世界最大のアイドルの祭典『TOKYO IDOL FESTIVAL 2017』の2日目、8月5日に、アイドルの腕相撲女王を決する『TIF2017アームレスリング大会 powerd by TOWER RECORDS ザ・感謝祭』が開催された。予選を勝ち抜いた5選手とシード4選手の9名で決勝トーナメントを実施。タワーレコードから流出したベルトの奪還を目指したアップアップガールズ（仮）森咲樹は、決勝戦を前に敗退。今年1月にベルトを奪い去った女王・酒井瞳（元・アイドリング!!!／メンテナンス）が、圧倒的な強さでベルトを保持した。

　タワーレコードのアイドルレーベル「T-Palette Records」のイベント『T-Palette感謝祭 2014』のなかで始まったアイドルによるアームレスリング大会。第1回はアップアップガールズ（仮）の森咲樹がNegiccoのNao☆を決勝で破って優勝。2015年の大会で連覇し、アイドル腕相撲ナンバーワンに君臨していた。しかし2016年にTIFのステージで行われた試合で酒井が森に勝利。さらに2017年1月のT-Palette感謝祭企画『アームレスリング王座決定戦』に酒井が特別参戦し、再び森を下して新王座に就き、ベルトが他団体・SMA（ソニー・ミュージックアーティスツ）に流出する事態を招いてしまった。

　今大会は、森による酒井へのリベンジと、タワレコのベルト奪還がテーマとなっており、ステージ上はアイドルのイベントとは思えぬガチな空気に満ちていた。この日の出場選手は、酒井瞳、佐保明梨（アップアップガールズ（仮））、森咲樹、我妻桃実（ハコイリ◇ムスメ※◇は正式にはハートマーク）らシード4選手と、当日行なわれた予選を勝ち抜いた、高萩千夏(アップアップガールズ(2))、石田千紘(絶対直球女子！プレイボールズ)、齋藤里佳子(DEAR KISS)、篠原みなみ(虹色幻想曲〜プリズム・ファンタジア〜)、榎本あやせ（Q-pitch）の5選手の計9名。

　優勝候補の森は、登壇するや、ボディプラントで鍛え上げた両腕を誇示。「1年前のTIFでさかっち（酒井のニックネーム）さんに負けてから、1年かけてトレーニングしてきた成果を見せて、アイドルの日本一を取りたいと思います」と宣言。続いて「SMA！SMA！」というコールにのって、後輩アイドルグループ・AIS（All Idol Songs）を引き連れて登場した酒井。「なんかぁ、ここに来たら気持ちいい思いできるよ〜って言われて。空き時間があったんで子分連れてきました〜」と憎々しい口調でヒールに徹し、AISのライブ告知を差し込むなど、傍若無人の振る舞いを見せる。

　ベルトの一時返還の際、ベルトを粗末に扱う酒井に対して「そんなに軽々しく扱わないでっ！」と悲鳴をあげる森。酒井は全く意に介さず「別に欲しかった奴じゃないから。どうしたの？　みんなピリピリして！　楽屋の雰囲気が選手村か！って思ったの。アイドルのお祭りだよ？」と言い切り、そのあまりの温度差に会場も爆笑。しかし、ベルトのほかに“TIFの偉い方々”からポケットマネーで賞金3万円が用意されたと聞くと「絶対勝つね！　鍛えてくればよかったなー！」と俄然やる気を出す酒井であった。

　わずか数秒で勝負が決する腕相撲だけに、サクサクと対戦は進み、あっという間にベスト4が出そろう。その一角には、今年初出場ながら、予選から数えて4連勝で準決勝まで駆け上がって来た高萩。憧れの先輩・森との対戦を目指し、一回戦負けで涙を流した佐保の分も背負って臨んだ高萩は「緊張しすぎて泣きそうです！」と早くも涙目。酒井は「教えて？ なんの涙なの？」と困惑ぎみ。

　試合では、一度は優勢に立ったかに見えた高萩だったが、余力をたっぷり残していた酒井に逆にねじ伏せられ、あえなく玉砕。緊張から解放されて、悔しさがこみ上げた高萩は「ダイエットを中断して…今日のために体重増やしたのにー、森さんに勝とうと思ったのにー」と号泣。酒井は「それはゴメン！」と慰めつつ、「アプガってめっちゃ泣くね！」と高笑い。森も「素直なんですっ！」と言い返し「高萩の分も背負ってやります」とさらなる闘志を燃やす。

　準決勝のもう一方の山は、ハコムス我妻と森の対戦。T-Palette感謝祭で森に敗れている我妻は「前回のときよりも森さんのこと好きになっちゃってですね…。アプガさんの中で一推しに近い二推しなんです」と怪しげな微笑み。森は「打倒さかっちさんで頑張ってきましたけど、もちろん目の前の相手にも気合いを込めて、感謝の気持ちを込めてパフォーマンスしたいと思っています」と発言。「“パフォーマンス”って。余裕ぶっこかれてるよ！」と煽る酒井だったが、森が数秒後、この発言を後悔することになるとは、この時点では誰も想像しなかった。

