撮影/加藤千絵(CAPS)取材・文/若松正子 ヘアメイク/佐々木博美 スタイリング/中井綾子(C.コーポレーション)
“競技かるた”を描いた大ヒットマンガ『ちはやふる』が、広瀬すず主演で実写映画化! [上の句](3月19日公開)、[下の句](4月29日公開)の二部作連続公開となる本作で、主人公・千早(ちはや)を熱演している彼女に、公開直前の想いを語ってもらった。映画『四月は君の嘘』や映画『怒り』など、今後も注目作が目白押しの若手女優NO.1の彼女と、千早との意外な共通点とは!?
「私自身の負けず嫌いの性格が、(演じる)千早と連動して、競技シーンは本気でメラメラしていました(笑)」
――今作は超人気マンガ『ちはやふる』の初映画化作品。広瀬さんから見た主人公・千早の印象は?
「原作だと千早は“美人でスタイルがいい”という設定なんです。そこは私とは違うけど、“中身がオヤジ”というところに親近感を持ちました(笑)。マンガを実写化すると、どうしてもイメージのズレが出てきてしまうと思います。でも、千早のカルタに対する想いとか熱量とか、作品の根底にある、濃くて鮮やかな世界観さえブレなければ映画は別モノと考えてもいいのかなと。そういう意味では、“原作をリスペクトしつつ、それを越えるものを作らなくちゃいけないね”と、(小泉徳宏)監督と話していました」
――競技かるたについてはどう思いました?
「今までほとんど知らない世界でした。100枚すべての札に物語があるというところが、すごく面白いと思いました。千年も前のものなのに、そこで描かれている人間の心は変わっていないって、それこそ“和”な感じがします。そういった背景も含め、千早のように“クイーンになる(競技かるた最高峰の大会においての女性部門の勝者)”という壮大な夢を持って、競技かるたにのめり込むのもすごくわかる。私も撮影中とか、お芝居なのに(札を)取られると本気で悔しい!って思っちゃいましたから(笑)」
――“畳の上の格闘技”と言われるほど激しい競技かるたの練習は、真っ青な痣や水ぶくれができてかなり大変だったとか。撮影前にはスタッフさんから畳をもらって特訓したそうですね。
「ちょうどその頃、ドラマ『学校のカイダン』を撮っていたので、セリフを覚える合間に、畳にカルタを並べてパンパンやっていました。競技かるたって、どこでお辞儀をするかとか、構えるときに敵陣に頭が出ちゃいけないとか、ルールがすごく細かいんです。でも、競技自体はスピードが勝負で、体重の乗せ方や取り方で早さがまったく変わってくる。そういう細かい“型”をひとつひとつ体で覚えていかないと、千早のダイナミックなフォームは作れないので、転んだりするのは当たり前。痣とか水ぶくれも常にできていて、膝とか足の甲とか痛くてよくわかんなくなっていました(笑)。しかも、暑い時期に袴を履いて撮影していたので、立ち上がるとき膝と畳が離れる瞬間が特に痛いんです。“汗で蒸れているから早く立ちたい……でも痛い”みたいな感じで、毎回、葛藤でした(笑)」
――聞いているだけで痛そうだし、ツラそうです(笑)。
「でも、一緒に闘ってくれる太一役の(野村)周平くんとか、瑞沢(高校)のかるた部のみんながいたから、頑張れました。“あとちょっとだから頑張ろう!”ってお互いに声を掛け合っていると、足の痛みとかびっくりするぐらい感じない。むしろみんなで手を取り合ってやっていることが楽しかったです」
――映画で瑞沢チームは一丸となって闘いますが、現場でもリアルに仲が良かったんですね。
「実は瑞沢チームの5人は全員、AB型なんです。それを聞いた瞬間、みんなの殻が一気に破れて、最後は兄妹みたいにやりたい放題になっていたから、AB型で良かったって思いました(笑)。実際、映画の中でも仲の良い空気感がそのまま出ているシーンがいっぱいあって。例えば、初めて大会に出たときに負け続けて、帰ろうとするチームメイトの「机くん」(森永悠希)をみんなで押し上げて走るシーンとかは、ほとんどアドリブだったんです。『OK』の声が聞こえないぐらい本当にみんなでゲラゲラ笑っていたら、監督が『お前ら、今の芝居じゃねーな。でも良かった!』って言ってくれて。そういう“お芝居していないお芝居”というか。演技だけど嘘のないシーンを作るためには、共演者との距離感がいかに大切か。それをこの作品で教えてもらいました」
――では、劇中の笑顔はどれも本物?
