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2016/03/16 12:01
映画『僕だけがいない街』主題歌でデビュー! 唯一無二の歌声・栞菜智世インタビュー
映画『僕だけがいない街』(19日公開)の主題歌『Hear 〜信じあえた証〜』で16日にメジャーデビューを果たす栞菜智世(かんな・ちせ)。オーディションでその才能を見出された22歳のボーカリストが、大切なデビュー曲への想いを語った。
■インタビュー/栞菜智世
――オーディションできっかけをつかんでから、デビューまでの約1年半は長かったですか? 短かったですか?
「ボイストレーニングをしている間は感じなかったんですが、映画の主題歌に決まったと聞いて、曲を決めたりレコーディングをしたりという本格的な活動が始まってからは本当に一瞬でした。昨年末にレコーディングは終わっていたんですが、もう3月になってしまったという感じです」
――ボイストレーニングを受けたのは初めて?
「オーディションまでは自己流で、歌のトレーニングというものを全く受けたことがなかったので、発声や呼吸の仕方、お腹や喉の使い方など基礎から教えていただきました。それまで自分の声が人にどう聴こえているのか、あまり気にしていませんでしたが、ICレコーダーで声を録ったり、レコーディングで自分の声を聴く機会が増えて、最初はすごく違和感があって慣れませんでした。もう何百回も聴いているので抵抗はないんですが、不思議な感じでした」
――自分の声とじっくりと向き合ったと思うのですが、レコーディングで意識したことは?
「歌い方や声の出し方は、この1年で変わりました。訓練して喉を広げられるようになったので、深い音というか太い声が出易くなりました。それはいいことではあるんですが、歌のイメージや歌詞によっては重く聴こえてしまうことがあるんです。レコーディングのときも“そこはもっと明るいトーンで”と言われることも何回かありました。『Hear』はバラードですが暗い曲ではなく、どちらかと言えば前向きな曲なので。感情がこもっていても、聴いた人が暗いとか重た過ぎると感じてしまうことがあるので、できるだけ作りこまずに、そのままの声で伝えることを意識しました」
――とてもまっすぐな歌声で歌詞に感情がストレートにこもっているように感じました
「“悲しい”という歌詞を悲しい気持ちで歌うとか、“苦しい”という歌詞で苦しい表情をしてみたり、少し詰まらせて歌うという方法もあるんですが、それだと自分の感情だけになってしまいます。歌詞とこれまでの自分の経験を照らし合わせて、情景をイメージするほうが感情が乗ることに、歌っていくなかで気付きました。歌詞に共感できるところがたくさんあったので、感情移入は出来たんですが、私がいくら気持ちを込めても伝わらないと意味がないと考えていました」
――この歌詞を読みながら歌を聞かせてもらうと、オーディションでこの世界に飛び込んで、たくさんの出会いがあって、泣いたり、傷ついたりしながら、ここまで支えられ、導かれてきたという、栞菜さん自身のストーリーとシンクロするのかなって思いました。
「今おっしゃっていただいた通りです。普通の大学生だった私が、自分だけポンッとこの世界に入って、自分より10歳も20歳も大人の人たちばかりのなかに入り込んだときに、今まで通りのやり方では通用しないことや、頑張ってると思っても、もっと頑張っている人がいっぱいいることを直接感じたんです。そのときは“孤独”というか、このままじゃダメだと思っている自分や、もっと大人の人とコミュニケーションを深くとりたいと思っている自分がいながら、自分の中で壁を作ってしまっていました。」
――自分がここにいていいのか?って考えたり。
「“人のいうことをすべて鵜呑みにしてはいけない”って言われたこともあって。信じたいけど、果たして信じてついていっていいのかっていう葛藤があったり。私、大人の前で感情を素直に出すのがすごく苦手だったんですよ。心の中で思っていることと違うことを言ったり、ちょっと強がったことを言っていても、実は凄く傷ついていたり。でもある時、内に秘めていた自分の感情を抑えられずにバン!と言っちゃったときがあったんです。そうしたら“人間味があっていい”って褒められたんです。今まで取り繕って、いい子に見せようとしていたのも、大人には全部バレていたんだと思います。“涙を流すのも、怒りをぶつけるのも、そっちのほうが人間らしくて全然いい”と。そこで初めて“お前が成長した瞬間だ”って言ってもらえたとき、何か壁がパンッって無くなった気がして。そこからは自分の想いを素直にぶつけられるようになったんです。もちろん間違いは指摘されるんですけど、自分の言葉で皆が共感してくれたり、笑ってくれたりすると、ただの『女の子』から一人の『女性』として社会に一歩踏み入れた瞬間みたいな感じがしました」
――スタッフとの信頼感も生まれたんですね。
「歌詞に“信じるほど 言葉だけじゃ 伝えられない”という言葉があるんです。信じたいけど、“信じるな”と言われたり、“信じますよ”“信じられない”って言葉で簡単に言えるようなことじゃなくて、言葉にすると重みがなくなって、結局何も言葉にならずにただ黙って、泣いたりして。デビューが決まってからここまでいろいろあったけれど、やっぱりこの人たちについてきて良かったなってすごく思っているし、諦めないでぶつかって、自分をさらけだすことも大切なんだって感じられので…。そういう想いもこの歌に詰まっております」
――実際に出来あがった曲を聴いてどう思いました?