　熾烈なポジション取りの後、がっちり組んだ両者に試合開始が告げられると、瞬殺で我妻が勝利。黄色い歓声を上げながらハコムスメンバーが我妻に抱きつく中、思わず手で口を覆い目を丸くした我妻は「これでオッケーですか？　私勝って大丈夫なやつですか？」と動揺。信じられないという様子の森は、台から離れられずに立ち尽くす。やっと振り絞った言葉は「私、負けた…？」。「ちょっとここで負けることは考えてなかったので、状況がのみこめない」と茫然自失の森は「負けちゃいましたけど、私がこれまで1年間…これでも頑張ったんだから！　森ティーの生きざまを見てもらえたかな…」というと声を上げて泣きじゃくる。そんな純な姿を見て、「アプガすぐ泣くほんとに〜」という酒井とともに会場も大爆笑。「こんなおおごとにしちゃって、マズいですよ」と佐保も焦るが、そこは酒井が「じゃあ今夜の『スナックうめ子』（酒井がMCのトークステージ）、アームレスリング大会の後夜祭にする？　私と戦いたい人はみんな来てね」と混乱を収束させた。

　ひと盛り上がりして、すでに大会が終わったような雰囲気に包まれたが、気を取り直して決勝戦へ。アマレスのユニフォーム姿で気合十分の我妻は「私は4月からハコイリムスメのリーダーになりまして。普段ハコムスは可愛らしいパフォーマンスをしているんですけど、こういうメンバーもいるんだぞ！っていうのを、しっかりと皆さんの目にも心にも焼き付けられるような試合をしたいなって思います」と16歳とは思えないしっかりとした口調でアピール。一方の酒井は、応援に来た「メンテナンス」のメンバー（朝日奈央、古橋舞悠、関谷真由、佐藤ミケーラ）に「どうみても応援が弱い」と文句をつけながら試合台へ向う。

　決勝戦では、一度は追い詰められたかと思われた酒井が完全に我妻の力を見切り、余裕の笑顔を見せながら逆転勝ち。「やったあ！　なんか勝っちゃった」と拍子抜けするようなコメントに、応援していた朝日も「さっきまで楽屋で寝てたんですよ！」と驚愕する。健闘むなしく破れた我妻だったが、その表情は明るく「実は、元々すごくアイドリング!!!さんが大好きで。だから今日決勝で酒井さんと濃厚接触？できたのが凄く嬉しくて。また酒井さんと濃厚接触できれば本望ですので、その時には私も力をつけて、もっと頑張りたいなと思います」と、美少女だけにギリ許されるちょっとキモいオタク発言。酒井も「新しいジャンルで接しづらいヤツだ（笑）。ごめんね、私そういう扱いされないから」と苦笑い。

　表彰式ではタワーレコード株式会社代表取締役社長・嶺脇育夫から、真紅のチャンピオンベルトと金一封3万円が授与された。酒井にとっては、この3万円のほうが嬉しそうだ。嶺脇は「残念ながら、ベルトが他団体（SMA）流出のまま、タワーレコードの所属アイドルに戻ってきてないということで。もう一回リベンジの場を作りたいなって思います」とアームレスリング大会の継続を宣言すると、会場も大歓声。酒井は「私は負けない限り鍛えることは無いので。皆さんがどれだけ強くなって私に挑んでくるのか、楽しみに待っていたいと思います」と、アイドルたちに奮起を促した。

　ちなみに、その夜の『スナックうめ子』に熱望して出演、酒井にアームレスリングで挑んだ森はあえなく一蹴された。ただし左手で挑戦したところ、まさかの初勝利に号泣したことを付け加えておきたい。TIFに出場を果たすアイドル性と腕力を併せ持つアイドルたちの真剣勝負が、ファンを虜にし、毎回ドラマを生み出すアームレスリング。「ストップ・ザ・さかっち」をテーマに進んでいくアイドルのアームレスリング界にこれからも注目したい。

◆試合結果◆

1回戦第一試合／○石田千紘（絶対直球女子プレイボールズ！）×●佐保明梨（アップアップガールズ（仮））
1回戦第二試合／○高萩千夏（アップアップガールズ（2））×●齋藤里佳子（DEAR KISS）
1回戦第三試合／○榎本あやせ（Q-pitch）×●篠原みなみ（虹色幻想曲〜プリズム・ファンタジア〜）
2回戦第一試合／○高萩千夏×●石田千紘
2回戦第二試合／○我妻桃実（ハコイリムスメ）×●榎本あやせ
準決勝第一試合／○酒井瞳（メンテナンス：SMA）×●高萩千夏
準決勝第二試合／○我妻桃実×●森咲樹（アップアップガールズ（仮））
決勝／○酒井瞳×●我妻桃実