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2018/12/05 20:01
『神曲』作曲家・井上ヨシマサ、新オーディション『卒業☆星』projectを語る「光を浴びるのではなく自ら輝く星に」
『大声ダイヤモンド』『RIVER』『真夏のSounds good!』など、“神曲”と呼ばれるAKB48の多くの楽曲、そして誰もが知るレオパレス21CMソング『それぞれの夢』なども手掛けてきた作曲家の井上ヨシマサ。彼がプロデュースするボーカル&ダンスユニット『卒業☆星(そつぎょうせい)』の新メンバーを現在募集中だ。「卒業を果たして次に向かう“卒メン”たちの、アーティストとしてのReSTART(再出発)を応援したい」という願いで名付けられた「卒業☆星」。今回のグループ構想が立ち上がったきっかけから、AKB48卒業メンバーのみならず、幅広く“卒メン”を募集するオーディションに対する想いを聞いた。
■プロデューサー・井上ヨシマサインタビュー
「卒業したからこそ、新たにスタートできることがある」
――井上さんのツイッター上での、メンバーやファンとのやり取りが盛り上がり始めた時から、「卒業メンバーによるグループ」の構想に注目していましたが、ついに本格的に動き出しましたね。そもそもの発端はどこからなんですか?
【井上】「AKB48は、売れはじめるずっと前から、自分の娘たちを育てるような気持ちで曲を書いて、レコーディングにも立ち会ってきました。だんだん売れてくるうちに作曲家陣も増え、初期のように秋元(康)さんから、『ヨシマサ、早く書け!曲が足りない!』って言われるような状況ではなくなってきました。
気付いたら、2年間ぐらいAKB48のシングル表題曲を書いてなくて。その間に、一緒にやってきたメンバーは卒業しちゃってるわけですよ。『あれ? アイツどうしたの? 卒業!?』っていう感じで。僕はレコーディングの時にしか彼女たちに会えないんですけど、目立つメンバーが盛大に卒業コンサートを行う一方で、人知れず卒業しているメンバーもたくさんいるわけで。
『あのわがままなメンバーに、どうやったら歌を好きになってもらえるかな…』とか悩んだり、ただ歌に自信が無いだけで、レコーディングに後ろ向きになっているメンバーもいたから、『このパートはどう? こういう歌い方をしてみたら?』とか、すごく気を遣ってやってきて。聞き分けの良い子ばかりじゃなかったよなぁ…とか思い出すんですけど、でもだんだんそういうメンバーもいなくなって。
AKB48のシングル曲を書いていない間も、僕は勝手に山登りを始めたり、ソロ活動の曲を書いたりして、別にヒマこいてたわけじゃないんですよ(笑)。そんなときに、昔からお世話になっている、最初に作曲家になれって言ってくださった方に『他のグループに曲を書かないのか』と言われまして。それに対して『僕は売れてるグループを渡り歩いて書いてる作家じゃないので、AKB48に書かないからじゃあ別のグループに、という気にはなれないですよ。だったらAKB48を卒業したメンバーなら知り合いだし、顔も見える。その子達にまた集まってもらい新しいグループを作りたいです!』って答えたら、『それ面白い』っていう話になったんです」
――最初の一歩はAKB48の卒メンのための企画だったんですね。
【井上】「みんな、いろんな思いで卒業しているから、『集まれ!』って言って集まるわけでもないと思っていたんです。ソロでうまくいっている人はそれでいいけど、バイトしている子もいるだろうし。でも、そういう人たちは、AKB48に最近曲を書いてない井上ヨシマサと気持ち的に合致すると思ったし(笑)。『もう一回がんばろうよ! 卒業したからこそできるものがあるんじゃないの?』って。
何日かして、友達と焼肉を食べながらそんな話をしたんですよ。そうしたら結構みんな『いいですねぇ!』って言うんです。そのときにあのツイートをアップしたんです。『でも、これって自殺行為だよ。これ見たら秋元さん、二度と僕に曲を頼まなくなるからね』って言いながら(笑)。
《2018年7月13日の投稿:もー頭きた! もう2年表題無い! 打倒AKB48! ヨシマサ全面プロデュース 卒メンのみで! 名付けて STM444! おーでぃしょんやるぞー! おーでぃしょん #STM444 #いざ来たれ! 卒メン》
