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2019/07/26 19:05
松本零士の戦場まんがを舞台化した『スタンレーの魔女』に一般公募で石井凌&宮田龍平が抜擢 「戦争の裏にも楽しい日常がちゃんとあった」
松本零士の名作を原作とした、舞台『スタンレーの魔女』がいよいよ7月28日(日)より、東京・DDD青山クロスシアターにて開幕。一般公募で行われた主演オーディションを経て、主演に抜擢された石井凌と、同オーディションにより出演が決まった宮田龍平の若手二人に、オーディションを振り返って印象に残っていることや出演が決まった際の想い、稽古場の雰囲気などを聞いた。
【舞台『スタンレーの魔女』/石井凌×宮田龍平インタビュー】
■「オーディションでは、落ちてもいいからとにかく爪痕を残したいという思いだった」
――一般公募のオーディションを経て、本作への出演を勝ち取ったお二人。オーディションはどのような内容だったんですか?
【石井凌】「5人一組で、最初に自己紹介をして、お芝居をやりました。そのあとに、演出の御笠ノ(忠次)さんとの雑談でいろいろな話をして」
【宮田龍平】「お芝居の最後に、叫ぶというのもありましたよね?」
【石井凌】「あった! 何でもいいから怒って叫ぶっていうね」
【宮田龍平】「『人生で一番怒って、叫んでください』と言われて、一人ずつ叫びました。そのあとの雑談では、御笠ノさんが盛り上げてくださって、一人ひとりといろんな話しをしてくださいました」
――どんなお話をされたんですか?
【宮田龍平】「僕のときは、御笠ノさんが『最近、どう?』っていう、よくありがちな会話で始まって。“最近、自分の成長を感じたこと”みたいなことを聞かれたので、『僕はもともとミュージカルが好きで、ミュージカル作品に出演するために、ボイトレやバレエのレッスンを最近やり初めて、それが身になっているのが嬉しい』ということを話しました」
【石井凌】「僕は雑談のときに、落ちてもいいからとりあえず何か印象づけられたらいいなと思っていて。とにかく覚えてもらいたい、爪痕を残したいという思いでいろいろと話をしました。具体的に何を言ったかはあまり覚えてないんですが、“この舞台で名を挙げて、有名になって、もっともっとたくさんの舞台に立ちたいです”というようなことだったと思います」
――オーディションでの手応えみたいなものは感じていました?
【石井凌】「手応えは……無かったです(笑)」
【宮田龍平】「御笠ノさんが盛り上げてくださったおかげで、オーディションではいい意味で緊張せずに臨むことができたんですよね。よくあるような張り詰めた空気の中でのオーディションとは違って、すごく明るい雰囲気で安心感もあって、いつもより楽しんでできたという感じでした」
【石井凌】「僕もそう! いつもはオーディションってめちゃくちゃ緊張するんですけど、『叫んでください』って言われて、一回めっちゃ大きな声を出したら緊張がほぐれたというか。ちょっとすっきりした後に、雑談だったので、けっこうフランクに話せたのかなと。自分を良く見せようと緊張するのではなく、ありのままの自分で臨めた気がします」
――出演が決まった際の率直な感想は?
【宮田龍平】「そもそもは主演を決めるオーディションでしたが、マネージャーさんから主演じゃないけど、出演が決まったという話を聞いて。オーディションでの御笠ノさんの印象がすごく強かったし、この人と一緒にやれたらいいなという思いがあったので、僕は出演が決まって単純に嬉しかったです」
【石井凌】「僕は、合格の報告を受けたのが電話だったんですが、『合格した』と言われたときに、何も感じなくて……」
【宮田龍平】「え!? 本当に人間ですか?(笑)」
【石井凌】「いやいや、実感がなくて(笑)。そもそもこれまでオーディションというものに受かった経験もあまりなかったし、しかも主演オーディションじゃないですか。だから、『受かったよ』と言われても、上の空というか、ぜんぜん話が入ってこなくて。話を飲み込めないまま『わかりました』って言って、電話を切ったんです」
■「情報解禁されて、ネットニュース自分の名前が出ているのを見て実感した」
――実感したのはいつだったんですか?
