大河ドラマ『花燃ゆ』、ドラマ『無痛〜診える眼〜』などに出演し、『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』ではコントに挑戦するなど、女優として幅広く活躍中の石橋杏奈。『第31回ホリプロタレントスカウトキャラバン』でグランプリを受賞し、女優デビューから10年を迎える彼女に、オーディション当時の思い出、女優としての歩みを振り返ってもらった。
「ちょっとでも興味があれば『私はダメだ』とか考えず
ありのままの自分で受けてみてください!!」
ありのままの自分で受けてみてください!!」
――ホリプロタレントスカウトキャラバン(TSC)が今年で第41回を迎えます。杏奈さんがグランプリを獲ったのが31回でした。
「もう10年経つのか……という感じがします。まだ5年くらいしか経っていない気がするので(笑)」
――10年前の杏奈さんはどんな中学生でした?
「目立ってなければ地味でもない、本当に普通の中学生でした」
――ゲームセンターでTSCの募集ポスターを見て、応募したんですよね。
「綾瀬はるかさんとか石原さとみさんとか、田舎でテレビっ子でもなかった私でも知っている人たちばかりが載っていて、“みんなこのオーディション(出身)なんだ!”と衝撃がありました」
――それからグランプリを獲るまで、10年経った今でも覚えてることはありますか?
「たくさん覚えていますよ。記憶がないのは、グランプリで呼ばれた瞬間ぐらい(笑)。スポットライトがあんなに当たると本当に真っ白になって、周りが何も見えなかったし、注目されたことが恥ずかしくて、生きた心地がしないというか(笑)」
――では、どんな場面を特に覚えていますか?
「合宿でスタッフさんと一緒に体育館でバスケをしたり、みんなで焼肉を食べたりしたことは今でも鮮明に覚えています。オーディションを受けたというより、すごく楽しかった思い出があります」
――どんなことを考えながら参加していました?“グランプリを獲ってやるぞ”と意気込んでいたとかは?
「“絶対グランプリ獲るんだ!”とかいうのもなく、“楽しいな”って感じでした。合宿では他の地方の子たちと仲良くなれて、今まで狭い世界でしか友だちがいなかったから、それ自体が楽しくて。東京に来られたのも嬉しくて、当時は“タダで旅行できてラッキー♪”みたいな感覚だったと思います(笑)」
――でも、レッスンは課題が多くて大変だったのでは?
「演技にダンスにボイトレに、経験したことがなかったので新鮮でした。一番覚えているのが、焼肉を食べている途中に1人ずつ呼び出されて別室に行くっていうのがあって。戻ってきた子に聞いたら『言っちゃいけないと言われた』と口止めをされていたので、“何だろう?”とドキドキしながら、別室に行ったら『一人芝居をしてください』と突然言われて。飼っていたペットが死んじゃって……というお芝居をしました。そういうのも初めてで面白かったです」
――デビュー後も、女優の仕事は最初から楽しめました?
「とにかく必死でした。覚えることがたくさんあったし、現場では知らない業界用語が飛び交っていて」
――連続ドラマ『斉藤さん』ではイメージと正反対のギャル役をやったり。
「観月ありささんの胸ぐらをつかんだり、金髪でエクステで爪も長くて、自分にない要素でしたけど、形から入れて楽しかったです。実際に、渋谷のセンター街に行ってギャルを観察したりもしました。“常にダルそうにしているな”とか、感じたことを役に活かせればと思って」
――初期で特に思い出深い作品は?
「映画の『きみの友だち』のときは廣木(隆一)監督がすごく厳しくて、。今となっては愛を感じますけど、当時は毎日怒られてばかりだったんです。助監督さんにも『明日もそれじゃダメだよ』と言われました。『硬い』とか『この台詞をそんな感じでは言わない』とか、ダメすぎて子どもが説教される感じ。廣木さんは細かいことはおっしゃらないので、同じシーンで何回もひたすらテイクを重ねました。OKでもNGでも違いがわからないし、とにかく必死でやるしかなかったです」
――そうして出演作を重ねるうちに、演技に自信が持てるように?
「怒られて多くを学びましたが、自信は今もないです。現場によって求められるものがまったく違いますから。でも、昔に比べたら少しは自信を持って臨めていると思います」
――今回のTSCで10〜16歳の『PURE GIRL』を募集するのは“青春ものをリアルに演じられる”という趣旨だそうですが、杏奈さんは胸キュンの学生青春ものは『近キョリ恋愛〜Season Zero〜』が最後になりそう?
