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2017/11/02 12:52
「第42回ホリプロタレントスカウトキャラバン」グランプリ・定岡ゆう歩さん唯一無二の“個性”に期待
芸能プロダクション主催オーディションの草分けで、多くのスターを輩出してきた「ホリプロタレントスカウトキャラバン(TSC)」。第42回となる今年は20年ぶりに男性も募集。10月29日に都内で開催された決戦大会では、女性6人・男性4人のファイナリストが出場し、応募総数は36,504人の中から21歳の定岡ゆう歩さんが26年ぶりの男性グランプリに輝いた。26年前は男性のみの募集で、男女ともに参加したなかでは初の快挙だ。
毎年、女優、タレント、モデル、歌手、声優アーティストなどテーマが設けられるTSCだが、今回は「気になるあの子」ということでジャンル縛りはナシ。男女募集にとどまらず、かつてなく間口の広いオーディションに。実行委員長のホリプロ・今村加菜さんは「見た目だけでなくキャラクターも重視」としていた。
決選大会で1人ずつのウォーキングからステージに登場したファイナリスト10人は、ある程度共通の色がある例年と違い、まさに十人十色のたたずまい。清楚な美少女、元気なイマドキ茶髪娘、ミスキャンパスの女子大生……。目標もタレント、女優、モデルなどバラバラだ。男性陣はハーフの美少年、長身イケメン、オシャレなモデル風……と来て、最後に登場した定岡さんは沖縄出身らしい顔立ちにサイケな個性的ファッションで、場の雰囲気を変える陽気さを醸し出していた。意気込みとして「今日のために頑張ってきたので、まばたきをせず僕だけを見てください!」と甲高い声でアピールすると、MCの小島瑠璃子も思わず「すごい押され気味(笑)」とコメントするほど、勢いとアクの強さも感じさせた。
続いては、全員“いもジャージ”に着替えての「バラエティレクリエーション審査」。5人ずつ2組に分かれ、それぞれ「ジェスチャーゲーム」と「みんなで合わせましょー!!」に挑んだ。MCの武田修宏、小島に加え、コーナーゲストのイジリー岡田が実況トークで絡むなか、定岡さんは「合わせましょー!!」に参加。
小島も加わった6人で、“お題に対する答えを全員合わせられるか?”という定番ゲーム。「教室にあるものといえば?」に5人が「黒板」と揃ったのにも関わらず、定岡さんだけが「机」と書いたり、「スカウトキャラバンのグランプリといえば?」とのお題では、審査員として参加していた初代グランプリ・榊原郁恵に気をつかう流れのなかで、定岡さんは隣りの席にいた小島の名前を書き、彼女にスケッチブックで頭を叩かれた。イジリーが「まだ素人の子に!」と小島にツッコんだが、すでに定岡さんにイジってOKなバラエティ的ムードがあり、テレビで観るような自然な掛け合いに映った。大会終了後、定岡さんは小島に叩かれたことを振り返り、「アレは、おいしかったですよね(笑)」と笑顔を見せていた。
「個人パフォーマンス審査」では、10人それぞれ別々の志向を発揮。「全校生徒が10人」という三重の中学に通う最年少14歳の岩本実子さんは、あえて未経験だったダンスに挑み、「Follow me」(E-girls)を可愛らしく踊り、ミス高知大で、すでに「マツコ会議」や地元の番組に出演している最年長22歳の山下燿子さんは、バーを舞台にした寸劇から「恋に落ちて」(小林明子)を歌い大人度をアピール。そのほか、板野友美の「1%」を歌いながらキレキレのダンス、お嬢様風の優雅なバレエ、一輪車に乗りながらにゃんこスターのネタを模した縄跳びとフラフープ、バスケットボールを取り入れた寸劇……。レベルの高いパフォーマンスが続く。