「聴いてすぐに良い歌だなと思いました。本当にそれがストレートな感想です。自分の曲なんですけど、客観的に聴いて純粋に感動してしまいました。そして映画を観て自分の主題歌が流れたときには、また違った感情があって。映画を観ている最中も“今の台詞、『Hear』の歌詞にも出てくるんだな”とか勝手に一人で盛り上がっちゃって。もちろん主題歌なので、映画にあわせている部分もあるんですが、こんなにも結びつく部分があったんだということにも感動してしまって、また涙する。と言う感じでした」
――そこまで想い入れのある作品ができたのは幸せですね。ちょっと話を戻すと、歌のトレーニングの一つとして、路上ライブもやっていたとか。
「今も続けています。でも1回目は心が折れました。私自身、駅前で路上ライブをやっている方を見て足を止めたことってないし、相当引き付ける何かがないと難しいんだろうなってイメージする一方で、一人ぐらいは止まってくれるだろうっていうプライドもありました。実際に1回目をやってみたら、本当に誰も止まってくれなくて。その日家に帰って、自分の部屋に入る前に、お風呂に直行して、これでもかっていうぐらい涙が出てきました。本当に悔しかったし、悲しかったし、一人ぐらい止まってくれるだろうっていう甘い考えの自分にもイライラしていました。次からはどうやったら止まって耳を傾けてくれるのかって、お風呂の中で考えるのが日課になっていました」
――その時はどんなことを考えていましたか?
「持ち歌が少ないのでカバーを歌わせてもらっているなかで、自分らしさが全然出せてないということに気がついて。2曲の持ち歌の中でも、『栞菜智世』という個性や歌い方、イメージや雰囲気について、伝わったものがあるとか、想いを感じると言ってくださる人がいるならば、既存の曲でも栞菜智世らしく歌わないとダメだと思って。路上ライブのビデオを見直したり、レッスンで相談したりして、試行錯誤するなかで、だんだんと止まってくれる人が増えるようになっていきました」
――手ごたえも感じられて、成長する機会になったんですね。
「4、5回目ぐらいのとき、路上ライブをやっているすぐ近くでダンスイベントがあったんです。それを見に来たキッズダンサーたちが7〜8人、私の歌を聴いてくれていたんです。一旦ダンスイベントを見るためにいなくなったんですけど、その子たちが仲間を連れて、戻って来てくれて、手拍子で盛り上げてくれたり、私の両隣を囲んで、一緒に踊ってくれたんですよ。本当に嬉しかったんです! たぶん一生忘れないと思います。その日までは、正直やりたくないと思った日もあるし、人前で歌うことの恐怖もあったんです。その子供たちとの出会いは“やっぱり歌っていいな”って思えた瞬間でもありました。そこでまた、諦めずにコツコツ頑張ろうって思えたので、その子たちに出会う前と出会った後では全然違っています
――ついにCDが発売となりますが、今の心境は?
「期待と不安が混ざってる感じです。ミュージックビデオも公開されて、いよいよだなっていう楽しみな気持ちもあるんですけど、不安もそれと同じぐらい大きいです。デビュー曲で映画の主題歌をやらせていただけるばかりか、映画の規模が凄く大きいので。全国の劇場で自分の歌が流れるという喜びもありつつ、プレッシャーや不安もあるという、今はよくわからない感情です」
――今考えている夢や目標はありますか?
「オーディションの歌唱審査でお客さんと審査員の前で歌ったんですが、本当に緊張していて、ステージに一歩出るまでは緊張していたんです。でもステージに出て、お客さんの顔を見て歌い始めたらものすごく楽しかったんですよ! 今でもそのときの感情を覚えています。人前で歌うのってこんなに気持ち良くて楽しくて嬉しいことなんだというのを一度味わってしまったので、今はライブがしたいですね。私の歌を聴きに来てくれた方に、感謝の気持ちを持って自分の曲を歌ったら、オーディションのときとは全然違う感情が沸くと思うので。カバー曲であれだけ自分の感情を出せたということは、オリジナルの『Hear』を歌ったときにはどういう気持ちになるんだろうって、自分自身も興味があるので。やっぱり生でこの歌を歌いたいです」
――最後にデビューを目指すユーザーに向けてメッセージを。
「今まで言われた言葉で『反省はしろ、後悔はするな』という言葉が印象に残っています。“努力は無駄だった”とか“つらい思いをしてまでやらなきゃよかった”という後悔より、“自分のやりかたがダメだった。なら次はこうしよう”という反省のほうが、前向きになれると思います。それでも悩んだり立ち止まったりしたら、本当に涙を流すとか大声を出すとかして、溜め込まず、周囲とコミュニケーションをとることも大事。自分の中でこれだと思ったことを諦めずに続けることで変われることを、身を持って実感しているので、皆さんにもチャレンジしてもらえたら、私としてはすごく嬉しいです」
栞菜智世デビューシングル『Hear 〜信じあえた証〜』は16日に発売。