芋生悠、村上虹郎とのW主演映画『ソワレ』を語る 「どうしようもないくらいに、もがいてる人に見てほしい」 | ニュース | Deview-デビュー

Deview LOGO

お知らせ

検索の条件設定はコチラ

Deview LOGO

ニュース

2020/08/13 19:01

デビュー

芋生悠、村上虹郎とのW主演映画『ソワレ』を語る 「どうしようもないくらいに、もがいてる人に見てほしい」

映画『ソワレ』で村上虹郎とのW主演を果たす女優・芋生悠(C)Deview
映画『ソワレ』で村上虹郎とのW主演を果たす女優・芋生悠(C)Deview

 豊原功補、小泉今日子らが立ち上げた新世界合同会社第一回プロデュース作品『ソワレ』が、8月28日全国でロードショー公開される。海外からも絶賛される新鋭・外山文治監督がオリジナル脚本で描く、若き男女の逃避行。主演は日本映画界の次世代の旗手として常にその作品が注視される村上虹郎。そして彼とともにW主演を務めるのが、100人以上のオーディションで抜擢された女優・芋生悠だ。映画を中心に多くのクリエイターの“ミューズ”として頭角を現す期待の女優に、思い入れのこもった本作について話を聞いた。

◆『ソワレ』W主演・芋生悠インタビュー

――芋生さんは今や、「TVer」のコマーシャルで手羽先を持ってたOL役の子、と言ったほうが説明は早いかもしれないですね。

「あのCMはすごくたくさんオンエアされていたので、意識しなくてもつい見ちゃう感じで。おかげで『あ、TVer ね』って言われるようになりました(笑)。でも『ソワレ』を観ても、一致しないかもしれません、“一緒の子なの?”って」

――今回演じたタカラは、非常に重い背景を抱えていながらも、とても強い生命力を感じる役です。

「タカラは幼少期からショッキングな事実で人生を狂わされていて、そのトラウマですべてにおいて諦めている。自分自身の人生においても主人公になれない女の子。そんななかでも脚本を読み込んでいくと、守り続けている綺麗な心、小さいかもしれないけど汚されていない光みたいなものを持ち続けている子だなと思ったんです。タカラの隣にいて、一緒に支えて、一緒に守り続けていけたらなって」

――その想いが全編にわたって演技のベースになっているんですね。

「脚本は変えられないかもしれないけど、最終的に希望のあるほうへタカラを連れていけたらいいなって思いながら演じていました」

――タカラの強さは映画の中で、気持ちの上でも、フィジカルの上でも、どんどん大きく立ち上っていく感じがします。

「ヒロインのタカラに抜擢していただいた際に、“ただ弱い子、被害者に見える子じゃなくて、芋生さんみたいに力強くて、エネルギーを感じる人に演じてほしかった”と言われていたんです。改めて映画を観ると、心はどんどん空っぽになっていくけど、身体が先行していって、負のスパイラルから逃げ出そうとしているタカラの強さを、身体で表現できたように思います」

――これまでの芋生さんのフィルモグラフィを振り返ると、なにか酷い目に遭いながらも、雑草のように立ち上がってくる役が目立つ気がします。そういう役を演じさせたい女優なんですかね。

「自分的には、最初から見るからに強い子もやりたいなって思うんですけど(笑)。立場的に弱かったり、不幸な境遇からもがいて立ち上がる子が多いなって思いますね。演じるうえで大変な役も多いので、不安もあるんですけど、それを表現できるのが自分の強みでもあるのかなって今は思います」

――翔太役の村上虹郎さんとは濃密な演技のぶつかり合いがありますが、相対しての印象はいかがでしたか?

「村上さんとの共演は初めてなんですが、現場では全然会話をしていないんです。普通ならインの直前にたくさん話し合って仲を深めてから撮影に入ることが多いんです。どんなに仲の悪い役でも、仲を深めることで思いっきりできたりもするので。でも村上さんとの場合は、そういう前提が無くてもできてしまう。絶対的に翔太でいてくれるので、その安心感があるから、ド直球で向かってもちゃんと受け止めてくれるし、向こうもド直球で返してくれるし。そういうところはやりやすかったですね」

――特に印象に残っている二人のシーンはありますか?

