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2018/06/18 12:01
今夏再びフランス『Japan Expo2018』に挑む、俥夫ユニット『東京力車』メンバー渡邉善央・田井裕一にインタビュー
東京・浅草で人力車を引く現役俥夫(しゃふ)エンターテインメントユニット、東京力車が、フランス・パリ郊外のパリ・ノール・ヴィルパント展示会会場で7月5日から8日に開催される『Japan Expo2018』に2年連続で出演する。昨年の『Japan Expo』で初ステージを踏み、現在東京力車を引っ張る存在となった渡邉善央と、今年3月から開催されたオーディションを経て加入した、『あいのり:Asian Journey』(フジテレビ)の“ウエディング”として知られる田井裕一に、今年の『Japan Expo2018』への意気込み、俥夫ユニットの活動への想いを聞いた。
毎年7月に開催される『Japan Expo』は、日本に恋する人々が一堂に集結するヨーロッパ最大の日本文化イベント。アニメ、武道、ゲーム、アイドル、日本の伝統音楽など、多様なジャンルの日本文化が集まる祭典として、毎年20万人以上の動員を誇っている。昨年、初めて参加した東京力車は 浅草の下町風情や日本の伝統文化を伝えるため、歌とダンス、アクロバットで熱いパフォーマンスを披露。開催期間中に約8000人の観客動員を集めた。さらに、人力車に来場者を乗せて会場内を周回するサービスには長蛇の列ができ、フランスの各メディアでも話題となった。
――昨年『JAPAN EXPO』を経験してみていかがでしたか?
渡邉「ライブの初ステージが海外の『JAPAN EXPO』だったので、自分の気持ちの持って行き方も分からなくて、不安ばっかりでした。でも、フランスに行ってみたら、こういう(俥夫)恰好だったり、見たことがない乗り物を、ものすごく珍しがっているのが反応で分かって伝わってきました。人力車のブースも、どこまで続くか分からないぐらいめちゃくちゃ長い行列ができたり。ステージのパフォーマンスも、ノリのいい応援で優しくて。あたたかい笑顔に包まれて、楽しかったです」
――現地でお客さんを乗せて走ってみて、実際どんな感想がありました?
渡邉「リアクションも多種多様でしたが、一番は皆さん驚かれていました。『この乗り物はなんだ?』『乗ったことがない!』って感覚で。『JAPAN EXPO』で人力車を体験したりライブをご覧になった方が、ユニットのことを覚えてくれていて、日本に来てわざわざ浅草までお越しいただいて、乗りに来てくれたのはビックリしましたし、すごく嬉しかったですね」
昨年の遠征を体験しているリーダーの石橋拓也(26歳)、メンバーの渡邉善央(23歳)に加え、『あいのり:Asian Journey』(フジテレビ)にウェディングプランナーの“ウエディング”として出演していた田井裕一(24歳)、歌手志望の夢を諦めず東京力車への加入を熱望した白上一成(24歳)、ベビーフェイスが特徴の山田和則(20歳)の3人がオーディションで新たに加入。この5名による新体制の東京力車としての活動がスタートを切った。
――約1年間の活動を経て、あらゆる天候はもう経験済みでは?
渡邉「ほとんど経験したんじゃないですか。炎天下はもちろん、雪の日も経験しましたし、台風が来て嵐のような日も。そうそう、大きな雹が降った日もありましたね」
――新体制では新メンバーを引っ張る立場になりますね。
渡邉「まだ新メンバーは入ってきて1ヵ月も経っていないんですけど、レッスンやプライベートでも会う機会が多いし、仲がいいんですよ怖いぐらいに。これから先、この関係性が崩れるんじゃないかなぁ、最初が良すぎて(笑)。個性が強いキャラクターが集まって来たので、楽しみですね。ちょっと…イケメンが揃いましたね(笑)。立場がなくなってきた…」
――田井さんが俥夫にチャレンジしようと思ったきっかけは?