男性陣は、空中で体を回転させるパルクール、マイケル・ジャクソンの曲を使ったダンス、着物姿で坂本龍馬風の刀を使った殺陣……とクオリティの高いパフォーマンスを披露。ラストバッターの定岡さんは、ピアノが運び込まれたステージに、名前の遊歩(ゆうほ)に掛けた「UFO」(ピンク・レディー)の振りをしながら、おどけて登場。だが、鍵盤を叩き「エリーゼのために」「情熱大陸」「サイレントマジョリティー」など、クラシックからアニソン、ポップスと幅広いジャンルの楽曲を繋げたメドレーを奏でると、柔らかいタッチの流れるような音色に会場中が聴き入る。それまでの軽快な雰囲気とのギャップに驚かされた。ピアノは小2から始めたそうだが、楽譜は読めず、すべて耳コピと目で鍵盤の順番を覚えているという。パフォーマンス終了後、定岡さんは個人パフォーマンスの出来映えについて、「緊張してしまって、50%くらい」と語りつつ、「でも、最初のUFOのダンスがキレキレでできたので良かったなって思います!」と満面の笑みを見せていた。
それぞれのパフォーマンスに見どころがあったが、審査員の伊集院光が「バラバラのものを並べられて、選ぶのにプレッシャーがかかる」と話していた通り、10人のベクトルが違う持ち味から、何を基準にするかで誰がグランプリに選ばれるかがまったく変わるように思えた。逆に言えば誰が選ばれてもおかしくない状況の中、いよいよ審査結果の発表に。
まず急きょ設けられた特別賞に、マイケル・ジャクソンのダンスでムーンウォークも披露した井上祐貴さんが名前を呼ばれる。広島の大学3年生で、身長178cmのクールなルックス。「やり切ったので、結果が出て嬉しいです」と話した。
そして“特別賞が男性ということは、グランプリはやはり女性?”とも思われたなか、グランプリにコールされたのは、男性の定岡遊歩さん。名前を呼ばれた瞬間、下を向いて目を閉じてから天を見上げた。涙を堪えながら「人生で初めて“一番”をいただいて感謝してます。スタッフの皆さんのおかげでここまで来られたので、皆さんの期待を裏切らないように頑張りたいと思います」と、声を詰まらせながら喜びをかみ締めていた。
実行委員長の今村さんは「今回のテーマの“気になるあの子”というところで、一番惹かれたのが選考理由です」と述べた。選ぶ物差しが難しくも思われたが、テーマの“気になる”度合いが最も大きかったのが定岡さんだったようだ。確かに、人を巻き込むような独特の明るい雰囲気に加え、真剣なピアノ演奏で見せたギャップと、誰よりも強い印象を残した。今村さんはさらに「合宿では女の子を慰めていたり、人を気遣う心を持っていて、応援してくれる人にもそういうパワーを与えてくれると思います」と続けた。審査員として審査を見守っていた榊原は「とても素晴らしいパフォーマンスをみせてもらったので、これからが楽しみです」と期待を寄せ、「応援させてもらいますので、一緒に頑張りましょう」と後輩にエールを送る。
人生初の記者会見でも物怖じはまったく見せず、カメラマンからのリクエストにも笑顔で様々なポージングを披露するなどサービス精神も旺盛。「よく『チャラチャラしてる』と言われますけど、ピアノを弾くと好感度が上がります」などと笑わせた定岡さん。アパレルの仕事をしようと、2年前に沖縄から上京し、現在はコスメショップでアルバイトをしているという。「(芸能の)お仕事と両立させながら、いずれ自分で男性用化粧品を作りたいと思ったりもしいて」と話しながら「オールジャンルでみんなから愛されるタレントになりたいです」と夢を語った。
これまでのTSCの基準でいえば、ルックスの美形度では他のファイナリストが定岡さんに勝っていたかもしれないが、得難い個性で押し切った。深田恭子、綾瀬はるか、石原さとみら、これまでのTSC出身者とはまったく異質なグランプリとなったのはもちろん、広く芸能界でも前例のない型破りな活躍が期待できる逸材が発掘されたようだ。
取材・文/斉藤貴志