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2023/01/01 12:01
成島出監督最新作『ファミリア』にて演技初経験で吉沢亮の妻役という大役に抜擢 新人俳優・まらい果インタビュー「演技が自分にとってのセラピーになりました」
『八日目の蝉』『ソロモンの偽証』の成島出監督の最新作『ファミリア』(役所広司主演/2023年1月6日全国ロードショー)に、演技未経験ながらオーディションで出演を勝ち取った新人俳優・まらい果。映画初出演で俳優・吉沢亮の妻役という大役に抜擢され、現在は成島出監督が所属し、映画・ドラマ・CM・舞台等で活躍する俳優・アーティストのマネージメント、育成を手掛けるアンカットで演技を学ぶ彼女に、映画出演のきっかけ、演技に対する思い、今後の抱負について聞いた。
■映画『ファミリア』出演/まらい果インタビュー
――映画『ファミリア』の重要な役にキャスティングされているまらい果さんが、演技未経験だったと聞いて驚きました。元々俳優を志望されていたんですか?
「俳優なんて夢にも考えたことが無かったし、自分ができるなんて考えたことも無かったんです。高校2年生の時に、通っていた学校の英語の先生が趣味でエキストラをやっていて、“やってみない?”と誘われて。ちょっと興味があったので参加しました。それが『ファミリア』のエキストラのオーディションだったんですが、その後、ワークショップを経験して演技の魅力を知り、人生がガラッと変わりました。これまでそう感じるものに出会ったことが無かったんですが、演技にはピーン!と来るものがありました」
――日本で生まれて、7歳から16歳までパキスタンで暮らしていたそうですね。エキストラに参加した高校生の時には帰国していたんですか?
「そのころは浜松に住んでいました。この映画ではブラジル人のエキストラが必要で、ブラジル人のコミュニティーが多いという理由で浜松でオーディションが行われていたんです。自分はブラジル人じゃないけど、そう見えるんじゃないの? どうせエキストラだしって(笑)。有名な役者さんが来ているし、現場を見るだけでも楽しいし、いい経験になるんじゃないかと思って参加しました。最初のオーディションは浜松で、2回目のオーディションは名古屋でした。そこから3ヵ月ぐらい続くワークショップが始まって…。そこからはすごく濃い日々でした」
――演技は初めてだったとのことで、未経験のことに挑戦するのはいかがでしたか?
「ありえない話でしたね。日本のことも、この業界のこともよくわからないけれど、でもきっとすごく大きなことだということは感じました。演技をするというのは、普段の居心地のいいところから、すごく居心地が良くないところに行く一歩ですし。演技って自分を表現するもので、シャイな人にはできない。でも、その一歩を越えた瞬間のことはすごく覚えています」
――「演技をする」というその一歩を、どうして越えられたんですか?
「成島監督の力が大きいです。監督は人のことをすごくよく見て下さっているんです。名古屋のオーディションに行ったときから、この人の前で嘘をついてもすぐにバレるな、やるならば100%をあげないといけない、ということを感じて。でもそのとき(演技を)やらないという選択肢は自分の中にありませんでした。監督は自分が発するものを全て見逃さずに受け取って、それをどうやって映画に変えていけばいいかという目で見て下さる。自分が全部をあげれば、形にしてくださるという信頼感が最初からできていたんです」
――小手先の演技テクニックが通用しないから、逆に未経験であっても100%の自分を出せばいいと思えたんですね。
「演技の経験もスキルも知識も無くて、自分しかないから。とにかく台本を読んでリアルに感じた、今できることをそのままで、というふうに引き出してくれたんです」
――撮影現場はいかがでした? 舞台挨拶では役所広司さんや吉沢亮さんが、自然でいられる空気を作ってくださったと言うのを聞きましたが。
「演技が初めての私が一緒に仕事出来るなんて思いもしない、本当にすごい方々じゃないですか? でも特にお二人はそれを感じさせずに、人として、ただそこにすごくリラックスして居ることができるんです。ナチュラル過ぎるんですけど、逆に偉大さを感じました。私たちは役に入る時、ググッてスイッチを入れないといけないけど、役所さんも吉沢さんも役にもスーッて入っていけるんですよね。これが上手い役者さんの居方なのかと感じました」
――子守唄を歌うシーンも印象的ですが、監督はまらい果さんの声の良さが抜擢の決め手だったとも語っているのですが、監督から褒められることはありましたか?
「監督ってあまり褒めてくれなくて、そこも好きなんですけど(笑)。吉沢さんも役所さんもみんな集まって台本を初めて読み合わせをする日に、すごく緊張しながら歌ったんですが、役所さんは“上手いね”って言ってくださって。その時に初めて“この子歌上手いんですよ”って監督に言ってもらって。そう思ってたんだなって。すごく嬉しかったです。役所さんにはいっぱい褒められましたけど」
――今回は、ブラジル人のキャストもオーディションで多数抜擢されています。
「すごく面白いコばかりなんですけど、全然バラバラにならなかった。みんな個性は強いんですが、心で繋がっていて。3ヵ月のワークショップがあったから絆も深まりましたし、本当に一生続く友だちになったなと思います。私はブラジル人じゃないから、みんなの考え方が本当に面白くて、毎日笑って泣いたりしてました。ケンカもするときもありましたが、それも今思うと嬉しかった。ブラジルの国民性なのか、感情を表現するのがすごく上手なんですよね。そこから演技について無意識に吸収できたこともあったと思います」
――国籍や育った環境が違う人間が家族のようになれたというのは、映画『ファミリア』のテーマの一つでもありますね。
「伝えるべきテーマだと思います。違う国に住むということは本当に大変なんです。映画の中に『ブラジル人でもない、日本人でもない』っていう台詞があるんですが、私もそれはよく感じていました。パキスタンにいるときはずっと“日本人”っていうあだ名で呼ばれてたんですが、日本に帰って来ると、決して日本人には見られないんです。悲しいというより、なんでだろうな? 難しいなって。もっと強い差別を受けている人もいるし、映画の中でも酷いことが起こります。ひとり一人が意識を変えることができるかどうかは分かりませんが、そういうことが実際に起こっているという知識を持つだけでもすごく違うと思うんです。だからたくさんの人に観てもらいたいですし、これからの若い人に観てほしい映画だなって思います」
――本作では、アルジェリアで学(吉沢亮)が出会う難民出身の女性・ナディア役を演じます。彼女はどんな女性だと思いますか?