田井「学生のときから、いろんな方との交流を企画するのが好きでした。100人で沖縄旅行や、東北の震災の援助にいったり、大学には留学生が多かったので、留学生の枠をとって一緒に行ったり。元々の夢が社会の先生で、歴史が大好きなので、普通に大仏を観に鎌倉に行ったり、涅槃像だけ観に福岡に行ったりしていました。いろいろと海外の一人旅もしてきたんですが、自分が感じた日本の素晴らしさを伝える場がないなと感じていて。そこで調べていたら、そういう想いを持った人たちがユニットとしてやっているというのを見つけて『面白い!』と感じたんです。ここだったら、自分が本当にやりたいことを実現できるのかなって思って、オーディションに応募しました」
――『あいのり』に出演したのも、そういう想いの延長線上。
田井「日本の良さを、自分の表現方法で伝えたいなって思っていました。ちょっとステージアップして歌とか、ダンス、演技、エンターテイメントとか、語学力もさらに伸ばしていきたいと思っています。『あいのり』に参加したことで、知ってくださってる方も増えたので、自分にしか伝えられないものもあると思います」
――大学が国際交流などの専攻だったんですか?
田井「そうではなくて、学生団体を自分で立ち上げたんです。そのときもスタートが5人だったので、今回も5人で再出発と言うことにもちょっと縁を感じてます。そのときもバラバラな奴らの集まりだったので、この東京力車のメンバーとも、それぞれずーっと繋がるような関係性でいたいって思ってます」
――歌やダンスの経験はあったんですか?
田井「まったく。歌も人に馬鹿にされるレベルで。ダンスもフラッシュモブを企画する側で、踊る側は苦手なので避けてたぐらいなんです。でも今度は自分の身体を使って想いを伝えなきゃいけないと思って必死に頑張ってます」
――オーディションの時はどんなことをアピールしたんですか?
田井「ギターをちょっとやっているので、『あいのり』のなかで披露した、初めて自分で作詞作曲してコードを付けた曲を…」
渡邉「あの曲!?」
田井「すごく恥ずかしかったんですけど、あのオーディションで自分の殻を一つ破れたというか。恥ずかしかったけど、表現するのが好きだということを自分で感じることができたので、このチャンスを活かしたいです」
――現メンバーからの最初の印象は?
渡邉「来た!『あいのり』の人(笑)。って。以前から認知していたので、“ウェディング”と、新メンバーの“田井裕一”のイメージが僕の中で重ならなくて。なんか『あいのり』では大人しいキャラだった?」
田井「あんまり喋ってないクールな感じでしたね。特にそういう部分が切り取られていたので、ちょっとスカしてる奴みたいなイメージ」
渡邉「でも実際会ってみたら、話しやすくて明るい。たまにプライベートで遊びに行くときは、田井ちゃんから『飲み行こうぜ』『ここに行こうぜ』って感じなんで」
田井「寂しがり屋なので(笑)、誰かといたいんです」
渡邉「誰でも馴染みやすいタイプだと思います。逆に田井ちゃんの俺のイメージはどんな感じ?」
田井「“負けたぁ”〜って感じ」
渡邉「どういうこと?」
田井「彼は僕を明るいって言ってくれるんですけど、けっこう人見知りな部分があって。営業じゃないんですけど、いろんな輪の中心にいたので、誰とでも絡めるような感じのキャラができるので勘違いされやすくて、二人だとしゃべれないこともあるんです。でも、東京力車は善央をはじめ、バッシー(石橋)とか、メンバーはみんな馴染みやすくて、素の自分が出せる。善央に関しては…『負けたぜ…顔』」
渡邉「それ、喜んでいいヤツ?」
田井「小さく舌打ちして、負けを認めて、お笑いキャラでいこうかなって」
渡邉「やめてくれよ(笑)」
田井「善央は年下なんですけど、しっかりしているし、こういう風になりたいというものもちゃんと持っているんです。男らしい部分があって対等に喋れるので、毎日刺激をもらいますし、僕も負けないように頑張ろうって思えます」
渡邉「みんな結構バラバラなんですけど、意見交換できたり。いい意味で年上年下関係ないですね」
――現在、田井くんは研修中だと思いますが。
田井「今は座学で、立ち方や姿勢など、俥夫として気を付けることを学んでいます。まだお客さんを乗せてはいないんですけど、浅草のお店を覚えたりするのが大変です」
――入る前に想像していたのと、実際とのギャップは?