『打倒AKB』とか言ったんですけど、僕にも喝が入るし、現役メンバーだって、『あんたなんかいなくたって売れるわよ』みたいな気持ちでやればいいわけだし。そのツイートはすぐに40万インプレッションを超えて。そのなかには『打倒』の文字だけ目に入って来た方々もいたんですけど、僕は『他のグループに書くぐらいなら、AKBの卒業生に』というつもりで。これまで自分が携わった人たちと、何かできることがあるんじゃないかなっていう気持ちでスタートしているんです」
――実際、AKB48の卒業メンバーやファンからもたくさんの反響がありましたね。
【井上】「ツイッターを通して直接ファンの方々と交流して話せるのが面白かったですね。たくさんのメンバーが『参加したい』と言ってくれて、いけるのかなって思いました。そこからは、僕が候補曲を書いて、卒業メンバーがツイッター上で歌ったり、ダンスを踊るだけで、面白いコンテンツとして成り立つんですよね。そんなふうに遊びの延長で完結する予定でした。プロダンサーで撮った動画に、だんだんとメンバーが加わっていったら面白いじゃないですか。でもそうやって本気で動き始めると、卒メンも事務所に所属している人も多いので、事務所さんにも正式に頼めるようにしていったほうがいいということになっていって、手伝いたいって手を挙げてくれるスタッフも増えて行って、だんだん形になって来たんです。
はじめは『卒業☆星』っていう名前もなくて、『STM444(卒メン444)』でした。最初のうちは、事の経緯も考え、僕はAKB本体を苦労して1から育てた秋元さんの影があるべきだと思っていたんです。相手がいるからこその『打倒』だと考えていて。でもファンの方々に他の名前の候補を挙げてアンケートを取ったら非常に競っていたんです。だから『STM』云々じゃなく、井上ヨシマサが、このプロジェクトにおいては48グループの作曲家ではなく、いちプロデューサーとして新グループを立ち上げる。卒業したけど、しがらみみたいなものを引きずってしまっているメンバーが、真の意味で卒業して、自分たちで名前からグループを創り上げて新たなスタートを切って、もっと輝いていこうという想いを込めて、『卒業☆星』と名付けたんです。
アジア圏で日本のアイドルが好きだった人も、卒業して辞めちゃったら見られないから。そういう人たちのために台湾などを周りたいと思って、漢字の名前がいいなって考えたんです。卒業生の『生』をスターの『星』にして、『卒業してスターになる』っていうイメージ。卒業した人が集まって、『卒業☆星』っていう星を作り、そこの住人になろうよっていう呼びかけの意味もあります」
■「人それぞれのタイミングとやりたいこととがマッチすれば輝ける」
――そこからAKB48グループの卒メンだけではなく、広く「卒業した人」を公募しようと考えたのは?
【井上】「最初はもうちょっと軽い気持ちで始めたんですが、話が具体的になるにつれ『グループに限らず卒業した人たちを新たに育てられないか』など様々な意見が聞かれるようになりました。だったら“自分の中で何かを卒業した”と思える人が、そこで辞めるんじゃなくて、僕のプロデュースの曲でもう一回やってみたいという人がいたら、どんどん来てよ!、っていう心境になったんです。売れたグループ、売れなかったグループで個人個人の想いに違いは無いと思うし。これまで、歌唱力や尖った個性を活かしきれないまま卒業して行った人は、ものすごくたくさんいると思うんです。企業でもお店でも、自分の才能に見合った場所に居なければ、せっかくの才能も「使えないやつ」に変わってしまう嘆かわしい現実が実際にあると思うのです。そんな人たちを応援したいと考えるようになりました。
人それぞれのタイミングとやりたいこととがマッチすれば輝けるんだと思います。そういう意味では自分自身にも未知な部分があります。今回はある程度のスキルを求めていますし、オールマイティではなく、ダンス、歌、ラップのスペシャリストも募集しようと思っています」
――すでに公式サイトでは課題曲が続々とアップされて、候補者も名乗りを挙げていて、着々と動き始めていますね。
【井上】『アイドルグループやるんですか? アーティストをやるんですか?』ってよく聞かれるんですけど、それはやってることで判断してもらいたい。今、元AKB48の相笠(萌)ちゃんが振り付けに参加してくれたりしてるんですけど、その時点でアーティストです。メンバー各々がアーティストを目指して活動していって欲しいと願っています。「今日からアーティストです」と名乗るほど、簡単なことではありませんからね。
今、メンバー候補も徐々に集まってきているので、早く応募したほうがいいですよ。作詞をしてもらったり、ラップのリリックを作ってもらったり、才能を活かせる場所があるから。ただ作曲は俺がやるんだよね、じゃないと俺がやることなくなっちゃうもん(笑)。もう始まってるんですよ」