【石井凌】「ビジュアル撮影をしたり、公演情報が解禁されていって、いろんなネットニュースに自分の名前が出ているのを見て、“うわ!! 本当に受かったんだ!”って実感しました。ビジュアル撮影に関しても、衣装を着てこんな風に撮影したことがなかったので、めちゃくちゃ緊張してしまって……」
【宮田龍平】「(石井が一人で写っている)このポスタービジュアル、めちゃくちゃカッコイイですよね」
【石井凌】「この撮影、僕が緊張しすぎてしまって、たくさん撮影しました。その中で奇跡の1枚みたいなカットを使っていただいた感じなんです(苦笑)」
――そんな裏バナシがあったんですね。本作の台本や原作を読んで、どんな印象を受けましたか?
【石井凌】「原作の漫画を読んでいて思ったのは、ジャンルとしては戦争モノになるけど、戦争モノっぽくないなという印象でした。僕が演じる敷井という主人公に関しても、ファントム=F=ハーロックに憧れて、スタンレー山脈を越えるというのが一番やりたいことなんですよね。ただ、その背景に“戦争”というものがあっただけで、別に敷井は戦争にあまり興味がないのかなというのが最初に読んで感じたことでした。なので、戦争モノとはいえ、そんなに重たい作品だなとは思わなかったです」
【宮田龍平】「僕も原作を読み終わったときに、戦争モノでよくあるような悲しい気持ちというのは無かったです。物語の最後のクライマックスシーンの描き方がすごく印象的だなって思いました」
――原作の漫画は短編ですが、より深く描かれている台本を読んで、何か新しい発見はありました?
【石井凌】「敷井はとても優しい人だなと思いました。この作品に出てくるキャラクター全員のことが好きなんですよね。中にはイヤミの塊みたいなキャラクターも出てくるんですけど、その人でさえ好きみたいな、すごく良い奴だなって台本を読んで思いました。ただ、優しい男だけど“スタンレー山脈を越えたい”という夢が頭の中に常にあって、めちゃくちゃ熱いものを心に持っているんだなというのを感じました」
【宮田龍平】「僕は台本をもらって役が確定した後に、自分が演じる尾有という役を原作の中から探したんです。そうしたら、『何してんだ、尾有』『尾有、(飛行機の)ケツの具合どうだ?』くらいしか出てきてなくて。“あれ!? ちょっと待てよ”と(笑)。原作ではあまり描かれていない役ではあったんですが、台本を読んだときに、尾有のキャラクター性が広がっていて、すごいなと思いました。それと、出てくる登場人物みんなが一人ひとり個性を持っていて、みんな愛があって良いヤツなんですよね。それが集まったときのパワーというものが描かれていたので、単純に面白いなと思いました」
――台本を読んで感じた、尾有のキャラクターというのは?
【宮田龍平】「尾有は、寝坊助で何も考えてないようなんですが、実は人に対してとても熱い。彼女がいるという設定でもあって、そういう“人”に対しての愛みたいなものは、出てくるキャラクターの中で一番強いんじゃないかなと思います」
――稽古はどんな雰囲気で行われているんでしょう?
【石井凌】「稽古前にみんなで集まって雑談をするというのが日課で、毎日、他愛も無い話をした後に稽古をやるという感じで、すごく新鮮です。コミュニケーションを取るという意味もあると思うんですが、御笠ノさんが言うには、稽古前に雑談をすることで、芝居中の声のトーンとかを安定させるためにやっていると。でも、それのためにやっているという感じではなく、本当にみんなで楽しく話して、その流れで稽古に入るので、稽古場はすごく明るい雰囲気です。この前なんて、みんなで盛り上がって話していて、気付いたら1時間半くらい経っていたこともあったくらい(笑)。そういうディスカッションも含めて、稽古はすごく楽しいです」
【宮田龍平】「御笠ノさんは怒って指導するっていうことがないですし、役者の意見も受け入れてくれるので、何をやっても受け入れてくれるんじゃないかなっていう安心感がある。それは、オーディションのときから感じていたことなんですけど、僕らが提示したものに対して、それを受け入れてくれた上で、“こうしたらどう?”と、それをさらに膨らませてくださるんです」
――お二人は、キャストの中では年下組ですが、先輩たちとの関係性はいかがですか?
