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2016/06/02 21:08
藤原薫、原嶋元久ら若手俳優が挑む、おバカな水産系男子5人組の大冒険譚 舞台『ポセイドンの牙』が開幕
舞台芸術集団「地下空港」の新作公演、舞台『ポセイドンの牙』が、1日に紀伊國屋ホールで開幕。初日公演前にゲネプロと囲みが行われ、キャスト陣が出席し、舞台への意気込みを語った。
作・演出の伊藤靖朗が主宰する舞台芸術集団「地下空港」は、1999年の旗揚げ以降、『劇場に旅をする』をテーマに空間芸術と比喩的寓話を融合させた演劇スタイルを確立。強烈な社会風刺と芸術性で高い評価を受け、人間と社会の深層を見つめ、ファンタジックなエンタテインメントで観客を魅了している。
地下空港第16回公演となる『ポセイドンの牙』の主人公は、ナカツ県の乙亀(オトガメ)市にある水産高校に通う“陽気なバカ男子5人組=スイサンズ”。自治体の資金難から母校が防衛人材育成高校(男子校)に変わってしまうという計画を聞き、それを阻止すべく、海底に眠る『黄金の釣針』を手に入れようと画策。しかし、期を同じくして、海底に沈む太古の神々や深海の戦士たちも、その「釣針」をめぐり動き出す……海と人類と愛と夢をめぐる大冒険譚。
囲み会見には、「スイサンズ」メンバーの藤原薫、原嶋元久、猪野広樹、平田雄也、佐野勇斗(M!LK)をはじめ、小槙まこ、田代絵麻(地下空港)、野田孝之輔(地下空港)、兼崎健太郎、中村龍介、渡辺和貴、西丸優子、滝川英治が出席。
スイサンズのリーダー格・須永宇宙期(すなが・そらき)を演じる藤原は「台本を読んだときに作品としてすごく面白くて、稽古も楽しかった。伊藤さんがイメージする作品を自分たちが作り上げていくということが、難しかったですけど、こうして作品となったのが嬉しい」と喜びを語り、「出演者17人全員で、全力で演じていきたいです」と意気込む。同じくスイサンズのメンバーで、煩悶するインテリ・道井磨多井(みちい・またい)役の原嶋は「千秋楽まで、スイサンズチーム一丸となってこの作品に取り組んでいきたいです」とコメント。
海底の神らしき謎の男・ポセイドンを演じる滝川は「地球温暖化や水質汚染、生命の絶滅など、深いテーマが掲げられている。キャストがそういう深い部分を理解して、お客様に提供できるよう、一語一句心がけていきたい」と作品のテーマについて熱くコメント。また「劇中にも出てくるんですが、『汚いおっさん』って言われるような年齢になったんだなって改めて思った」としみじみ語り、「若手の子たちが稽古中からアグレッシブに汗水たらして頑張っている姿をみて、年長者組も刺激を受けたし、切磋琢磨しながら頑張ることができた」と稽古を振り返った。
すると、深海の使者・ドローナを演じる中村も「今作は若者が多い現場で、僕等もずっと“若者”と思ってきたんですけど、いつの間にか30歳も超えて、体力的にもキツイ」と苦笑い。ドローナの相棒で深海の戦士・カルナを演じる兼崎も「そうね(笑)」と同調し、笑いを誘う。それに対し、スイサンズの一員で、孤高の貝類オタク・葛先賢人(くずさき・けんじん)を演じる猪野は「スイサンズが先輩方に勝てるのは、熱量とパワーだと思うので、そこだけは負けない様、7公演乗り切っていきたい」と先輩キャストたちに負けじとアピール。
エロいことで頭がいっぱいな生方英(なめかた・すぐる)役の平田は「スイサンズのメンバーは一人一人個性が強い。一人でももちろん面白いんですが、全員が集まったときのグルーブ感や面白い雰囲気がこの作品にはすごく出ている」と語り、「高校生ならではの、必死さや真っ直ぐさを大切にしてやってきたので、熱く駆けぬけていきたい」と宣言。スイサンズのバカ筆頭・萩原安打尊(はぎわら・あんだそん)役の佐野は「僕はこの中で最年少なんですが、1ヵ月の稽古で多くの先輩方にたくさんのことを教えていただいたので、その成果を発揮できるように頑張りたいです」と笑顔を見せ、スイサンズのマドンナにして武闘派の美少女・寅一知花(とらいち・しるば)を演じる小槙は「みなさんにパワーをしっかりとお届けできるように頑張ります」と力強くコメント。
それぞれ「役作り」についてを聞かれると、平田は「僕は中・高と男子校だったので、男子校ならではの女子に飢えた雰囲気や、外にいる女の子をどうにかしてゲットしてやろうっていう熱がすごくあったので、それを思い出して、この役にブレンドさせました」と明かすと、佐野は「安打尊はおバカでアホな役なんですけど、僕も普段からこんな感じなので、役作りというよりは、普段の自分を出してます」とニッコリ。
孤高の貝類オタクを演じる猪野は「まず孤高ってなんだ?と考えて、この一カ月生きてまいりました」とコメント。すると兼崎が「貝類オタクじゃないけど、稽古中ずっと何か観察してたよね? それが役作りに活きてるんじゃないの?」と語り、猪野も「そうですね。休憩の度に外に行って、蟻の巣をずっと観察してました。きっと、それが“孤高”なんでしょうね」と意外な役作りのアプローチ法を明かした。
父が神父という役柄の原嶋は「キリスト教徒の役だったので、慣れない言葉に対して勉強したりしたんですが、カタカナがたくさん出てくるので、そういう意味を理解するのに苦労した」と語ると、藤原も「僕の役は何事にも一生懸命という役。母が癌で入院している役柄なんですが、余命宣告をされた人を目の前にするという感情がすごく難しかった」と役作りの苦悩をコメント。
『童貞卒業』で頭がいっぱいのスイサンズ5人が、母校再建のため、そして自分たちの未来を守るため、一世一代の大勝負に挑む本作。スイサンズや海神、海の生き物たちが織りなすコミカルでテンポの良い掛け合いが、実に心地が良く、思わず笑ってしまうシーンも満載。舞台上のみならず、客席通路にもキャストたちが降り立ち、劇場全体を使って芝居を繰り広げる。役者の息遣い、空気感を間近で感じることで、その物語の世界観に入り込んだ感覚にもなる。スイサンズをはじめ、海神や海の生き物たち、それぞれ登場人物のキャラクターも個性豊かで、観るものを飽きさせない。
次から次へとテンポよく物語が展開していくにつれて、徐々に浮彫になる環境破壊や水質汚染による生命の絶滅など、物語の根底にある深いテーマ。希望と絶望が入り乱れる中、必死にもがきながら仲間のため、家族のため、自分のために戦いぬく、彼らの姿に「あきらめない」ことの大切さを改めて気づかされる。おバカで元気が取柄だった5人が、海底での不思議な体験を通して成長していく姿はぜひ劇場で体感してほしい。
舞台芸術集団地下空港第16回公演『ポセイドンの牙』は、6月1日(水)〜5日(日)まで、紀伊国屋ホールで上演中。