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2018/11/20 18:01
少女歌劇団プロジェクト第一期生募集中 総合演出・広井王子「舞台に立ちたいという一心で来てもらえればいい」
吉本興業が関西の専用劇場から発信する成長型ライブ・エンターテインメント『少女歌劇団プロジェクト』が始動し、現在満11歳から満17歳の女性のメンバーを募集中だ。このプロジェクトを指揮する、総合演出を務めるのがマルチクリエイターの広井王子。『サクラ大戦シリーズ』など、舞台をも交えたメディアミックスのヒット作を手掛け、現在も『ソラとウミのアイダ』などを手掛ける広井に、『少女歌劇団』の構想、そこにかける想いを聞いた。
少女歌劇団は、『清く・明るく・麗しく』をテーマに「和の美意識を体現する少女たち」のライブを関西の専用劇場から発信していく成長型ライブ・エンターテインメント。本年末の時点で満11歳から満17歳の少女たちからオーディションで団員が選出され、日舞、茶道、殺陣、ダンス、歌などのレッスンを積みながら、2019年に大阪市内にオープン予定の劇場でのデビューを目指すという。
「劇場を作るのが夢でしたけど、夢のまま終わるんだと思ってました。以前から『自分の劇場が欲しい』って半分冗談みたいに言ってましたから…」と、広井は劇場の立ち上げからのオファーを受けた少女歌劇団プロジェクトに、驚きと喜びを表す。ゲームやアニメのクリエイターのイメージが強いが、幼い時から家族や親類の影響で、新派や歌舞伎、落語、講談に親しみ、青春時代は映画館に入り浸り、唐十郎の赤テント、寺山修司の天井桟敷などの演劇に熱くなっていたという。その頃から「一生劇場の中で生きていければいいなぁ」という想いを根底に持ちながら、様々なメディアを横断させながら作品をクリエイトしてきた経緯があるのだ。
少女歌劇団の総合演出のオファーを受けた今年の8月から、「少女歌劇団ってなんだ? 少女っていったい何?」ということについて、長文のレポートを作成しながら考察し、「少女を尊ぶとか、少女に浄化されるという考えの方の痕跡は、遠く卑弥呼の時代からこの国にはずっとあった。世界では未熟なものをエンタメの世界では受け入れないが、日本には未熟なものが神聖化されているところがあるんじゃないだろうか? これは日本の特殊な文化だ」ということに思い至る。
さらに「グローバルな日本人は日本のことを熟知している。日本文化で戦える人がグローバルなんだと思う。『レ・ミゼラブル』を観たっていうと、“日本人は真似が上手いからね”って言うんですよね、欧米の人たちは(笑)。向こうに『レミゼ』の話をされたら、こっちは『鳴神』(歌舞伎十八番のひとつ)の話をしたらいい。最後の最後はオリジナリティの勝負だから」と、『和の美意識』をテーマに据えることを決定。ロングランが可能となる専用劇場を拠点に、「オーディションで選んだ少女たちと一緒に、スタッフにも日本文化を学ばせることが、僕の眼目」と、作りながら育てていく“成長型ライブ・エンターテインメント”とすることを、本プロジェクトの柱に据えた。
団員は殺陣、日舞、茶道、ダンス等を学ぶが、和の舞台を作ることが目的ではない。「みんな和物の芝居だと思うだろうけど、ジャズ・グルーヴなんです。音楽はジャズをベースにしようという方向づけをしました。すごくカッコいいダンシングチームが、フッと日舞に変化したり、殺陣で見せたりする。古くはSKD(松竹歌劇団)もやっていた手法で、“なんだこれは!”って驚くカッコよさだったんですよね。『和』に振り切るのじゃなく、どうやって『洋』のものでくるむかを今のスタイルでやってみたい。それが日本発の面白いエンタメの作り方じゃないかと思っています」。
少女歌劇団は「雪組」「月組」「花組」といった組み分けを行う予定だが、そのうち一組はCGキャラクターの組を創るという。「CGキャラクターを舞台上に出演させるには様々な方法があるんですが、今技術的な検証を行っているところで、劇場にその舞台装置を常設するために各社に当たっています」と明かし「動きや声を担当する団員も必要になってくると思います。表に出ないで、Vtuberみたいにやりたいという子も可能性があります」と構想を語った。
求めるメンバーについて「どんな人を選んで、どう育てていくのかは、“出会い”ですから、楽しみにしています。自分は座付き作家でもあるので、“この子を伸ばしてあげよう”“こことここを組み合わせたらいいんじゃない?”とか、出会った女の子を見ながら作ってあげたいと思っています」と、選ぶ人物像を決めずに、オーディションで出会った人に合わせて歌劇団と作品を作っていくという。ただ、いずれにしても「学業優先にしてほしい」という想いがある。「いろんなことを知らないと、芸能はできないし、台本も読めないだろうから。学業はすごく大事だし、学業がどう使えるのかを僕たちが教えられる。それが少女歌劇団を作るうえで大事なことだと思います」。
『少女歌劇団』と銘打っていることから「二十歳で退団させる」意向。「そこからなら短大卒の年齢なので、人生のスタートが切れるし、そのための予備校だと思ってもらってもいい。ステージに立つ経験は、仕事をしていくうえでのプレゼンテーションを磨くことにもつながる。そうやって素敵な女性が育ってくれたらいいなと思います。退団した後にビジネスの世界に行ってもいいし、もしそのまま芸能界で続けたいということであれば、もう一つ上にミュージカル劇団を作ると思います。そういう様々な方面で活躍できる女性の予備校という側面もあります」とその意図を語った。
最後に少女歌劇団プロジェクトへの応募を考えている少女たちに向けて、メッセージをもらった。「舞台に立ちたいという気持ちが一番だと思います。舞台に立つ怖さはやってみないと分からないし、ここからみんなで覚えて行けばいいので、舞台に立ちたいという一心で来てもらえればいいです。みんなが同じじゃつまらないし、それぞれ個性が違うはずなので、そんな個性が集まって何ができるのか、原石を磨き上げるのは僕らの仕事だと思っています」。