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2017/05/11 17:01
実は熱い四国の声優熱 地方在住声優志望者の夢
ゴールデンウィークの5月5日から7日に、徳島駅周辺を巻き込んだ一大イベント『マチ★アソビVol.18』が開催された。2009年スタートの同イベントには、人気声優のトークステージやアニソンアーティストのライブ、アニメ作品とタイアップした上映企画など、多彩な企画に多数の声優や声優アーティストがゲストとして参加。この『マチ★アソビ』の盛り上がりは、四国在住の声優志望者にも影響を与えている。地元にいながら声優を目指してレッスンを積む、夢を持った若者の話を聞いた。
四国出身の声優と言えば、豊崎愛生(徳島)、中村悠一(香川)、水樹奈々(愛媛)、小野大輔(高知)ら人気声優の名前がすぐに出てくる。そして声優のオープンなオーディションを眺めると、「第三回全日本声優コンテスト『声優魂』(2014年11月)」でグランプリを獲得し、声優デビューした堤雪菜さんは徳島の出身。つい最近、3月18日に開催された『第十一回声優アワード 新人発掘オーディション』で合格、今回最多7社のスカウト札が上がった三川華月さんは、香川県の出身だ。三川さんは「田舎感が出ていたのかも」と言うが、声優業界も手付かずの原石に新鮮な魅力を感じているのかもしれない。
声優デビューに向けては、まず確かな技術を身に付けることも必要。それを学ぶとすれば、東京や大阪に出ることが必要となるが、中国・四国地方で声優育成を行なっているスクールも存在する。中四国声優ゼミナール徳島校講師・清水宏香さんに話を聞くと、「『マチ★アソビ』は、飯泉嘉門県知事も推す徳島の一大イベントです。期間中は、夏の阿波おどりかと思うほどの参加者が県内外から集まり、賑わっています。徳島ではなかなかお目にかかる機会のない声優さんのステージに触れることで、声優志望の生徒たちも将来の自分を重ね、モチベーションが上がると思います。また2015年には、声優の大塚明夫さんによる『本気で声優になりたい人のための声優特別講義』が開催されました。地方・徳島で開催された事は、地方で野望を抱く多くの若者の勇気になったと思います」と言う。やはり「『マチ★アソビ』の盛り上がりと共に、(地元の声優熱は)年々増加している実感がある」(清水さん)ようだ。
徳島校7期生・坂田菜緒さんは「都会よりもイベントが少なくて、声優さんと出会う機会が少ない」と嘆きつつも「声優の勉強がしたくて、県内でも勉強できる場所がないかと探した時に見つけて、週に1回なので忙しい自分でも続けられると思いました。いろんな年齢の人達と出会って自分とは違う考え方や表現の仕方を知ることができバリエーションが増えました」と成長を実感している。また徳島校5期生・岸優斗くんも「オーディションを受ける機会が少ないと思う」としつつ、「表現力がついた」と実感。「東京に行って有名な声優になること」を目標にレッスンに励んでいる。
徳島校3期生・丸山大貴くんは「『マチ★アソビ』には基本的に毎回参加しています。アニメを作っている製作者さんの普段聞けない裏話が聞けたり、アニメのコスプレをしてアニメへの愛を表している人を見られたりするので、今となっては徳島にはなくてはならないイベントだと思います」と地元の熱の高まりを感じ、「徳島には声の勉強ができる所が一つしかないんですけど、老若男女問わず多くの人が未来の声優目指して頑張っています」と、声優志望者の現状を語る。
丸山くんは「声優の勉強をするには東京に行かないとダメなのかなと思っていた時、ネットで偶然に徳島に声優の学校がある知って参加しました」と、自身が声優のレッスンを始めたきっかけを語る。そして「元々誰かの前で何かをすることが恥ずかしくてできなかったんですけど、だんだんと勉強して慣れていくにつれて人の前で発表したりすることが楽しくなってきました」と成長を感じ、「まずは徳島で名前を覚えて貰えるぐらい有名になって最終的には全国的に有名になりたいと思っています」と夢を語った。
このような声優志望者に日夜触れている講師の清水さんは「東京で流行しているものが四国で流行るまでに3年のブランクがあると言われています。最先端の環境を求めて都会に出て行く人が多いのは仕方がありません。そんな中、少しでも地方で出来る“アップ”のための場所が声優ゼミナールだと思っております。仕事の機会は都会が多いでしょうが、そこに至るまでの準備はどこでも出来ます。厳しい世界に飛び込もうとしている生徒の背中を押しつつ、相談にも乗れる身近な存在を目指しております」と語った。
声優志望者の増加とともに、全国規模の声優オーディションも増加している昨今。デビューのきっかけを逃すまいと、地元で武器を磨く若者たち、それを支える講師たちの熱を感じた。