新進気鋭の女性監督・石橋夕帆が、イラストレーター・ごめんのTwitterで発表した初期作品を、映画界期待の女優、芋生悠・祷キララのW主演で映像化した『左様なら』。9月6日の公開初日、アップリンク吉祥寺にて、石橋監督、芋生・祷ら出演者による舞台挨拶が行われた。

　『左様なら』は、田辺・弁慶映画祭など多数の映画祭に入選してきた石橋夕帆監督が、WEB上でカリスマ的な人気を誇るイラストレーター・ごめんの短編漫画を、海辺の町を舞台にその繊細なタッチと儚く美しい映像で描いた長編映画。昨年開催の映画祭「MOOSIC LAB 2018」で初公開され、大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門に選出されるなど、公開前から映画ファンを中心に話題を集めてきた。クラスメイトが死んでも、いじめられてもなお、当たり前のように続いていく“日常”を、リアルに、ときに幻想的な美しさで映し出した次世代の青春ムービーとして高く評価されている。

　初日の舞台挨拶には、主演女優・芋生悠、祷キララに加え、平井亜門、こだまたいち、森タクト、石川瑠華、近藤笑菜、田中爽一郎、塩田倭聖、武内おと、日向なつ、石橋監督が登壇した。

　原作のごめんと石橋監督は、芋生の紹介をきっかけに知り合った。芋生は「石橋監督は元々漫画が大好きなので、お互いに影響しあったらいいなと思って声をかけたらこういう形になって」と振り返る。原作漫画は18ページの短編だが、石橋監督が“妄想”膨らませて、長編映画に仕立て上げた。芋生も「石橋監督の妄想はスゴイですよ。3人ぐらいの登場人物を一クラス22人分に…膨らませましたね」と笑う。

　撮影現場でも「実際の教室みたいな空気感で。席順も“自分の役だったらここじゃないか？”って話し合って決めたりしたのもあって、自然と役にみんながハマっていった感じがします」（芋生）というように、役者とともにキャラクターが育っていった。監督は「人物設定は本人と、私が役としてイメージしてたのと半々で…」と“当て書き”に近い作り方だったと説明したが、「いじめグループ」役のキャストのほうを見やり「語弊があるけどね！　そういう意味じゃない」と笑った。

　ロケ先では男子寮・女子寮が設けられ、泊まり込みの合宿状態で撮影。冒頭で死んでしまう役の祷は「一日で撮影が終わって、自分だけ電車で帰って。後からみんなの思い出話を聞いて、さみしい思いを」とちょっと悔しそう。平井は「自分は工業高校で男ばっかりの高校で3年間過ごしたので、共学みたいな空気感は新鮮で、失われた青春を取り戻しました」と言い、「当て書きと聞いていたので、“ギャルグループ怖えな！”って勝手にビビって話しかけられませんでした」と笑わせた。

　最後に芋生は「学校や職場ってすごい狭い世界だと思うんです。この作品の中では友人の死をきっかけに主人公が動き出すんですが、それだけじゃなくて籠の鳥から抜け出せる道が皆さんにあると思います。このままでいいのかなって思っている人も多いと思うんですが、外の世界に行ってみたり、知ろうとしたり、人との関りで自分の道を切り拓いてほしいなと思っています」と作品に絡めてメッセージを贈った。

　映画『左様なら』はアップリンク吉祥寺で上映中。