「橋の上で翔太が、泣きながら自分の心情を吐露するシーンは、村上さんの目からも、言葉からも、すごく自分に突き刺さるものがありました。いろんな人の怒りとか、悲しみとか、もどかしさみたいなものを見てきている目をしていて、いろんな人の気持ちを背負ってるような重みがあって…。体感としては、津波みたいなものがガッと襲ってきて、体が耐えられずに押し流されるようでした。ここでちゃんと向き合わないといけないって思ったら、体が勝手に村上さんを包んでいました。セリフも動きも脚本の範疇なんだけれども、アクションがかかったときに初めて見せたものに、お互い突き動かされるものがあって、そこはすごかったですね。押されないように必死でした」

――翔太の役柄は本当にどうしようもない奴なんですけど、誰もが自分のこととして共感できる部分があります。空っぽな自分が、不幸なタカラを助けようと手を取ったとき、初めてヒーローになれる気がした…その時をずっと待っていたという感じです。

「どれだけ掘り下げても、翔太の中身というのはすごく空虚で、現代の私たち世代の象徴みたいな人。自分のこともわかってないけど、どうにかもがいてヒーローにはなりたいっていう人。対するタカラは自分自身のことをわかっていて、わかっているからこそ自分は自分の人生の主人公になれないと思っている。その二人が出会ったときに、翔太は自分がタカラを連れていくしかなかったのかなと思います」

――タカラはその出会いで脱出の道を見つけるんですが、芋生さん自身、抑圧から脱出する道として、演技の道に進んだという経緯があると思うんです。

「自分にとっては『役者』が抜け出すための道でした。地元・熊本の田舎で、空手や美術があったとしても、何か今一つ自分の中で納得がいかないものがあって、そのなかで見つけたのが役者だったんです。タカラが劇中で『役者って違う自分になれてええなあ』みたいな話をするんですが、もし今自分が役者じゃなかったら、どうなってただろうな、本当に生きられているのかなって、本当に心の底から思いながら演じていました。タカラからしたら、役者をやっている翔太が輝いて見えるし、憧れだったりするので、それだけ役者というものに今救われているんだなって思っています」

――自分と役者という仕事を見つめなおすきっかけにもなった?

「『ソワレ』の撮影が終わってから1年ぐらい経っているんですが、公開が近づいてきた最近になって、『ソワレ』の時の記憶がフラッシュバックすることがあるんです。タカラが見てきた景色やつらい経験がフラッシュバックすると、どうしようもないぐらい重くて、暗くて…。ここから私、どうやって抜け出したんだっけ?って思ったりして…。でもその後に映画を見直すと、そこから立ち直れたんです。だから、本当にどうしようもないぐらい暗くて重いところにいる人に見てほしい作品だなって思います」

――今回、外山文治監督の撮影も独特なテンポを生み出しているように思います。

「前半はハンディを多用したドキュメンタリー風で、途中から映画的になるという、いい意味で違和感がある演出なんです。でも役者としては、どちらかというと後半のほうが気持ちとしては生々しくドキュメンタリーだという。2人だけになってからは、演出も特に無くて、二人がやりたいようにやっていいという感じだったので、そこが面白いと思いました。撮り方と気持ちが逆というのが」

――全力疾走のシーンなどは、逆に映画っぽく見えなかったり。どこか不思議な手触りです。

「ただただ逃げているみたいで、結果的に生っぽく映っているのが、外山さんの狙いなのかなって。脚本の段階では映画的に作られた語りのセリフが多いんですけど、しゃべりだしてみると意外とナチュラルに感じたり。ワンシーン毎に気付くものがあって、先がわからなくなって、もしかしたらその先二人はどっちにも行ける、結末を選べるのかもしれないと感じたりしました。“今お芝居をしているぞ”みたいな達成感は何一つ得られなかったんですが、それがまた良いというか。一切お芝居をしてないような感覚でした」

――そういう現場が成立したのは、監督やプロデューサーが、主演の二人に信頼を置いてくれたからではないでしょうか。豊原功補さんと小泉今日子さんとの仕事は、舞台から引き続いて2度目ですね。

「映画のオーディションを受けたのは舞台の稽古中だったんですが、その後に稽古と本番で濃密に二人と関われて、役者として尊敬しかないですね。たくさん厳しい言葉ももらって、自分のことを女優と呼べるようになるまで成長させてくれました。『ソワレ』のときにはほとんどアドバイスは無くて、“芋生ならできるよ”って言ってくださって。それがプレッシャーにはならず、信頼してくれているから信頼できる、安心感が常にありました」