――コアな音楽ファンも唸りそうな楽曲もあります。
【井上】「メジャーではいたいですけど、もうちょっと“つぶやき的”なことを真剣にできるグループなんじゃないかなって思います。以前、相笠ちゃんが書いた“ツイッターでからんでくるおやじが大嫌い”みたいなつぶやきが面白過ぎて、僕が『そのつぶやきを曲にするわ!』って、SHOWROOMの生配信で見られながら曲を付けたんです。そうやって出来た曲『ちょっと黙ってChickenHeart』を本人に送ったら喜んでくれて、『振りが降りてきました!』って振りを付けてくれて。僕、相笠ちゃんがそんなに踊れる人だって知らなかったんです。既に振りが付いている曲も踊ってもらったけど、踊りがまるで繊細な線を描く画家のようでした。本人にその感動をLINEで伝えたら、スタンプしか返ってきませんでしたけど(笑)。その尖った部分も改めてピックアップできるようなグループが出来れば!と思っています」
――“AKB48の作曲家”というイメージが先行していたとしたら、見方が変わるかもしれませんね。
【井上】「僕も試されていると思います。『こういう曲だったらやりたくない』って言うなら、『やりたい』って言わせるまで書かないと。『ここで働きませんか?』って新しいお店を開くわけだから。ラップ中心の曲もあります。今朝もオケを作って『候補星』に送って、ラップ付けて戻してもらって…バンドみたいな感じです。楽しいですよ」
■「これまでやってきたことを無駄にしないで、自信を持って」
――今回のオーディションでは、どんな人の応募に期待していますか?
【井上】「活動期間は3年と考えていますが、『ちょっと私を見てほしい』『1ヵ月でもいいから置いてください』という気持ちでも、ぜひトライしてほしい。オーディションに合格することがゴールじゃなくて、そこから何ができるかという、活動自体も挑戦だと思ってます。歌のメンバーだと思ってたらダンスが上手かったという可能性もあるし。歌入れしながら気づくこともあるだろうし。今がもしダメでも、必ずやいいものを作っていける、生きてる限りは何も終わってないよって言いたいですね。あとは、自分たちでグループを作っていくんだという意識を持っていてほしい、僕もあれやれこれやれって言いたいですけど、なるべく自発的なことを大事にしたい。活動をSNSで公開するので、その過程も全部見せながら進んでいきたいと思っています。応援宜しくお願いします」
――オーディションに応募しようと思っている子たちにメッセージをお願いします。
【井上】「卒業とは言っても、これまでやってきたことを無駄にしないでいこうよ。卒業といっても、全てを忘れてという感じじゃなくて、自信を持って、そこまでやってきたことにどんどん乗っけて、いいものを作っていきましょうよって感じかな。あとはとにかく自分が持っているものを見せてほしい。見られていない間にできなくなってくるので、ぜひ応募して、まずは僕に見せてほしいです。
僕を通して、ツイッターを見ている人たちと共有して活動を進めていきたいと思っているので、みんなが“知恵袋”みたいに答えを持っていると思う。構えてしまって応募できない人もいると思うけど、『今の私はこんなもんなんですけど…どうですか?』って、言い訳をいっぱい乗せながら応募していただけたらと思います。
そして、このプロジェクトに参加することで、光を浴びるのではなく自ら輝く星になってほしい、そう考えています。」
(インタビュー了)
「卒業☆星」projectの応募要項は、15歳から44歳までの健康面に問題のない人で、ダンスや歌でプロ活動を目指す人。なおアイドル・アーティスト経験があることが望ましいが、これらの経験がなくても、あるいは芸能活動の経験がなくても応募は可能。「何かを卒業した経歴」、「あるいは自分で『卒業した』と思える経験」を持っていれば応募できる。その内容は自己PR欄でアピールすること。
合格後は今回のオーディション課題曲「Frontier」「Style Of Love」「今夜は眠れない」3曲でのデビューを皮切りに、2019年4月(予定)には1st.アルバムを発売、2021年の武道館公演開催を目標として活動を行っていく。各楽曲のメンバー選抜は、井上ヨシマサ氏とファンによるオーディションで決定。第一次募集書類は2018年12月末日締め切り。2019年1月に最終審査の上メンバーを決定する。応募の方法はオーディション情報サイト「デビュー」に掲載されている。