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2013/03/26 19:01
寺島咲、親戚に恋する難しい役柄に挑戦した映画『私の叔父さん』がDVD化
女優の寺島咲(22)が出演し、昨年公開された映画『私の叔父さん』が、DVD化され、20日にリリースされた。今年で女優デビュー10年目。この作品をはじめ、映画、ドラマで着実に役柄の幅を広げている彼女に、この10年での女優の仕事への取り組みを聞いた。
20日にDVDとしてリリースされた映画『私の叔父さん』。叔父とめいの禁じられた恋を描いた、連城三紀彦原作の短編小説を映画化。カメラマン・構治(高橋克典)は、兄妹のように育った6歳下のめい・夕季子(寺島)と再会。短期間の共同生活を通してお互い次第に惹かれていく…。
叔父に恋をするという、難しい役柄を演じることにあたって、寺島は「最初は設定的に、親戚に恋をするという感覚がわからなかったんです。でも実際に撮影に入ると、叔父さん役の高橋克典さんが現場で優しく話しかけてくださったり、交流する中で、自然と憧れを抱くという感覚になれました」と話す。
「高橋さんは、私だけじゃなく周りのスタッフの方にも、コミュニケーションをとるためにいろいろと話しかけられていて…。夏場で密室での撮影でハードだったんですけど、みんなのモチベーションが落ちずに楽しく撮影できたのは、高橋さんの存在が大きかったと思います」
時代設定は1990年代前半。ちょうど寺島が生まれた時期にあたるが、その時代の女性を演じるにあたっては「もともと、私、今どきの子っぽくないと言われてるので(笑)、その雰囲気を出そうということは特別意識しなかったです」。その言葉通り、特に90年代の風景に違和感なく溶け込んでいる。「それよりも、役柄の気持ちを表現することに力を注ぎました。
この作品は2人の叶わぬ恋ということだけじゃなくて、周りの人たちの思いも交わって、いろんな意味でせつない話だなと思いました。でも、ただせつないだけや悲しいだけじゃなくて…」
寺島にとって、これまで恋心を表現するお芝居はあまり多くはなかった。
「この役を演じるまで、恋愛に対してせつないという感情がわからなかったのですが、人を好きになるのって、楽しかったり、せつなかったり、本当にいろんな感情があるんだなって思いました」
さて、今年で女優の仕事を始めて、早くも10年になる寺島。
「10年と聞くと長いと思いますが、あっという間でした。毎回その時その時が必死で一生懸命だったので、言われてみるとそんなにたったんだ、という気がします」
この10年の間にターニングポイントになった作品もいくつかあったという。その一つが08年公開の映画『櫻の園』。
「撮影の時、監督が『ここはどうしたい? ここはどう動く?』と私に意見を求めてくださったんです。それまでは、セリフの言い方は自分で考えますが、動きは現場に行ってから監督やスタッフの方からの指示に任せていたんです。私はなるべく監督が思い描いているイメージを表現できるように心掛けていたんですけど、初めて自分で考えなければならないという環境になって、最初はすごくとまどいました。そのときはじめて演技って難しいなと思いました。それ以降は、自分で考えることも必要なんだなと思うようになって、それが楽しく感じたりもしました」
映画への出演が多かった寺島だが、この1年はドラマの現場も増えた。
「やっぱり映画とドラマって撮り方が違って…。映画は最初から終わりまで台本が決まっていて、観る人も最後まで観てくれる前提で撮りますが、ドラマは1話1話ごと、観る人が最後まで観てくれるとは限らない。だから一瞬一瞬で切り取ってもわかりやすく見えるように表現しなければならない。一瞬でどれだけ観せられるのが今後の課題だなと思いました」
映画の撮影ペースが身体に馴染んだ寺島にとっては、最初はドラマのペースに慣れなかったという。
「映画は1シーンを長く撮ってくれるんですけど、ドラマだと短いカットをつなげていく形で、撮影の順序も必ずしもシーンの順通りではないので、気持ちをつなげていなければならないんです」
