撮影/加藤千絵(CAPS) 取材・文/永堀アツオ
泣ける青春ラブストーリーが待望の実写映画化。母の死をきっかけにピアノが弾けなくなってしまった、元天才ピアニスト・有馬公生が、天真爛漫なヴァイオリニスト・宮園かをりに出会い、ピアノと母の思い出に再び向き合う姿が描かれる本作。ヴァイオリン初挑戦、そして、明るく振舞う一方で、重い病を抱えているという難しい役どころに挑んだ広瀬すずに、作品への熱い想いを語ってもらった。
「私の中では“諦める”っていう考えがないんです。結局は、“戦う姿勢”と“努力”が大切なんだと思います」
――人気コミックの実写作品は、大ヒットした映画『ちはやふる』に続き、2作目になりますね。
「怖いなと思いました。アニメも含め、ファンの方が多い作品だし、私にとっては今までにない重い役でもあって。ヴァイオリンを弾くのも初めてだし、わからないことだらけで怖さと同時にワクワクも感じていて。かをりを演じることが決まってから原作を読み始めたんですけど、原作に引っ張られすぎてしまうなと思って、途中で読むのをやめました」
――そこからどうやって役作りをしていきました?
「原作や台本を読んで感じたのは、かをりが生きる上で、(山ア賢人が演じる)公生の存在がとても大きいものなんだなって感じたんです。だから、現場に行ってから、公生を演じる賢人くんからいろいろ吸い取ろうと思って。それ以外は、ヴァイオリンの練習以外、あまり考えなかったです」
――初めてのヴァイオリンはいかがでした?
「毎日、“しんど……”って思ってました(笑)。弦を押さえる左手と弓を弾く右手の動きを覚える作業が地道すぎて、“わー”って混乱してました。クランクインの半年前から練習を始めたんですけど、その後、2作品くらい撮っていたので触れない時期もあって。撮影の2週間前から集中的にやったんですけど、なかなか思うようにいかなくて。私は基本的にオン/オフの切り替えがバシッとできるタイプなんですけど、空き時間も、撮影が終わった後も、ヴァイオリンのレッスンがあったので、“ずん……”ってなっていました(笑)」
――そうだったんですね(笑)。では、現場に入ってみて、かをりはどんな女のコなんだと感じました?
「最初は、かをりの世界はものすごくカラフルで、公生がモノトーンという風に感じたんですけど、実は一緒なんだなって思いました。かをりも心情的には本当はモノトーンなんだけど、自分でどんどん色をつけていくコなんですね。彼女は17歳の女のコでは抱えきれないような問題を抱えていて。でも、だからこそ、公生や(中川大志演じる)渡くん、(石井杏奈演じる)椿ちゃんの3人の輪に入れた時は自然とテンションが上がっちゃうし、嬉しいことは素直にまっすぐに嬉しいと思える。でも、時間は待ってくれないから、どんなに楽しくても常に1つの結末に向かって毎日が進んでいってしまうことに苦しさも感じている。いろんな感情が入り乱れてるんですけど、常に、公生と音楽、自分の体のことだけを考えてるんだろうなって思いました。……でも、それは、試写を観てから気づいたことで」
――そうなんですか? 演じている時に意識してたわけじゃないと。
「考えてやるとできなくなっちゃうタイプなので、本当にその場で感じたかをりの気持ち、心の動きに任せていました。だから、公生と一緒に夜の学校に忍び込むシーンでは、本当は泣くはずじゃなかったのに、気持ちが溢れてしまったりして。あの1ヵ月は、かをりの気持ちになっていたと思います。私、試写を2回観たんですけど、かをりの嘘がわかってから見直すと、表情が全部違って見えて。そこで、“かをりってこういう子なんだな”って思ったんです」
――じゃあ、これから観る人も1回ではなく、何回も観たほうがいいですかね?
「3回観たら、また変わると思うんですけど……。うん、最低、2回は観て欲しいです!(笑)。 本当に違う作品のように感じると思うから」
――タイトルにもあるかをりの“嘘”を知ってから観ると、最初から切なくなりそうですよね。最初に『賢人くんからいろいろ吸い取る』とおっしゃってましたが、何を吸い取りました?