【宮田龍平】「僕らは年少組だけど、みなさんも年少組なんじゃないかな(笑)。……っていうのは冗談ですけど、それくらいいい意味でみなさん同じ目線になって一緒に話をしてくださるので、カンパニーは明るい雰囲気ですね」
【石井凌】「そうだね。みなさん面白いし、変に気取っているような人が一人もいない。大先輩なんだけど、先輩っぽさを感じさせない雰囲気で僕らに接してくださるんです」
【宮田龍平】「最年長の津村(知与支)さんとは25歳くらい年齢が離れているんですが、役者として対等に話をしてくださいますし、みなさん本当に優しくて温かい方ばかりです」
――お互いの印象についてもお聞きしたいのですが。まずは石井さんの印象は?
【宮田龍平】「みんなに言われていますけど、結構変わってますよね?(笑)」
【石井凌】「言われているね(笑)」
――どういうことですか?(笑)。
【宮田龍平】「雑談のときに、みんな、自分のプライベートの昔の話とかをよくするんですけど、凌くんのエピソードがヤバいんです(笑)。でも、人間味が無くて冷たいということではなくて、温かい一面もちゃんとある人。初めて会うタイプの人なので、面白いです」
【石井凌】「龍平くんの第一印象は、若いしカッコイイなという印象が強すぎて……。でも、稽古を見ていると、すごく熱い人だなと。メーターの振り切り方がすごいというか、100のメーターがあったとしたら、一気に120まで振り切るみたいな感じなんです。それを見ていて、僕はジワジワいくタイプなので、羨ましいなと思いました」
■「こんなにいろんな人間になれる職業ってほかにないと思う」
――そもそもお二人が、この世界に興味を持ったきっかけって何なんですか?
【石井凌】「僕は中学生のときに、医者や弁護士とか、やりたいことや夢がいっぱいあって。でも、役者だったら、作品次第で医者にもなれるし、弁護士にもなれるし、何にでもなれる。僕がやりたい職業全部できる可能性がある、それなら役者になろう!って思ったことが最初のきっかけです。それで、大学生のときにスクールに入って、演技を学んでいたときに、今の事務所に声をかけてもらって今に至ります」
【宮田龍平】「僕は高校生のときに、進学は日本の大学ではなく、続けていたダンスやドラムで留学しようと決めていたんです。そんな中、高校を卒業する半年くらい前に、今の事務所の方に声をかけてもらって。もともと芸能界というものに憧れはあったので、留学と芸能界と、本当に今しかできないことってどっちだろう?と悩んで考えたときに、こっちの世界で挑戦してみようと思って入りました」
――今現在、お芝居の魅力・楽しさは、どんなところで感じていますか?
【宮田龍平】「さきほど凌くんもおっしゃっていましたが、こんなにいろんな人間になれる職業ってほかにないと思うんです。医者や弁護士にもなれるし、時には犯罪者の役を演じることもある。これからAIとかロボットとかどんどん増えていくと思うんですが、生身の人間にしかできないものって、こういう“芸”になってくるのかなと。それってすごいことだなと思うし、そういう部分に魅力を感じます」
【石井凌】「役者をはじめ、芸事って娯楽の一環だし、極論を言ってしまえば、生きていく上で絶対になくてはならないものではないじゃないですか。でも、それを必要として観に来てくださる方々がいる。そういう娯楽を楽しみにして来てくださる人たちに対して、そういう時間を提供できるというのは、すごくありがたいことだし、楽しいなと感じています」
――この世界でチャレンジしてみたいこと、夢や野望を教えてください。
【石井凌】「これは今回のオーディションのときにも言ったことではあるんですが、いつかブロードウェイのミュージカルに出たい! 以前、出演した作品で、ミュージカルの面白さを教えてくださった演出家の方がいて。その作品が終わったあとに、はじめてちゃんと観たミュージカルが『RENT』だったんですけど、めちゃくちゃカッコ良かったし、衝撃を受けて、それがきっかけでミュージカルが好きになったんです。そのあとの来日公演も観に行きましたし、作品の世界観やノリとかいろんなものを含めて、作品が大好きになって、『RENT』に出たい!って思ったんです。なので、いつか本場ブロードウェイの『RENT』に出たいというのが夢です。今はまだ英語しゃべれないんですけど(笑)」
