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2019/05/14 17:14
平田オリザと本広克行のタッグでこれからの俳優・女優を発掘 舞台『転校生』オーディション実技審査に201名が参加
オールオーディションキャストで8月17日より紀伊國屋ホールで上演される、平田オリザ・作、本広克行・演出のパルコ・プロデュース公演『転校生』。女子校版、男子校版各21名の群像劇に出演する若手俳優を発掘するオーディションの実技審査が9日、新宿村スタジオで開催された。
『転校生』は1994年に青山演劇フェスティバルで上演されて以来、“高校演劇のバイブル”と言われている戯曲。ある高校生たちの一日を、同時多発の会話で描き、他愛のない日々の会話のなかから、彼らの日常と社会への好奇心、大人たちへの不信感、将来への不安感を描き、人間の存在の不確かさが浮かび上がらせる…そんな時代を超えた普遍性を持った作品となっている。
同作は2015年にも劇作・演出家の平田オリザと映画監督の本広克行のタッグで上演され、21世紀にはばたく女優を発掘する目的で、オールキャストオーディションが行われた。今回は初の男子校バージョン、女子校バージョンでの上演となり、公式サイトやオーディション情報サイト「デビュー」で18歳から25歳までの男女を経験不問で募集。応募総数は2128名にのぼり、一次選考によって選抜された男性73名、女性128名の計201名が、実技審査に参加した。
候補者は7組に分けられ2日間にわたって実技審査が行われた。取材が行われたのは比較的年長者の多い男女各1グループで、映像での演技や舞台経験のあるメンバーが多く見受けられた。オーディションはいくつかの「シアターゲーム」からスタート。シアターゲームは演劇の稽古場で行われるゲーム形式による演技のウォーミングアップといったもので、コミュニケーションを円滑にし、テンションや集中力、チームワークや想像力を向上させるためのもの。緊張しがちなオーディションの現場で、より素顔に近いキャラクターや個性を見極めるうえでも効果的だ。
まずは稽古場全体に散らばり、時間内になるべく多くの人と一対一で自己紹介。そして「身長順」「生年月日順」「出身地の南から」といったプロフィールによって整列。初対面同士だが、身体を動かし大声を出し合ったことで心身ともに緊張もほぐれ、笑顔も生まれていったようだ。その後は、稽古場中をウロウロ歩きながら、参加者の中の誰かを他人に悟られないようにそれぞれ「爆弾」と「シールド」に設定、制限時間終了時に自分と爆弾を結ぶ直線上にシールドを置くことができれば成功というゲームも。内容は単純だが、どれだけその状況をリアルに想像できるか、他者との関係性や位置取り、空間の把握など様々な要素を読みとることが出来た。
そして何人かのグループで、時間内にお題に沿った「フリーズ・フレーム」(静止画)を創る作業も行われた。ここでも率先してアイデアを出す者や、全体を見渡して調整を図る者、与えられた役割について黙々と精度を上げていく者など、それぞれの個性が現れた。芝居は一人で作るものではなく、ましてやこの『転校生』は、高校生の群像劇で平田オリザ独特の同時多発的な会話劇。単純な課題の中にも、今回の作品における適性を見極める要素が含まれているように見えた。
ゲームが終わると一人ずつの自己PRタイムに。後半に行われた男子の場合のグループでは、審査員のテーブルまでまっすぐ綱渡りの綱が伸びていると想定して、その上を渡りながら自己アピールするという条件も加えられた。そんな条件下で、綱渡りの状況をリアルに演じようとする者、変則的に笑いを取ろうとする者、役者への熱い想いをとうとうと語る者…それぞれのキャラクターでぶつかっていった。審査にあたった本広克行氏は、真剣な眼差しを送り、メモを取りながら、時折笑顔を見せ、参加者と積極的にコミュニケーションを取っていた。
この実技審査の結果を受けて、男女各21名の出演者が決定する。パルコ・プロデュース『転校生』は8月17日〜8月27日、紀伊國屋ホールにて上演される。