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2016/06/17 05:01
11歳の女優・花田優里音、19分ワンカット長回しの映画で見せた「泣かせる演技」
6月25日公開のオムニバス映画『スリリングな日常』の一編『あさのはなし』に出演する花田優里音。イトーカンパニー『ネクストヒロインオーディション2015』で準グランプリを獲得した彼女は、11歳にして子役経験も豊富な演技派女優だ。豊島圭介監督が手がけたワンカット長回しによる感動ドラマの撮影について、そして飛躍のチャンスとなったオーディションについて話を聞いた。
■花田優里音インタビュー
「夢は監督も出来るカメレオン女優です」
――『あさのはなし』は、短いお話のなかにいろいろな気持ちが詰まっていてジーンとしみる作品でした。お父さんとお母さん、そして娘「安藤夏」の家族3人しか登場人物がいないこの映画で、夏という役をどう演じました?
「台本を読んだときは、優しくていい子で家族思いな女の子をイメージしていたんですけど、監督(豊島圭介監督)と話し合っているうちに、元気でふざけたりするけど家族思いな子だということが分かって。私も普段は活発に動き回っているので、ふざけたりする動作も自然に出たらいいなって思いながら演じました。自分と似ているから気持ちは作りやすかったです」
――ナツはよくふざけて「ふわぁ〜い」って返事をするんですが、これが意外と大事な台詞ですよね。
「初めて監督と会って、台本の読み合わせしたとき“まだいい子っぽい感じが残っている。『ふわぁ〜い』の言い方を研究してきて”って言われました。現場でも“もっと明るく”とか“もっと変な感じにして”って指示を受けながら、何回も何回もいろんなパターンを試してみて、監督と一緒に作った感じです。実際に観てみたら、家族と仲良しで元気な女のコというのは表せたかなって思います」
――この作品はカメラが絶えず移動するにも関わらず、カットが一切なしで、全編長回しで撮影しているのに驚きました。
「2日間で撮ったんですけど、1日目は全部リハーサルに使って。2日目は2回撮影のリハーサルをして、3回目に本番を撮りました。でもリハーサルの段階から泣き過ぎてしまって、服に涙がついちゃって、衣装さんやメイクさんがすごく大変だったと思います」
――長回しの撮影で大変だったことは?
「長回しは1回でも間違えたらまた最初からになるんです。私がお父さん(秋山成勲)にお味噌汁をついであげるシーンで、秋山さんだったらいっぱい食べるだろうなって思って、お味噌汁もいっぱい具もいっぱい入れて持って行ったんです。そうしたら、秋山さんはセリフとセリフの間にそれを食べて、しかも『完食!』って言わなきゃいけないのに食べきれなくて。「これ多いわ!」ってツッコんでくれて。みんなで大笑いしたんですけど。よく考えたら“最初からじゃん!”っていうこともありました」
――ホントの娘さんなら、あんなに大きなお父さんにはたくさん食べてもらいたいよね(笑)。でもツッコんで場を和ませてくれたり、チームワークが良い証拠では?
「監督は“合宿みたいな感じで撮りたい”って言っていて。休憩時間はみんなで、作品とは全然関係ない話をたくさんしていました。そういう楽しい会話ができていたことが、そのまま食卓のシーンにも出せたんだと思います」
――秋山さんも優里音ちゃんと同じ関西の方だから波長が合ったのかな?
「会う前は『格闘家』って聞いていたので、ちょっと怖い人かなって思っていたんですけど、実際に会ってみたら普通にしゃべりかけてくれて、楽しかったです。最後に抱っこしてもらうシーンも“大丈夫? 痛くない?”って気遣ってくれて、すごく優しい方なんだなって思いました。しゃべるときは本当に楽しくしゃべれるので、本当の家族みたいだなって思いました」
――お母さん役の中村映里子さんは?
「休憩時間には“来年、優里音ちゃん中学生でしょう?”って言って、自分の中学の時の部活の話とか、当時流行っていたゲームとか、いろんなことを話してくれました。中村さんの演技を見ていると、すごく表情が自然で、ちょっと色っぽくて。私には色気がないから“すごい勉強になるな〜”って思いました(笑)」
――今回の映画に出演して、いろんなことが勉強できたのでは?
「家で練習するときは、お母さんが相手役をしてくれるんです。お母さんはピアノの先生なので、“なんでここで感情が高ぶってるのに『クレッシェンド』になってないの?”って音楽用語で教えてくれて、まだまだ考えなくちゃいけないことがたくさんあるなって思います。そうやって考えていったことに、監督に言われたことを付け足していって、今回の役を作り上げることが出来ました」
――優里音さんがこの仕事始めたきっかけは?
「元々おばあちゃんの勧めで3歳から児童劇団に入って活動を始めました。初めてスペシャルドラマに出たときに、奄美大島で撮影したんですが、そのころはお仕事って感覚じゃなくて、旅行気分で“こういうの楽しいな〜”っていう感覚でした。その後に朝ドラに出た頃には、『仕事』という感覚が大きくなって、緊張もするようになってきたんですが、自分だけど自分じゃない、いろんな人になりきるというのがすごく楽しくて。それでこの仕事を続けていられるんだなって思います」
――イトーカンパニーの『ネクストヒロインオーディション2015』に応募したのは?