「賢人くんの声のトーンとか、ちょっと息がきれる感じとかが、公生が生きているって感じて。まばたきとかも意識して見るようにしていたので、かをりを通して、すごく愛おしく感じました。さっきも言った夜の学校のシーンでは、本当は自分の体のことをごまかして明るいそぶりを見せなきゃいけないのに、顔が見れなくなるくらいの気持ちになって。屋上で抱きついて泣いちゃうシーンでも、公生のお腹から温かみというか人間味を感じて、すごく恋しくなりました。いろんなものを受け取りながら、さらに苦しくなっていましたね」
――役者さんとしてはどんな印象を受けました?
「普段はすごく明るくて、なんか、中学生男子みたいなノリでした(笑)。(中川)大志くんと(石井)杏奈ちゃんと私は同じ年で、賢人くんが一人だけ4つ上だったんですけど、年齢差を全く感じなくて。みんなと同じテンションでワイワイしてくれていたので、すごく居心地が良かったです。でも、カメラの前に立つと、やっぱり公生のことを考えているんだなと思って。ピアノを弾きながら感情的になるシーンとか、結構、難しかったと思うんですけど、いい意味で、あの空間に酔った演技になっていて。ピアノを弾きながらどんどん手の力が強くなってくところも、指先からも公生の感情が伝わってくるなと思いましたし、すごく尊敬します。あと、空き時間も役に近いものを持っていてくれたので、かをりはこういう仕草を愛おしく思ったんだろうなって感じることもあって。役柄の距離とそんなに違わずに接してくれたので、そういう環境を作ってくれたことをありがたく思っています」
――4人で過ごす空き時間はどんな雰囲気だったんですか?
「本当に中学生みたいな会話しかしてなかったです(笑)。もう、箸が落ちただけで笑うくらい、楽しくて明るい控え室でしたね。撮休の日に、大志くんと賢人くんが大きいショッピングモールに行って、おもしろグッズを買ってきていて。ゴキブリのおもちゃとか、頭をマッサージする器具とかで、テンションマックスで遊んでいました。杏奈ちゃんは控えめなので、それをみて笑っているだけだったんですけど、私は一緒になって楽しんでました(笑)」
――映画の話に戻ると、かをりも公生も小さい頃から音楽を突き詰めてきた人ですよね。『ちはやふる』の千早もそうだと思いますが、夢中になれるものがあることをどう思います?
「すごく真っ直ぐで羨ましいなって思います。そこまで一途に思えるもの、自分が生きてきた年齢の中でずっとそれだけをやり続けてこれるものってなかなかないじゃないですか。それは憧れでもありますし、羨ましいなって思います」
――女優業に邁進している自分と重なる部分はない?
「全くないですね。私はずっとバスケをやってきて、この仕事は最初、断りきれなくて始めた感じなので。部活に1年間ほぼ行けなくなってしまったので、中3の誕生日に部活を辞めて。自分が思い立ったら、真逆に走りに行っちゃうタイプでもあるので……どうなんですかね。まだ先はあまり見えてないです」
――女優を一生続けていきたいという仕事に対する覚悟はない?