田井「全然違いますね、まずは人力車の重さの感覚とか。すごく重たい力仕事のイメージがあったんですが、バランスが大事で、指一本で支えられたり。坂道の上り下りも、ちょっとした持ち方や姿勢の技術でいけるものだったり。やってみないとわからないことが多い分、勉強は大変なんですけど、楽しいです。早くお客さんを乗せて、バンバン走りたいですし、歴史や海外のお客様との交流など、自分の得意なフィールドをさらに伸ばしていきたいです」
――今は、『JAPAN EXPO』に向けて、ユニットとしてのレッスンの真っ最中。
渡邉「もう1ヵ月を切っているので、時間が無い。そのなかでもほとんど毎日ユニットのレッスンをしていて、レッスンが無い日も公園で自主トレをしています。昨年現地に行ってみて、皆さんの反応を感じて、不安がバーッと消えて行きました。今年は2年連続ということで、不安と言うより、楽しみという気持ちが強いです」。
――ちょうど1年前に自分たちが経験していることだから、新メンバーにもリアルに伝えられますね。
渡邉「そうですね。元々ある曲はすでに踊れるんですが、それを教えてあげる立場となると、教えるほうも大変だなって。去年以上にダンスもアクロバットも激しくなって、いい感じになると思うので、この1年間で成長したところを少しでも『JAPAN EXPO』で見せられたらなって思います」
田井「性格上、何にでも挑戦したくて、何でも楽しめるタイプなんですけど、楽しいだけじゃなく、お客さんの前にパフォーマーとして立つことに関しては壁も感じてます。でもひとりで悩んでいてもしょうがないので、善央や石橋に聞いて、できないなりに真摯に取り組んでいくしかないと思っています。焦りがありながら、楽しみながらも、みんなで充実した、本当に部活みたいな、毎日が文化祭前日みたいなイメージです」
渡邉「新メンバーみんなが“盛り上げたい”っていう想いがすごいから、僕たちは教える側として、細かい振り付けで絶対に妥協はしたくない。メンバーの勢いを消さずにマッチさせることが、今出来ている感じかな」
――2020年の東京オリンピックが近づいています。世界中から人があつまるときこそ東京力車の出番ですよね。
渡邉「去年は“あと3年ある”っていう気持ちが、“もう2年”しかないっていう感覚に変わっています。2020年の東京オリンピックを目標に頑張っていくことも大事なんですけど、その前にある目標を明確にして、がむしゃらに一個一個やっていくことも大事だと思うんです。例えば『浅草公会堂でワンマンライブをする』っていう目標とか。浅草公会堂は演歌や歌舞伎の会場なので、ポップスの僕らがワンマンをやったら面白いと思うんです」
田井「『JAPAN EXPO』も一つの通過点ですけど、その通過点を大事にして毎日があるということを、自分の中に落とし込んで、そのために何ができるかということを考えながらゴリゴリに頑張りたい。多分、一つステージをやってみて、ステップアップした先に、何かしら面白いことが出来るということがなんとなくわかって来たので」
――ここまで続けていて改めて感じているやりがいは?
渡邉「始めたてのころは、自分のためだけって感じだったんです。でも、いろんなお客さんと出会って、いろんな話をして、自分に響くものや、新しいものをめちゃめちゃ発見できました。お客さんに笑顔になってもらうことはすごく気持ちのいいことだと感じていて、一人でも多くのお客さんに人力車に乗ってもらえたら、本当に嬉しいと思う。結構、営業もガンバっています(笑)。老若男女、世界中からいろんな人が来ているので、楽しいです」
――個人としての将来的な夢はなんですか?
田井「日本中、世界中のいろんな場所に旅に行って、いろんな話を聞いた中で人生観が変わったりしたので、今度はそれを僕が伝える番になりたいと思うんです。僕でしか体験できなかったことを伝えて、誰か一人でも『明日頑張ろうとか』『目標が出来ました』って思ってもらえるような、そういう人間になりたい。そのためにも、今はいろんな経験をしたいと思っています」
渡邉「僕は、去年からずっと演技をやりたいという思いは変わっていません。この1年間でいろんなオーディションを受けて、作品に出演させていただいたり、役者さんの友達が出来たりするなかで、もっと演技に対して深く入っていきたいという気持ちが強くなりました。その一方で、自分しかしてこなかった経験を活かせる俳優になれたらと思っていて。人力車を引いてきた俳優なんていないじゃないですか?(笑) そういうことを活かした演技ができる役者さんになれたらいいなって思います」