これまでは等身大のナチュラルな少女の役を演じることが多かった寺島だが、ドラマ『書店員ミチルの身の上話』(NHK)では殺人を犯す役柄を演じている。「自分にはない感覚の役でした。それまでは役を作るというよりも、現場に入って、セットがあって、相手役の人のセリフを聞いて、自然にその世界に入り込むという感じだったんです。でも、そもそも感情移入できない役もある。自分にないものを一から作らないといけない芝居もある。だから自分には気持ちがわからない役に出合うと、特にしっかりやっていかなければと最近すごく思います」
これから年齢を重ねていくにつれ、さらに幅広い役柄と出合うことになると思うが…。「いろんな役柄ができるのはうれしいことです。一つのイメージで固まりたくないので…」と話す寺島。10代の頃の寺島は、その容貌とたたずまいから、古風で優等生の少女のイメージが強かった。
「そうなんですよ。そういう、おとなしくて優等生というイメージもありがたいんですけど …」
昨年放送のドラマ『ATARU』では、絶対音感を持つがゆえに、街に出ると苦痛を感じるという女性を演じたり、一昨年公開の映画『ハードライフ』ではレディースの総長役を演じるなど、近年は、寺島の引き出しになかったであろう役にも果敢に挑んでいる。
「『ATARU』では、特殊な能力を持っていて、個性的な役で演じていておもしろかったです。『ハードライフ』は役柄としては変わっているんですけど、もともとは普通の女の子で、家族の問題がきっかけで、レディースに入った。内面は寂しさとか、誰もが持つ感情を描いていたので、感情移入はしやすかったです」
この春で大学を卒業する寺島。これまで、女優活動だけでなく、同時に学生としての普通の生活も大事にしてきたことで、ナチュラルな存在感を見せてきた。
「学校にいる時や、地元の友達といる時は息抜きの場を与えてくれていたという感じです。
もともと大学に行くって決めたのも、勉強したい気持ちももちろんありましたが、いろんな人に出会えるということも大きかったです。地方から出てくる人、自分と価値観が違う人…。将来女優をずっと続けていきたいという思いがあったから、いろんな人からいろんなことを吸収したいと思いました。プライベートな時間で、人と会ったり、いろんなところに行ったり、そういうのも大事かなと思いました。そのおかげで自分が持ってなかった感覚や感情に触れることができてよかったと思います」
10代の早い時期から女優活動をしていた寺島。
「お仕事を始めたのが早かったので大学に行きたいという気持ちがありました。早いうちから大人の人に囲まれた中にいて、でも同世代の子達と一緒にいたいという気持ちがあって。もちろんお仕事の人と接するのも、役者に対する考えなどを学べて勉強になるのですが、かと言ってそっちばっかりだと普通の感覚を忘れてしまうので…」
最後に『私の叔父さん』のDVDについて、「映画館で観られなかった方もいらっしゃると思いますので、DVDになることで多くの方にも観てもらいたいです。DVDにはメイキングも入っていて、オフショットも観ていただけます。高橋さんのおかげで楽しい撮影現場になっていたので、その雰囲気も伝わると思います」とアピールした。
なお『私の叔父さん』のDVDリリースを記念して、細野辰興監督の代表作3本(ほかに『竜二Forever』『シャブ極道』)のオールナイト上映会を、4月6日(土)、東京・新文芸坐で開催。ゲストに『私の叔父さん』出演の高橋克典が参加、上映前に監督とトークショーを行う。
寺島咲プロフィール
てらしま・さき●1990年9月23日生まれ、東京都出身。03年、映画『理由』でデビュー。以降、映画『理由』、『受験のシンデレラ』(主演)、『モノクロームの少女』(主演)、『ハードライフ』(主演)、ドラマ『3年B組金八先生』、『99年の愛〜JAPANESE AMERICANS〜』、舞台『青春デンデケデケデケ』などに出演。
C「私の叔父さん」製作委員会