ミスiD2015グランプリで、イラストレーター／POP思想家の水野しずが待望の初論考集『親切人間論』を刊行し、4月7日に紀伊國屋新宿本店イベントスペースにて発売記念イベントを行った。

　『親切人間論』は、社会で無根拠に「当然とされていること」を水野しず流に、全く違う角度から問い直すエッセーであり、文学であり、そしてすこぶる笑えて思わず唸る哲学書。装丁をブックデザイン界の鬼才・祖父江慎が担当しており、斬新な切り口の文章をさらにクリエイティブな表現にしている。

　記者会見で水野は、本書のタイトルの“親切”についてコメント。「世の中は法律的には問題なさそうだけれど、よく考えれば人の道を外れているんじゃないかという詐欺のような行いがルーティーンになっていて、そういうオカシな力学に対抗できるものは何かと真剣に考えた結果、辿り着いたのが“親切”だった。“親切”しか今のシステマティックなおぞましさに勝てるものはない」と力説した。

　先週行われたイベントでも「これからは“親切”が流行ってほしい」と語っていたが、“親切ブーム”の火付け役になるかもしれない。そして「私の気持ちを絞ったフレッシュな、果汁100％がこの本。“親切にしたい”という心を、いろいろな手を尽くして形にできた」と、既成のジャンルを超越する、出来上がったばかりの型破りで真新しい書籍の手応えを語った。