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2019/05/25 08:01
映画界注目の個性派・芋生悠、舞台2作目『後家安とその妹』でヒロインに 「お客さんを悪の魅力に引き込めたら兄妹の勝ち」
小泉今日子をプロデューサーに、豊原功補が企画・脚本・演出・主演の4役を務める「明後日公演2019芝居噺弐席目『後家安とその妹』」(東京・紀伊國屋ホール/5月25日〜6月4日)が25日に開幕する。三遊亭圓朝、古今亭志ん生の落語を原案に、落語と演劇の融合を試みる意欲作で、元御家人で腕は立つが、やくざ者のような生活を送る兄・“後家安”こと安三郎と、大名に見初められ側女になった妹・お藤に翻弄される人々を描く。主演は朝ドラ『まんぷく』で注目され、多数の映画に出演する毎熊克哉が務める。その妹・お藤役に抜擢されたのは、2015年に女優活動を始めた新人ながら、すでに20作以上の映画に出演するなどインディーズ映画界の注目を浴びる個性派・芋生悠。舞台2作目にして紀伊國屋ホールでヒロインの大役を務める芋生に話を聞いた。
■芋生悠インタビュー
――2017年の『欲浅物語』(山田ジャパン)以来、2度目の舞台の現場はいかがですか?
【芋生】「演出の豊原功補さんは、ご自身も役者なので、舞台で役者が輝くことを考えていらして。“男はカッコよさ”“女は色気”を見てもらって、次の仕事に繋がったり、いい縁ができることが大前提だとおっしゃっていました。演出も役者目線で、全てのアドバイスを信じられるのがありがたいです」
――本番も間近ですが稽古も順調に?
【芋生】「気持ちの上ではお藤になっているつもりなんですが、声のトーンや、江戸弁や大阪弁のイントネーション、時代物の所作など、いろんな課題があり過ぎて、パニックになることもありました。稽古期間の半ばぐらいのときに、私がちょっと動いたら、功補さん“ダメッ! もう一回!!”って何度も繰り返したことがあったんです。そこにいる皆は“絶対に折れるだろう”という空気だったらしいんですが、そういうときこそ私は負けず嫌いなので、もうやるしかない!って喰らいつきました」
――負けず嫌いの性格を見抜かれての指導だったのかも知れませんね。
【芋生】「私はふっかけられたほうが、なにくそ!っていう力が湧いてくるほうなので、そこを早くも見抜かれたかなって(笑)。後で共演の方々と飲みに行ったとき、“あの時はしびれたよ。芋生ちゃん、功補さんに“○○しろ!”って言われたのに、それじゃないことするんだもん”って(笑)。敢えて挑んで行ったんですけど、功補さんも笑って“いいよ!いい!”みたいな感じで。みんなも実は“頑張れ!”って見守っていたみたいで。自分は年齢的にもキャリア的にも下だし、できなくて当たり前というところから始まっているので、プライドも捨てて、出せるものは全て出しておこうと思ったんです。そういう姿勢を受け止めてくださって、一緒に良いものを作ろうという空気なんですよね」
――お藤という役柄はどう理解していますか?
