれ、毎回満腹感がある。それも、こちらが昭和の人間だからか。

 何かとプロレスが出てきて、妻夫木が瑛太にドラゴンスリーパーをかけたりするのは笑うが、プロレスは感情を技にしてぶつけ合いながら、根底には互いへの信頼感があって受け合うもので、この兄弟の関係性と重なる。

 個人的に兄弟で最も気になるのは、柄本佑が演じる三男。このサイトのユーザーさんなら、多くが共感するはず。彼は学生劇団の座長を務め、演劇に夢を持っている。(続く)


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