【宮田龍平】「僕も『RENT』が大好きで、前に日本版のオーディションを受けたことがあるんです」
【石井凌】「えっ!? そうなんだ!!」
【宮田龍平】「僕は映画版を観たのが最初だったんですが、ずっとドラムをやっていたこともあり、エンジェルという役がすごく好きになって。それこそ、事務所からじゃなくて、『デビュー』とかのオーディションサイトで、『RENT』のオーディションを自分で見つけて、これはやるしかない!と思って受けました。結果はダメだったけど、僕もミュージカルが好きなので、いつかグランドミュージカルの主演として舞台に立ってみたい!という夢があります。あと、僕はディズニーも大好きで、いつかシンデレラ城に住みたいんですよね。ディズニーランドに行く度に、シンデレラ城を眺めてはいつも憧れを抱いています!(笑)」
――素敵な夢の話をありがとうございます(笑)。では最後に、みなさんと同世代の10〜20代の『デビュー』読者にむけて、本作のアピールをお願いします。
【宮田龍平】「僕の周りの10代の子たちは、僕も含めて、戦争モノに触れる機会って本当に少ないんですよね。修学旅行とかで記念館みたいなところに行ったりするくらいで、そもそも戦争に対してプラスのイメージは持ってない人が多いと思います。でも、この『スタンレーの魔女』は、戦争が行われている裏でも、楽しい日常がちゃんとあったんだよというのを表現したいと御笠ノさんもおっしゃっていましたし、様々な個性を持ったの男たちが集まって、男子高校生みたいな雰囲気で過ごしている感じとか、ぜひそういうところを観て楽しんでもらえたら嬉しいです」
【石井凌】「僕も修学旅行で真珠湾に行ったことがあって、そのときにいろいろと歴史を調べたりしたんですけど、戦争って人がたくさん亡くなったり、悲しい出来事のイメージがあって、僕自身、戦争モノの作品を観るのが苦手でした。でも、この作品に関しては、いわゆる戦争モノとは違って、たくさんの人が犠牲になったというような悲劇をクローズアップするのではなくて、亡くなっていった方たちにもそれぞれ人生があって、普段は恋愛話をしたり、笑って過ごしていたりしていたんだよというようなことが、一人でも多くの人に伝わればいいなと思っています。ぜひ、劇場でお待ちしています」
<公演概要>
舞台『スタンレーの魔女』
2019年7月28日(日)〜8月8日(木)東京・DDD青山クロスシアター
原作:松本零士
脚本・演出:御笠ノ忠次
キャスト:
石井凌 唐橋充 宮下雄也 池田竜渦爾 松本寛也 永島敬三 松井勇歩 宮田龍平 津村知与支
■公式HP: https://www.marv.jp/special/stanley-stage/
■公式Twitter:@stanley_stage
(C)松本零士/小学館 (C)『スタンレーの魔女』製作委員会
【プロフィール】
■石井凌(いしい・りょう)●1994年6月20日生まれ、千葉県出身。ナノスクエア所属。舞台/B-PROJECT on STAGE 「OVER the WAVE!」REMiX、ミュージカル座「レンジャー」、「優しい魔法のとなえ方2017」、「犬夜叉」、「十二夜」、ドラマ/BSスカパー! オリジナル連続ドラマ「弱虫ペダルseason2」などに出演。
■宮田龍平(みやた・たっぺい)●2000年2月17日生まれ、埼玉県出身。ヴィズミック所属。高校時代から雑誌・サロンなどでのモデル活動の経歴を持つ。舞台/“STRAYDOG”番外公演 舞台「ズーキーパーズ」、「Blood Blacker Than Night」、ドラマ/「今日から俺は!!」(NTV)、「博多弁の女子はかわいいと思いませんか?」(FBS)などに出演。