朝ドラ『あまちゃん』を盛り上げる程よい王道の外し方(2/6) | Deview-デビュー
2013年5月9日

 3月まで放送されたNHK朝ドラの前作『純と愛』。ヒロインの純(夏菜)が一向に夢に辿り着けない展開が続いたが、終盤に故郷の宮古島に戻り、譲られた別荘を改装して自らホテルを開くことなり、さすがにラストは“めでたし、めでたし”かなと。

 だが、予想は最後まで裏切られた。廃墟状態だった別荘を兄弟たちとリフォームして、何とか開業のメドが立ったと思いきや、手を取り合ってきた夫の愛(いとし=風間俊介)が脳腫瘍で倒れる。手術して命は取り留めたものの、意識は戻らず。おまけにホテルも、オープン直前に台風でメチャクチャに…。

 そんな状態で迎えた最終回。せめて愛の意識が戻ることを願ったが、それすら叶わなかった。「いつか愛くんが目覚めたときのために、ホテルを“まほうのくに”にしておくから」と、純が眠る彼にキスして、かすかに指が動いたが、そこでおしまい。はぁ〜っ…。

 脚本は『家政婦のミタ』で40%の視聴率を叩き出した遊川和彦。当初から「型破りな朝ドラを」と広言してきた。確かに、こんな救いのない朝ドラは例がないだろう。

 意図は分からなくもない。“まほうのくに”を目指すヒロインに突き付けた苛酷な現実。もしかしたら震災後の東北が頭にあったのかも。周りが絆だ何だ言っても、津波と放射能に奪われたものは一向に取り戻せていない。絵空事のハッピーエンドより、すべてを失っても生きるヒロインこそエールなのかも。

 しかし、平均視聴率は17.1%。ここ3年の朝ドラでは最低だった。毎朝続くドラマぐらい夢を見させて欲しい。そう思った視聴者が多かったのだろう。

 そこへ行くと、後を継いで放送中の『あまちゃん』は正反対。もう毎日素晴らしく幸せな気持ちにさせてくれる。
(続く)


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