【芋生】「最初のイメージは『悪女』で、こんなふうに周りを翻弄するような役は演じたことが無かったので、できるかな?って考えました。お藤は今の自分と近い年齢なんですけど、昔の人たちって生死が目の前にあって達観しているし、背負うものも多いから二回り上ぐらいの感覚。だから佇まいや生き様が深い人じゃないとダメだなって思いました。そして人を翻弄するのは、それだけ魅力のある人だと思うので、稽古に入る前から私生活を変えてみました。年上の方と一緒にいていろんな話を聞いたり、会話の駆け引きを意識してみたり。すごく頭が切れて、腹に一物持っているという女の子を演じるのは初めてで、純粋に楽しいけれど、めっちゃ苦しい。それだけ自分は普段考えるエネルギーを使わずに生きてるんだなって思いました。お藤はエネルギーがあって賢いし、強い女の子だなって思います」
――毎熊克哉さん演じる安三郎とともに物語の中心になります。
【芋生】「ただ悪い兄妹だと皆がおいてけぼりになっちゃうけど、兄妹間にすごく純粋なものがあれば二人の魅力になるから、二人が一緒のシーンは、純粋に兄妹愛が感じられるようにしたいね、とは話しています。兄妹二人で幸せに生きるためというのが、すべての行動原理にあるから、悪だと分かっていても好きになっちゃう。“私の目の奥に黒いものがあることを知っていたんだろう?”みたいなセリフがあるんですけど、知っていても好きになることを止められないという部分は大事にしていきたい。お客さんも騙されて、引き込まれてくれたら、兄妹で“勝ち”ですよね(笑)。そこを目指しています」
――初舞台の時から取材しているんですが、成長した姿が見られそうですね。
【芋生】「今回のキャスティングの際に、『はじめての舞台』の写真集を見て気に入ってくださったというのを聞いて。初舞台は大事な経験だったな、あの作品があって今があると思っています」
――プロデューサーの小泉今日子さんも、稽古場で気遣ってくださっていました。
【芋生】「今日子さんは、皆さん知っている大スターじゃないですか? でもとても可愛がってくださって。一緒に飲みに行って、今日子さん家に泊まって、今日子さんの寝間着を着て寝て…みたいな(笑)。今でも本当にアイドルの面影が残っていて、オーラがあってどこにいても分かる。私が目標とするカッコいい女性だなって思います。今はプロデューサーとして、今日子さん自身が今やりたいことに徹されている。私も面白いことをたくさんしたいし、面白い人たちと関わって行きたいと思っているので、芸能界というしがらみに囚われず、いろんなことにチャレンジされている姿がカッコいいなって」
――キャリアの中のこのタイミングで、そういう方々と出会えたことは大きいですね。
【芋生】「小泉さんと功補さんとは、この後映画でもご一緒するんです。今日子さんと功補さんと外山文治監督で作った映画制作会社があって、そこの一本目の作品『ソワレ』で村上虹郎さんと共演します。そこまでご一緒することが決まっているので、今回の舞台でもたくさん吸収して映画に繋げて、その先もたくさんのことを教わって行きたいと思っています。今回の舞台のメンバーで映画を作ったらどうなるだろうっていう野望も持っていますし、ものつくりで関わっていけたらと思います」
■明後日公演2019 芝居噺弐席目『後家安とその妹』
2019年5月25日(土)〜6月4日(火)東京都 紀伊國屋ホール
原案:三遊亭圓朝「鶴殺疾刃庖刀」、古今亭志ん生「後家安とその妹」
企画・脚本・演出:豊原功補
出演:毎熊克哉、芋生悠/森岡龍、広山詞葉、足立理、新名基浩/福島マリコ、塚原大助/古山憲太郎、豊原功補
親の因果で御家人崩れて 数える月日もどこへやら
風に吹かれてドブ板踏んで 気づきゃあこの世の吹き溜まり
幼い妹可愛さに 手に手を取ったは東海道
海に千年山に千年 憚りしらずの悪行重ね
泥にまみれたこの手を見れば 遠いあの日が涙に滲む
■芋生 悠(いもう・はるか)
1997年熊本生まれ。今年は5月にヒロイン役として出演した映画『恋するふたり』公開、夏にヒューストン国際映画祭他、アメリカの映画祭で上映された『JKエレジー』、9月に主演の『左様なら』公開。来年は『ソワレ』公開予定。また今後、ベルリン国際映画祭でW受賞した映画『37Seconds』の公開も控えている。現在、「古河機械金属」「TVer_手羽ムービー」「JRグループ ニッポンをつなぐ物語~おばあちゃんのお漬物」「香港ジュエリー時計」「中国食品」等のCMに出演中。ステッカー所属。