――今回映画のパンフレットの中で、芋生さんについて二人が「昭和の女優さん」と評しているのが興味深かったです。

「一緒にいるときによく言われることがあって。お酒を飲むところも昭和の俳優みたいだったり(笑)、お二人の中で、昭和の俳優さんはカッコいいものなんだろうなって思うので、期待をしてくれているんだと思ってます。自分が映画を見ていても、昭和の俳優さんって色あせないし、デカくてすごくドシッとした方たちだなって思うので、ああいう人になりたいって思うんです。流行の女優さんでなくていい、ひとつドシっと構えられる女優さんになれたらいいなって思います」

――芋生さんをずっと見てきて、「新宿」っぽい女優だなって思います。新宿が似合う女優さんって同世代にはいないと思うんですよ。

「それいいですね! 新宿系(笑)。新宿自体好きですし、ちょいちょい新宿の歩行者天国の真ん中とかで写真を撮ってもらったりしてるんですけど、その写真がお気に入りで。今日子さんにも“いい写真だね”って言っていただいているので。新宿の街に合うのかもしれないです」

――『ソワレ』が上映されるテアトル新宿をはじめとして、新宿にはいい映画館がたくさんありますし。

「テアトル新宿は、石橋夕帆監督の『それからのこと、これからのこと』の舞台挨拶で来たことがあるんです。上京して数日後に登壇したのがテアトルの舞台だったので、感慨深いです。今回主演映画で堂々と帰って来れたんだなって」

――では最後に改めて『ソワレ』をどんな人に見てほしいですか?

「どうしようもないくらいに、もがいてる人に見てほしいと思っています。コロナや自然災害など、今はみんなが大変な状況で、閉塞感もあるし、どこにもどかしさをぶつければいいのっていう気持ちになっていて。人にぶつけることもできないから、自分を傷つけることにつながって、負のルーティーンから抜け出せなくなってしまったりするかもしれない。でもこの映画は、そこでひとつの光になる作品だと思っています。映画を見終わったら、もう少しだけ明日を信じてみようかな、明日まで頑張ってみようかなみたいな気持ちになって、ちょっと胸張って帰れるような作品になっていると思います。結局、自分を愛せて、自分の足で歩くということが一番大切だと思っているので、そこにつながる作品だと思っています」

■『ソワレ』ストーリー

俳優を目指して上京するも結果が出ず、今ではオレオレ詐欺に加担して食い扶持を稼いでいる翔太(村上虹郎)。ある夏の日、故郷・和歌山の海辺にある高齢者施設で演劇を教えることになった翔太は、そこで働くタカラ(芋生悠)と出会う。数日後、祭りに誘うためにタカラの家を訪れた翔太は、刑務所帰りの父親から激しい暴行を受けるタカラを目撃する。咄嗟に止めに入る翔太。それを庇うタカラの手が血に染まる。逃げ場のない現実に絶望し佇むタカラを見つめる翔太は、やがてその手を取って夏のざわめきの中に駆け出していく。こうして、二人の「かけおち」とも呼べる逃避行の旅が始まった──。

監督・脚本:外山文治
主演:村上虹郎/芋生悠
プロデュース:豊原功補/前田和紀/小泉今日子
出演:村上虹郎、芋生悠、岡部たかし、康すおん、塚原大助、花王おさむ、田川可奈美、江口のりこ、石橋けい、山本浩司
8月28日全国ロードショー公開

関連写真

  • 映画『ソワレ』で村上虹郎とのW主演を果たす女優・芋生悠(C)Deview

  • 映画『ソワレ』で村上虹郎とのW主演を果たす女優・芋生悠(C)Deview

  • 映画『ソワレ』で村上虹郎とのW主演を果たす女優・芋生悠(C)Deview

  • 映画『ソワレ』で村上虹郎とのW主演を果たす女優・芋生悠(C)Deview

  • 映画『ソワレ』で村上虹郎とのW主演を果たす女優・芋生悠(C)Deview

  • 映画『ソワレ』で村上虹郎とのW主演を果たす女優・芋生悠(C)Deview

  • 映画『ソワレ』で村上虹郎とのW主演を果たす女優・芋生悠(C)Deview

  • 映画『ソワレ』で村上虹郎とのW主演を果たす女優・芋生悠(C)Deview

  • 『ソワレ』8月28日全国でロードショー公開(C)2020ソワレフィルムパートナーズ

  

Pick up

オススメ

  
×