「ナディアは本当に私だと思いました。ワークショップの時、監督に“自分の人生で起こったことを全部書いてきて”と言われたり、プライベートな話もたくさんしたので、監督はそこからインスピレーションを受けたのかなと思います。ナディアの役は監督と一緒に作ったと感じましたし、私に演じようとしてほしくなかったのかなと思いました。撮影の時にはほかの感情も入って来て、そのままでいるということは難しかったのですが、すごく私に近いと思いました」
――初の演技で大きな作品を経験して、本格的に演技をやりたいという気持ちになりましたか?
「なりました! この映画の完成まで、コロナ禍での延期も含めてトータルで3年かかっていて、中断の間が高校3年生で進路を考える時期だったんですが、この映画によっていろいろなことに気付かされて、自分のなかで全部が変わったんです。それまで17年しか生きていないけど、自分を見つめ直す暇がないぐらいの生き方をしていました。でも演技と出会い、監督やアクティングコーチなどそれを見て下さる方がいて。感じていることを全部出していいんだよっていってもらえたことが、自分にとってのセラピーになったんです。今まで経験してきた辛い事や嫌なことも活かせる、その上で褒めてもらえる、自分が気持ち良くなるっていう、こんなに最高なものってないよな、これだなって思いました」
――現在は成島監督ゆかりのアンカットで演技を勉強中とのこと。
「この映画は勢いみたいな感じで撮り終えたのですが、感情を素直に表現することはできても、気持ちを毎回そこに持って行けないことがある。毎回同じレベルに持って行けるかどうかがいい役者になることなんだって気付きました。そうやって一つ一つ気付いていくことが面白いし、それを定期的に試せる場所があるというのが私にとって、とてもいいことだと思っています」
――演じることを職業に定めた今、今後の夢や目標は?
「現場で役所さんや吉沢さんから感じたような、柔らかさを持った俳優になりたいです。そしてちゃんと楽しむことを忘れない。自分が楽しんでいればお客さんも楽しんでくれる、そういう人間でいたいですし、そういう自分を見てもらえる仕事がしたいですね」
――最後に映画『ファミリア』公開に向けて、この記事を見ている方にメッセージいただけますか?
「演技経験の全くない人から、日本を代表するような俳優まで、様々なキャストが揃っていて、そんなキャストがパズルみたいに組み合わさって作品を作り上げているのは、これまでの日本映画ではなかなか無いことだと思いますし、面白いと思います。悲しくなったり、絶望したり、笑ったり、希望があったり、そんないろんな気持ちになりたい方はぜひ観てください! 映画の宣伝コピーに『話す言葉の違いも、育った環境の違いも超えて―家族になる』ってあるんですが、本当にオーディションの時からその通りなんですよ。心が大きく動くような演技のアクティビティをしてくれて、シックスセンスを使って相手が何を考えているか感じることができる。映画を通じて、ずっと心がつながっている家族が出来ました」
■まらい果(まらいか)プロフィール
2002年4月14日生まれ、静岡県浜松市
趣味:歌・絵を描くこと(デッサン)
特技:歌
日本×パキスタンのハーフ。持ち前の明るさを武器に映画作品のオーディションを勝ち取った新人女優。日本語・英語・ウルドゥ語のトリリンガル
【映画】2023年1月6日公開予定 『ファミリア』監督:成島出
【舞台】2022年9月4日(日)〜2022年9月12日(月)アップスシアターVol.1「スカベンジャーズのアスカ」
アンカット所属 https://unc10.jp/audition/
■映画『ファミリア』ストーリー
陶器職人の神谷誠治(役所広司)は妻を早くに亡くし、山里で独り暮らし。アルジェリアに赴任中の一人息子の学(吉沢亮)が、難民出身のナディア(まらい果)と結婚し、彼女を連れて一時帰国した。結婚を機に会社を辞め、焼き物を継ぐと宣言した学に反対する誠治。一方、隣町の団地に住む在日ブラジル人青年のマルコス(サガエルカス)は半グレに追われたときに助けてくれた誠治に亡き父の面影を重ね、焼き物の仕事に興味を持つ。そんなある日、アルジェリアに戻った学とナディアを悲劇が襲い……。
2023年1月6日(金)全国ロードショー公開
■2023年 成島出監督×アンカット冬の特別オーディション
「ファミリア」(主演:役所広司、吉沢亮)や、日本アカデミー賞で10部門受賞した「八日目の蝉」、新人・藤野涼子をはじめ多数の新人俳優を抜擢した「ソロモンの偽証」を世に送り出した成島出監督が、映画界の未来を照らす俳優・女優を発掘するため、冬の特別オーディションを実施。
https://unc10.jp/audition/