「びっくりするぐらい本物です。リアルに笑っているときって実はみんな結構、ブサイクじゃないですか。特に私はキレイに笑うことができないんですけど、そんな顔もしっかり劇中で観られます(笑)。笑顔以外にかるたを取る場面でも“こんなひどい顔を全国的に見せて大丈夫なの?”って表情もあって、しかも、そのシーンがスローモーションになっていたりするんです。それはそれで“千早だからいいか”って思っています。競技のシーンは過呼吸気味になるぐらい真剣というか。撮影関係なく“負けたくない!”って思ったら自然に気持ちがカーッとなって、そのままの表情が出ちゃったんです。だから正直、今回は撮影中に自分がどんなお芝居をしていたのかあまり記憶がないんです。出来上がったものを観て“私、こんな顔をしてたんだ!?”って、初めて知ったシーンも多いんですよ」
――それぐらい役に入り込んでいたと。
「そうですね。今回は役がストンと自分に落ちてくる感覚があって、千早を愛してあげればあげるほどその魅力をより出せるというか。自分自身が役を愛しいと思うことが一番、気持よく演じられる方法なんだなって、現場を通して発見できました。あとは私自身の負けず嫌いの性格が千早と連動していたのも良かったんだと思います。競技シーンは女優としてどうなの?というぐらい、本気でメラメラしていましたから(笑)」
――普段もそんなに負けず嫌いなんですか?
「誰かに対してではなく、自分に対して負けたくないと思っちゃうんです。特に今、私が一番、熱くなっているのはお芝居なので、うまくできない自分がすごく悔しい。自分の演技に対して自分で厳しく突っ込むし、どうしたらもっと成長できるんだろうっていつも考えています」
――かなりストイックですね。
「でも、うまくできなくても落ち込むタイプではなくて、壁があればそのまま突っ込んでいく。常に戦闘態勢なんです(笑)」
――まさに千早(笑)。ちなみに劇中では札を取れない千早が、かるたを好きになったときのことを思い出して、自分を取り戻すという場面がありましたが。広瀬さんがお芝居を最初に“好き”と思った瞬間はいつですか?
「実は私、“お芝居が楽しい”と思えるようになったのは最近なんです。最初は正直、お仕事があまり好きじゃなくて……というか、むしろ嫌いでした(笑)。ただ、初めてやらせてもらったドラマが学園モノで、そのときは共演者のみんなとすごく仲が良かったから、撮影自体はすごく楽しかったんです」
――みんなといる現場が好きだったんですね。
「その頃はそうでした。でも、去年の夏、撮影のシーン以外はまったく笑わないという映画の現場があって。今思い返すと、そこで初めてお芝居の楽しさに目覚めた気がします。そのときに演技の難しさというか、現実を顔に塗られた感じがして、さらにその後にバイオリンを弾くっていう自分とは全然違う役を演じることになって……」
――難しい役が続いたと。
「そうなんです。それで、“どうやったらこんなにも自分と違う人格を演じられるんだろう?”と、すごく考え続けたんですね。そしたら、だんだん考えることが楽しくなってきて。例えば、すごく重くてシリアスなシーンとかも、実際に私はそんなツライ経験をしたことがないから自分を落とすしかないなと。とりあえず自分に向かって、徹底的に罵倒したんです」
――激しいですね(笑)。
「それぐらいやらないと、ドン底に落ちる感覚ってなかなか掴めないと思うので。でも、そうやって自分自身で自分を落としたり上げたりする経験をしたことがなかったから、すごく新鮮だったし面白かった。そこからもっともっと冒険したい、未知の感覚を味わいたいと思うようになったんです」
――“役作り”の楽しさを知ったんですね。
「これが役作りって呼べるものなのかはわからないけど、そうかもしれないです」
――そんな今の広瀬さんにとって、お仕事する上で絶対に譲れないことやポリシーはあります?
「やっぱり自分と闘う精神。私は自分に負けるのが一番、弱いことだと思っているですが、それは昔、ある人から『自分に勝てないの?』と言われたからなんです。そのときすごく悔しくて、どれだけツラくても自分が“ダメだ”って思ったら、そこで終わりだなと。そうならないためには立ち向かうことが重要だなと思ったんです」
――めちゃめちゃ男前じゃないですか。
「いやいや、負けず嫌い過ぎて面倒くさ人間なんです(笑)。でも常に覚悟はあるかもしれないです。『いいか?』って言われたら、『いいですよ、どうなっても大丈夫です』って言っちゃうし、言える自分でいたいんですよね」
――ますます男前(笑)。くじけそうになることはないんですか?