「私は蒼井優さんに憧れているんですが、映画『少年H』の撮影のとき、別の映画を撮影中の蒼井優さんを見かけて、すごくキラキラしていてキレイきれいだなって大好きになったんです。子役の事務所を出てから大人の事務所を探していて、『デビュー』でこのオーディションを見つけたとき“ここは蒼井優さんがいるところじゃないか!”って思って。お母さんに“応募したい”って言ってチャレンジしたんです」
――それで合格してしまうのがスゴイです。デビューも審査に参加したんですが、自己PRで見せた反復横跳びはインパクトがありました。
「みんなが歌を歌ったり、ダンスしているなかで、一人だけ超体育系な自己PRだなって。緊張でやる前に言おうとしてたことも全部飛んじゃったし、下に敷いたラインの紐もぐちゃぐちゃになったんですけど、宣言した100回が出来てホントに良かったです」
――演技審査はダントツに評価が高かったことを覚えています。相手役もいての即興演技は難しかったのでは?
「これまで演技は楽しんで出来ていたんですけど、オーディションでは審査員もいるし、一般のお客さんも入っていて、そんな中で自分の運命が決まるオーディションを受けるんだって思ってすごく緊張しました。台本をもらって練習したときに、一番最初に出てきた言葉を使いました。台本を読むとちょっと恋しちゃってる感じなので『はぁ〜』とか自然に出てくる言葉を意識して。“セリフを言ってます感”だけは絶対に避けようと思いました」
――そして準グランプリに選ばれた感想は?
「信じられませんでした。イトーカンパニーに入れることになったのがすごく嬉しかったです。演技のお仕事を一度休業していて、ピアノに専念していたので」
――お芝居の仕事からは離れていたときだったんですね。
「でもピアノって演技に似てるなって思います。感情を込める部分が演技につながるところがあって。ピアノをやればやるほど演技をしたくなる。そして演技をしてるとピアノもやりたくなるっていう(笑)」
――同じオーディションでグランプリを獲得した瑚々ちゃんをはじめ、同じ事務所に同期の女の子がいるというのは心強い?
「瑚々ちゃんは関東だけど、ほかの3人(白上心望・花田優里音・宮園明優)は全員関西地方で、そういうのもちょっと心強かったり。瑚々ちゃんは同い年なので、すごく気軽に話せます」
――普段、学校とかではどんなことをしているのが楽しいですか?
「最近ハマッているのは学校の先生ごっこ。友達とふたりで台本をつくって先生のマネをするんです。でも普通の先生じゃなくて、ちょっと『金八先生』を入れてみたり、生徒にムチャぶりしたり。面白先生を演じるのが楽しいです。元々小さいときからモノマネが好きで、お医者さんを見たら聴診器が欲しくなったりする子でした」
――女優の素質があったのかな? 女優って言ってみれば「贅沢なごっこ遊び」ですよね。
「女優は自分と全然違う役も演じられる職業で。自分じゃない自分を演じるのがすごく楽しいので、このお仕事は向いていると思います」
――これからの目標は?
「ドラマや映画にたくさん出て、カメレオン女優って言われるような、いろんなジャンルの役ができる女優さんになりたいです。でも小さいときから映画監督になりたい夢もあって、自分が撮った映画に自分も出演するのが夢ですね」
――監督になりたいって思ったきっかけは?
「小さいときに出た映画『ホールイン・ワンダーランド』の監督さんが女性の方で(清水艶監督)。私も初めて映画に出るので、監督といろいろしゃべって、学校の合宿みたいな感じで撮影したんですよ。休憩時間にカチンコを持たせてもらったり、監督の真似をしたりして、スタッフ気分になりながら撮影したので、そのときに楽しいなって思ったのが記憶に残っているんです。だから自分で監督した映画に自分も出て、女優の経験を活かして演技指導したりしたいんです」
――そして目標の女優さんはやっぱり蒼井優さん?
「作品や役柄によってホントに感情がコロコロ変わるので尊敬しています。イトーカンパニーを目指したきっかけでもあるので、事務所の先輩の蒼井優さんが目標として頑張ってます」
花田優里音が出演する映画『スリリングな日常』は、6月25日、東京・ユーロスペースでロードショー公開。
■花田優里音プロフィール■
はなだ・ゆりね●2004年7月3日生まれ、兵庫県出身。趣味・特技/ピアノ歴6年(ピティナピアノコンペティション優秀賞)、日本舞踊、陸上。NHK連続テレビ小説『ウェルかめ』(須藤ゆず役)、『カーネーション』(小原優子の幼少期役)、映画『少年H』(妹尾好子役)に出演。6月25日よりユーロスペースで公開されるオムニバス映画『スリリングな日常』の一編『あさのはなし』に安藤夏役で出演。