「うーん、どうなんでしょうか?(笑)。でも、青春ものは高校時代にしたかったことが作品を通じて経験できるし、ステキだなと思います」
――そんななか、最近では『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』で、コントにも挑戦されています。10年前は眉毛をつなげてコントをするとは思ってなかったのでは?(笑)。
「まったく想像してなかったです(笑)。10年前の私が『LIFE!〜』を観たら、ビックリすると思います。お話をいただいたときも“何で私なんだろう?”という疑問がありました」
――何でだったか、聞きましたか?
「演出の方がテレビで私を観て“この子を”と思ってくださったそうなんですけど、その番組は、まったくコントの要素がなかったんです。ある作品を紹介するために本を読んだり、イメージカットがあっただけで」
――コントをやって女優として幅は広がったのでは?
「以前は事前に役をイメージして、ひたすら台詞を覚えて臨んでいましたけど、『LIFE!〜』では脚本を読んでいて、“このコントはきっとカツラ(着用)じゃないな”と思って行ったら、カツラだったり、現場でそのコントのイメージが変わることが多くて。他のお芝居ではなかなか経験できないことで、集中力が必要ですね」
――『カッツ・アイ』では、レオタード姿も披露してますね。
「そうですね。テレますけど(笑)。『まっすぐ彦介』の彦美は、カツラで眉毛をつなげて“キャラクター”という感じですけど、『カッツ・アイ』は、髪型もメイクも普通なので、素の自分の感覚が出て、ちょっと恥ずかしいです」
――6月には主演する福島中央テレビ制作のドラマ『タチアオイの咲く頃に』が放送されます。会津から東京の大学に進学して地元と疎遠になっていた役で、気持ちがわかる部分もありますか?
「作品は帰省したときの話ですけど、東京でうまく行かなくて……という背景があって、その雰囲気はわかります。私も“思っていたのと違う”ということはあったので。悪い意味ではないですけど、ドラマの撮影が始まったりすると、朝がとても早いというのも衝撃だったり。女優さんは陰で大変なんだと、上京した頃によく思いました。何でも話せる人が近くにいない状況も初めてで、寂しかったりもして」
――改めて振り返ると、14歳からキャリアをスタートさせたことは良かったと思います?
「本当にそう思います。最初は事務所の寮に入って厳しかったけど、ルールを当たり前に守る環境だったから、今ちゃんとやっていけるようになったのだと思います。20歳になって寮を出たとき、自由になったと感じながら、自制しないといけないとも思いました。お仕事でもたくさんの作品を経験させていただいて、毎回気づくことや勉強になることがあって。10代の頃に現場で教えていただいて、今もすごく活きていることはたくさんあります。大人になってから始めるのとは、全然違う気がします」
――思春期の頃だから吸収できるものも多いんでしょうね。今の時点で女優に特に必要だと思うことは何でしょう?
「楽しむことですかね。このお仕事は表に出る以上に辛いことも、考えなきゃいけないこともたくさんあって。でも、それを楽しめれば、辛くても“もっとこうしたい”と自分から思えます」
――もし今、14歳に戻って今回のTSCを受けるとしたら、どんなことをして臨みますか?
「何もしないと思います(笑)。無理に作り込むより、自然体が一番な気がするので。活躍されている女優さんも自然体がチャーミングな方が多いと、よく感じます。10年前の私も軽い気持ちで受けて、受かるなんて全然思ってなかったし。遊び感覚でもいいので、ちょっとでも興味あれば『私はダメだ』とか考えず、ありのままの自分で受けてみてください」
撮影/大槻志穂 取材・文/斉藤貴志
石橋杏奈
いしばし・あんな●1992年7月12日生まれ、福岡県出身。ホリプロ所属。2006年『第31回ホリプロタレントスカウトキャラバン』グランプリ。近年の主な出演作は、ドラマ『ロストデイズ』(フジ系)、『学校のカイダン』(日テレ系)、大河ドラマ『花燃ゆ』(NHK総合)、『無痛〜診える眼〜』(フジ系)など。現在、『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』(NHK総合)レギュラー出演中。ドラマ『タチアオイの咲く頃に〜会津の結婚〜』(6月24日 金曜 18:58〜19:56 福島中央テレビ)主人公・高橋美緒役で出演。