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2021/01/24 20:08
《役者を目指す君へ》俳優・橋本禎之「オールインワンよりオンリーワンを目指して」
精悍かつ理知的な顔つき、鍛えられた肉体で、映画、ドラマ、CMなど多彩なジャンルの作品でバイプレイヤーとして活躍する俳優・橋本禎之。所属事務所 ヴァンセット・プロモーションの後輩たちの殺陣の指導も務め、良き相談相手としても信頼されている。26歳から本格的に俳優活動を始め、多彩な経験を経て現在のポジションに至るまでをインタビュー。これから役者を目指す若い役者にも参考になる話を伺った。
■橋本禎之〈ヴァンセット・プロモーション2005年冬の特別オーディション合格〉
――俳優の世界に進もうと思ったきっかけは?
「大学で遺伝子の研究をしたくて進学をして、研究職がやりたかったので大学院に行くために勉強ばかりしていたんです。大学4年生で卒業研究をしていたとき、ふと“これを仕事にしたくないな”って思っちゃて(笑)。それまで就職活動もしていなかったので、大学を卒業したらヒマになってしまう…そのとき、ちょっと芸能の世界をのぞいてみようって思ったのがきっかけなんです。子供のころアニメ好きだったので、大学を卒業してからまず声優養成所に入ったんです。そこで芝居を初めてやってみて、声だけじゃなくて身体を動かして芝居をするのが楽しくなって…それからデビューを見て俳優の事務所を探して応募したんです」
――ヴァンセット・プロモーションに応募したきっかけは?
「男性で、ちょっとゴツいというか、体育会系やダンスをやっている俳優が多いので、自分も身体を動かすのが得意だったから応募しました。自分は、サッカー、ハンドボール、大学では体育会のボートをやっていて体もガッシリしていたので、自分に向いている仕事が多いんじゃないかなって思って」
――体育会のボートの経験というのは珍しいですね。
「テーマパークのキャストをやっていた時、カヌーのアトラクションの人たちが作ったボートチームに誘われて、『ドラゴンボート』という20人乗りのボート競技で全国優勝しました。自分のドラマのデビューは『レガッタ』っていう大学ボート部の話で、ボート部員の役を演じました。オーディションの時点でボート経験者に限っていたので、経験が役立ちましたね」
――多くの作品でオーディションで役を獲得されていますが、オーディションに臨むときに大事にしていることは?
「作品の中で自分に求められているキャラクター、役どころがは何なのかを考えます。出てくるキャラクターの中で、自分に合っていて近づきやすいものでありながら、他の人と被らない、自分がいやすいポジションはどこかなというところから役作りを考えています。もしシリーズもののドラマでのパート2を作りますというとき、1に出ていたキャラクターと被ってしまうようだと自分は採用されないだろうなって」
――自己分析が大事なんですね。
「若いころは“どんな役でもできるようになりたい”って皆言うんです。でも経験を積んでくると、自分にしかできない役が作れる役者になりたいと考えるようになる。今の自分に一番合っているのももちろんですが、自分が思う以上に他人からどう見られているかがだんだんわかってくるんですよね。自分には、医者や金持ちの勘違いしたボンボンとか、三枚目の残念なイケメン役が回ってきて(笑)。だんだんそれが自分でも得意になってきて、他にこういうキャラクターがいなければ、そこを攻めたら面白いって思えてきたりするんです」
――これまでの出演で転機になった作品は?
「やはり大きかったのは『海猿』ですね。その前にカメラに映るか映らないか分からないような役をやらせてもらった時に、監督が見て使いたいなと思ってくれて、『海猿』ではけっこう大きい役をいただけたんです。小さな役でもしっかり一生懸命芝居をしていれば、監督は見てくれているということを感じられたのが、ある意味転機になりました。役の大小にこだわらず、一生懸命やることが俳優の仕事として大事だという基本ですね」
――現事務所に所属して15年ほどになりますが、ヴァンセット・プロモーションはどんな事務所ですか?
「居心地が良いというか、社長が自分のことを信頼してくれているのが分かるのが大きいかな。今、高野海琉が大きな作品(『仮面ライダーセイバー』)に関わっているんですが、殺陣を教えたり、CGを相手にした演技について経験を伝えたりしています。海琉は本当にちっちゃいときからウチの事務所にいて、面倒をみているので弟みたいな感じで。向こうも頼ってくれるから、自分もなんとかして役に立ちたいなって思っていますね」
――2021年には映画『るろうに剣心 最終章』のような大作の公開も控えています。
「『るろうに剣心』は、監督が長回しを使うので業界でも有名で。ずーっとカットせずに動きを撮り続けるので、すごく時間もかかるし集中力がすごく必要なんです。面白くてやりがいはありますけど、大変は大変です(笑)」
――その撮影に耐える精鋭を揃えた現場に呼ばれるには、やはり自己鍛錬が必要?
「殺陣に関しては常に研究しています。後輩に教える役目を仰せつかっていますし、自分の糧にもなるので、いろんなものを観て吸収して、教える前に自分でも動けないといけないので、自分でもこっそり練習して、みたいな(笑)。でも現場にはアクション部の人がいて、その人たちは毎日殺陣やアクションをやっているんですよね。僕たちはアクションもできる俳優、向こうは俳優もできるアクションの人。自分たちはあくまで俳優なので、どういう感情があって動いているのか、役者の部分を考えて動けるアクションするべきだと思ってるし、後輩にも教えたいと思っています」
――今後、ヴァンセット・プロモーションに応募して入ってくるかもしれない人にアドバイスをお願いします。
「先ほどのお話と重なるんですが、いろんな役ができるオールインワンな俳優より、自分にしかできない役ができるオンリーワンな俳優を目指してほしいですね。自分のことを理解して、自分がどう見られているのかを理解した、そういう役者にきてほしいです。年齢のことを気にされる方も多いんですが、自分も20代後半から始めましたし、最近は年を取ってからブレイクする方も多いですから。そういう方たちって、芝居を観ていても芝居が好きなんだろうなっていうのが伝わるんですよ。芝居を好きになってくれたら、いつ始めても全然遅くはないのかなって感じはしますね」
■橋本禎之プロフィール
1979年11月14日生まれ、埼玉県出身。
映画『BEAVE HEARTS 海猿』『海賊と呼ばれた男』『アルキメデスの大戦』、ドラマ『絶狼〈Zero〉-DRAGON BLOOD』ほかに出演。2021年は映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』の公開が控える。また海外ロケの超大作映画への出演も決定している。