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2016/10/07 10:16
柳下大「演じることがとても楽しい」Dステ版シェイクスピア『お気に召すまま』稽古場レポート
俳優集団D-BOYSによる演劇公演「Dステ」の19作目となる『お気に召すまま』が、10月14日より東京・本多劇場にて開幕。本番に先駆けて『Deview/デビュー』では稽古場レポートをお届け。稽古場では役者たちが積極的にアイディアを出し、熱のこもった芝居を繰り広げていた。
シェイクスピア没後400年にあたるメモリアルイヤーに上演するのは、本格的喜劇『お気に召すままま』。Dステではこれまで、演出に青木豪氏を迎えて、シェイクスピア作品の『ヴェニスの商人』(2011年)、『十二夜』(2013年)をオールメール(全員男優)で上演。今作が、青木豪×Dステ×シェイクスピアの第3弾となる。
シェイクスピア喜劇の中で”一番幸福な物語”とも言われる『お気に召すまま』は、各々の事情でやってきたアーデンの森で、軽妙洒脱な恋模様に彩られながら権力争いや兄弟の確執も乗り越えたどり着く真実の愛を描く、抱腹絶倒の本格コメディ。キャストには、柳下大や前山剛久らD-BOYSメンバーに加え、加治将樹や遠藤雄弥のD-BOYS卒業メンバー、そして、松尾貴史、石田圭祐、鈴木壮麻という個性溢れる実力派キャストが脇を固める。
大きめの稽古場に場所を移しての稽古初日となったこの日。稽古場の前方には、本番さながら舞台セットが設置され、客席通路となる場所には、テープで実際の階段の幅に合わせた印がされているなど、細かなところまで本番仕様に合わせた稽古場となっていた。演出サイドから、ステージの舞台セットの説明や、出入りの導線などがアナウンスされると、キャスト陣も実際にセットを触ったり、ステージ上を歩きまわったり、一つ一つ確認していく。劇場入りまでの間、ほぼ本番と同じ仕様となるこの稽古場で芝居を突き詰めていく。
この日の稽古では、セットを組んで初の稽古ということで、場面を区切りながら芝居や動きを丁寧に確認。ひと区切りの芝居が終わると、青木氏はすかさず役者たちの傍にいき、気になったポイントについて役者たちとディスカッションしながら、芝居を固めていく。
柳下演じるオーランドーが、長兄オリヴァー(三上真史)からの過酷な扱いに対して、オリヴァーに不満をぶつけるシーンでは、激高する兄オリヴァーに対して、オーランドーは皮肉たっぷりに返すなど、怒涛の会話劇が展開され、一気に引き寄せられる。そして、加治が演じる屈強のレスラー・チャールズが登場すると、空気は一変。加治の独特なセリフの言い回しに、稽古場では思わず爆笑が巻き起こる。
男性キャストが女性役を演じるオールメールでの上演というのも、Dステ版シェイクスピアの見どころの一つ。ロザリンドを演じる前山剛久とシーリアを演じる西井幸人は、声色や手の仕草、歩き方など全身で表現し、元気いっぱい可愛らしい娘を熱演。オーランドーとロザリンドが互いに恋におちる運命的な出会いのシーンでは、オーランドー役の柳下が、ひと目惚れした瞬間の高揚感や、恥ずかしさのあまり返事もろくにできない自分に落ち込んだり、美しい娘・ロザリンドを思い出してうっとりしたり、表情をコロコロと変えて感情豊かに表現。
オーランドーとロザリンドの恋愛をはじめ、様々な恋模様が描かれる本作。『Deview/デビュー』で掲載中のD-BOYS連載のインタビューで、柳下は「シェイクスピア作品によくあるような言葉の難しさというのはほとんどない。遠藤(雄弥)さんが前に言っていた“月9の恋愛ドラマのイメージ”っていうのがピッタリかも。ラブコメディとして捉えると、親近感がわきますよ」と語っている。過去作品もそうだったが、舞台初心者でも観やすい演出、ストーリー展開になっているのも、Dステ版シェイクスピアならでは。
さらに、青木氏は以前の取材で、Dステの印象について「先輩が後輩の面倒見がいい。誰かうまくいかないときに助けてくれたり、僕がきつくダメ出ししていたら、後でそこをちゃんとフォローしてくれていたり、ちゃんとチームとして、僕が見えないところを作ってくれているっていうのは印象的ですね」とコメント。牧田哲也も連載のインタビューで「以前はD-BOYSのメンバーが皆同じような感じで、芝居に関しても“どんぐりの背比べ”みたいな感じだったし、自分のことで精一杯だったけど、だいぶ変わってきた。(最近では)先輩後輩の関係性ができている」と話していたように、客席側から芝居をみていた加治が西井にアドバイスするなど、先輩が後輩をフォローするという場面も。
普段は個々でそれぞれに活動しながらも、2007年の第一弾公演『完売御礼』以降、定期的に上演し続けてきたDステも今作で19作目。メンバー同士切磋琢磨して積み上げてきたものを、後輩へと伝え受け継いでいく姿も、Dステならではの光景だろう。
柳下も以前「Dステに関しては、“自分だけ良くなろう”っていうことはない。それよりも“作品が良くなってほしい”という想いのほうが強い」と語っていたが、まさにDステの稽古場では、キャストそれぞれが積極的に自身のアイディアを青木氏に提案しながら稽古を重ねており、”芝居をより面白いものにしよう”という姿勢がヒシヒシと伝わってきた。
この日の稽古を終えて、柳下は「セットを組んでもらって、イメージがしやすくなりました。本番さながらに演じることができ、稽古により一層熱が入ります。より洗練されていく感じがして、演じることがとても楽しくて面白いです。ぜひ公演を楽しみに待っていてください!」とアピール。前山も「劇場に入る前に実際のサイズ感で場当たり出来ているので、ありがたいなと思っています。本番に近い環境で演じてみて、お芝居のテンションもどんどん上がってきているので、本番に向けてさらにしっかり自分なりのロザリンドを作っていきたいと思います。御期待下さい」と自信をのぞかせる。
取材で拝見した冒頭のシーンだけでも、それぞれのキャラクターの存在感が際立っており、思わず笑ってしまうようなコミカルなシーンも満載で、“早く本番が観たい”という思いに掻き立てられた。本番まであと一週間。幕が上がったのち、舞台上でどんな芝居が繰り広げられるのか、期待が膨らんだ稽古場取材だった。
Dステ19th『お気に召すまま』は、東京公演が10月14日(金)〜30日(日)まで本多劇場にて、山形公演が11月12日(土)、13日(日)にシベールアリーナ、兵庫公演が11月19日(土)、20日(日)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演される。
なお、オーディションエンタメサイト『Deview/デビュー』で掲載中のD-BOYS連載では、柳下大×牧田哲也×前山剛久のインタビューを公開中。本作への想いをたっぷりと語っている。