「もちろん、あります。そういうときは逆に楽しめることを見つける。楽しいって感じた瞬間の気持ちを大事にとっておくようにします。あとは食べること。私はごはんを食べれば“よし!”ってリセットされちゃうので、何があってもまずは食べる。すべての支えは“食”ですね(笑)」
広瀬すず(ひろせ・すず)●1998年6月19日生まれ、静岡県出身。フォスター・プラス所属。2012年に“ミスセブンティーン”に選ばれ、雑誌『Seventeen』専属モデルとして活動開始。13年にドラマ『幽かな彼女』(フジ系)で女優デビュー。その後、ドラマ『学校のカイダン』(日テレ系)で連続ドラマ初主演、映画『海街diary』、『バケモノの子』(声優出演)、数々のCMにも出演し、大ブレイクを果たす。今後の出演作に、映画『四月は君の嘘』(2016年9月10日公開)、映画『怒り』(2016年9月公開)などが控える。また、広瀬すずPHOTO BOOK 『17才のすずぼん。』が3月19日に発売される。
映画『ちはやふる』
3月19日(土)[上の句]、4月29日(金・祝)[下の句]二部作連続公開
3月19日(土)[上の句]、4月29日(金・祝)[下の句]二部作連続公開
“競技かるた”に情熱を懸ける高校生たちの友情・恋愛・成長を、瑞々しくも熱い青春模様として描いた、大ヒットマンガ『ちはやふる』が待望の実写映画化。
綾瀬千早(広瀬すず)、真島太一(野村周平)、綿谷新(真剣佑)の幼馴染の3人は、新に教わった“競技かるた”でいつも一緒に遊んでいた。そして千早は新の“競技かるた”に懸ける情熱に、夢を持つということを教えてもらった。そんな矢先、家の事情で新が故郷へ戻り、はなればなれになってしまう。
高校生になった千早は、新に会いたい一心で“競技かるた部”創設を決意、高校で再会した太一とともに、部員集めに奔走する。呉服屋の娘で古典大好き少女・大江奏(上白石萌音)、小学生時代に千早たちと対戦したことのある、競技かるた経験者で「肉まんくん」こと、西田優征(矢本悠馬)、太一に次いで学年2位の秀才「机くん」こと、駒野勉(森永悠希)を必死に勧誘、なんとか5名の部員を集め、創部に成功。初心者もいる弱小チームながら、全国大会を目指して練習に励み、東京都予選に臨む。
千早の新への気持ちを知りながらも、かるた部創部を応援し、部長となった太一。彼もまた、新に勝たなければ前に進む事が出来ない。「千早に自分の気持ちを伝えたい」――。
千早、太一、新、そして瑞沢高校かるた部の、まぶしいほどに一途な想いと情熱が交錯する、熱い夏が来る。
(C) 2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C) 末次由紀/講談社
綾瀬千早(広瀬すず)、真島太一(野村周平)、綿谷新(真剣佑)の幼馴染の3人は、新に教わった“競技かるた”でいつも一緒に遊んでいた。そして千早は新の“競技かるた”に懸ける情熱に、夢を持つということを教えてもらった。そんな矢先、家の事情で新が故郷へ戻り、はなればなれになってしまう。
高校生になった千早は、新に会いたい一心で“競技かるた部”創設を決意、高校で再会した太一とともに、部員集めに奔走する。呉服屋の娘で古典大好き少女・大江奏(上白石萌音)、小学生時代に千早たちと対戦したことのある、競技かるた経験者で「肉まんくん」こと、西田優征(矢本悠馬)、太一に次いで学年2位の秀才「机くん」こと、駒野勉(森永悠希)を必死に勧誘、なんとか5名の部員を集め、創部に成功。初心者もいる弱小チームながら、全国大会を目指して練習に励み、東京都予選に臨む。
千早の新への気持ちを知りながらも、かるた部創部を応援し、部長となった太一。彼もまた、新に勝たなければ前に進む事が出来ない。「千早に自分の気持ちを伝えたい」――。
千早、太一、新、そして瑞沢高校かるた部の、まぶしいほどに一途な想いと情熱が交錯する、熱い夏が来る。
(C) 2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C) 末次由紀/講談社