「もちろん、1つの作品ごとに自分が“こうしたい!”っていうのは強くあるんですよ。でも、理想が高いから、なかなか思った通りにいかないこともあって。もしかして、自分が満足いかなかったら、違うと思っちゃうかもしれない。それなら、他に何か興味があるものをゼロから始まるのも嫌いじゃないなって思っちゃいます。服を作ったり、デザインを考えるのも好きだし、(専属モデルを務めている)『Seventeen』でやりたいこともあるし……とか。でも、特に“コレ!”っていうのがあるわけじゃないですよ。あはははは」
――(笑)。それが、18歳の女性の未来に対する正直な気持ちですよね。
「バスケも8年やっていたので、女優業はまだ4年、バスケの半分しか経ってないから、まだわからないなと思います。実はバスケも最初は嫌々入ったんですよ。人数合わせで、気づいたら入れられていたんですけど、始めたら始めたで“負けたくない!”って思うようになって。中学生の時は、高校を卒業するまで絶対にバスケをやるって思っていたけど、本気でやっていたのに辞めて……。女優もまだ4年しか経ってないから、人生を考えるとまだまだあるなと思って。100歳まで生きるとして、まだ1/5も行ってないじゃんっていう考えなので、私は。だから、どうなんだろうって感じです」
――だからこそ、素直に彼らのことが羨ましいって感じるんですね。
「そうですね。それに、100歳まで生きるって考えているから、余計にかをりの心情を考えてより感情的になってしまったんだなって思います。でも、最近は、作品でもやりたいことができるようになっているし、今回のヴァイオリンにしても達成感は強く感じています」
――そうですね。モデルにしろ、女優にしろ、自分がやりたいと思ったことを着実に叶えているように見えています。最後に、そんなすずさんが考える、夢を叶えるために必要不可欠なことを教えてもらえますか。
「やっぱり自分がこうなりたいとかって想像することすごく大切だなと思います。しかも、それを周りに言うことで、よりやる気が入るというか。私は完璧主義者の負けず嫌いなので、周りに言うことで燃えちゃうんです。みんなに『無理だよ』って言われても、私は“見てろよ!”って思っちゃう(笑)。今、自分がこうして仕事をしていて、一番ブレずに役立っているものは、その、常に戦いに行くような姿勢でいることかなって思います」
――例えばどんな想像をしてきました?
「“自分はこうなるんだ”っていう理想の自分を目標地点に設定するんです。それがすごく大きいものだとしたら、そこに辿り着くための小さな目標をいくつも設定して。目の前の小さな目標を1つずつ達成していくと、最終的には大きな目標地点に辿り着く。辿り着いたら、今度はそのゴールをまたスタート地点にして、新しい目標地点にして進んでいくっていう。その繰り返しだと思います。私の中では“諦める”っていう考えがないので、そのためには何が必要で、何をすればいいのかを考えて、努力するっていうことが一番必要なことかなと思います。努力とか気持ちっていうと、根性論に聞こえなくはないですけど、結局は戦う姿勢と努力が大切なんだと思います」
広瀬すず(ひろせ・すず)●1998年6月19日生まれ、静岡県出身。フォスター・プラス所属。2012年に“ミスセブンティーン”に選ばれ、雑誌『Seventeen』専属モデルとして活動開始。13年にドラマ『幽かな彼女』(フジ系)で女優デビュー。その後、ドラマ『学校のカイダン』(日テレ系)で連続ドラマ初主演、映画『海街diary』、『バケモノの子』(声優出演)、数々のCMにも出演し、大ブレイクを果たす。今後の出演作に、映画『怒り』(9月17公開)、来春公開の映画『チア☆ダン 〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』(主演)が控える。
映画『四月は君の嘘』
9月10日(土)全国東宝系にてロードショー
9月10日(土)全国東宝系にてロードショー
(C) 2016フジテレビジョン 講談社 東宝
(C) 新川直司/講談社
累計発行部数500万部突破、フジテレビ深夜アニメ枠『ノイタミナ』でアニメ化され、話題を呼んだ新川直司による漫画『四月は君の嘘』が、広瀬すず×山ア賢人W主演で実写映画化。
完全無欠、正確無比、ヒューマンメトロノームと称された天才ピアニスト・有馬公生(山ア賢人)は、母の死を境にピアノが弾けなくなってしまう。高校2年生となった4月のある日、公生は幼馴染の澤部椿(石井杏奈)と渡亮太(中川大志)に誘われ、ヴァイオリニスト・宮園かをり(広瀬すず)と出会う。勝気で、自由奔放、まるで空に浮かぶ雲のように掴みどころのない性格のかをり。そんなかをりの自由で豊かで楽しげな演奏をきっかけに公生はピアノと“母との思い出”に再び向き合い始める。一方、かをりが抱える秘密にも大きな変化が訪れて……。彼女のついた嘘とはいったい―。
2016年秋、最も切ないラブストーリーが今、始まる。
公式サイト: http://kimiuso-movie.jp/
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