撮影/草刈雅之 取材・文/斉藤貴志
AKB48卒業後、女優として着実にキャリアを重ねている秋元才加。ドラマ『牙狼<GARO>‐魔戒ノ花−』で演じた媚空を主人公にした、シリーズ10周年記念作品劇場版『媚空−ビクウ−』が公開される。鍛え上げた肉体でアクションを存分に見せている彼女の、作品にかける想いを聞いた。
「ここまで猛プッシュされたことがなかったので、嬉しさと同時に戸惑いが襲ってきました」
――闇に堕ちた魔戒騎士や魔戒法師を斬る“闇斬師”媚空を演じるうえで、特に力を入れたのはどんなことですか?
「アクションですね。媚空に関しては“動”より“静”の動きを重視しています。合気道を習っていたとき、師範に『達人は重心を動かさずに歩く』と言われたのが記憶に残っていて。激しいアクションよりも、歩き方、お辞儀、魔導筆(魔戒法師が使う特殊な筆)を止める……という細かな部分まで意識して撮影に臨みました。激しい動きから止まる、立つ、歩く……というアクションはけっこう難しいんです」
――立ち回りも徒手だったり、武器の魔導筆を使ったり、いろいろなパターンがありました。
「アクションシーンは毎日与えられた試練に挑んでいく感じで、体力的に大変なことはありませんでした。物語終盤で羽交い絞めされたところから、腹筋を使って跳ね起きて裏拳でやるところは、飛んでいるみたいに見えて自分でもカッコイイと思います。ただ、撮影が12月から1月だったので、寒くて寒くて(苦笑)。私は寒いのが苦手だから、それが辛かったです。もともと役柄的にニコニコしている役ではないですけど、寒くて素でイライラしているときもありました(笑)」
――本当に全然笑わない役ですが、現場で撮影の合間はどうしていたんですか?
「ずっとヘラヘラしていました(笑)。佐野(史郎)さんがカメラをお好きみたいで、佐野さんと写真のことをお話したり。三島由紀夫さんの本を読んでいたら、ミッキー(・カーチス)さんに『昔、食事をしていたら、隣りのテーブルにいたのが三島由紀夫だった』という話を聞いたりもしました」
――オンオフは自然に切り替えられた感じだったんですね。
「ずっと媚空でいたら疲れますから(笑)。常に姿勢を良くしてないといけないので」
――秋元さん自身のなかに、媚空と似ている部分はどこかありますか?
「媚空は与えられた役目を全うしますよね。そのために強くなろうと努力するし、私情は入れない。そこは自分と似ている気がします。私も仕事で与えられた役目は必死にやって、終わったら、みなさんとご飯行ったりぜず、わりとすぐ帰っちゃうので(笑)。ただドラマのとき、媚空は自分の役目として闇に堕ちた弟を斬りましたけど、私はそこまでは突き詰められないかな。あと私なら、服の胸のところにああいう飾りは付けません(笑)」
――映画での媚空は、精神世界での戦いで、露出が多くて少し可愛らしい白の衣裳にもなりますね。
「最初はビックリしました。媚空が来ている通常の黒の衣装に対する白で、たぶん闇と光を表そうとしているのかなと。もっとシャープな感じになるかと思ったら、衣裳合わせで“女性らしさを出そう”と、ああなったみたいです。もともとは雨宮(慶太)監督が『秋元才加の肉体を撮りたい』とおっしゃっていたというのは聞きました」
――確かに露出の多い衣裳で。映画で披露するために体を鍛え直したりもしたんですか?
「鍛えました! やるなら男の人にも『えっ!?』と言われるくらい、筋肉を付けようと思って。撮影の2ヵ月前から週3でトレーナーさんについてもらいジムに通って肩、背中、腹筋とを鍛えました。それから撮影中もプロテインを飲んで、体を作ることに集中しました」
――以前から鍛えてはいたんでしたっけ?
「25歳を越えてからはしなやかな体にしようと思って、筋肉はなるべく付かないようなトレーニングをしていたんです。ピラティスや体幹トレーニング、お尻とかパーツ別に特化していたんですけど、もともと筋肉質で、始めたらどんどん筋肉が付いてしまって。久しぶりにお会いした方に『めちゃくちゃ(体が)大きくなったね』と言われて傷つくという(笑)」
――媚空は、『闇斬師になりたい』という代知(須賀健太)を『関わるな』と拒んで、『あいつは純粋すぎる』と言ってたりしますが、彼女の心の奥底にあるものを考えたりもしましたか?
「闇斬師になる覚悟や辛さをわかっているだけに、中途半端な気持ちでは引き受けられない。引き受けるなら最後まで面倒を見る。ということで、突き放していたと思うんです。そういう点では冷たそうに見えても、いろいろな葛藤を味わってきた分、すごく根は優しいし、弱い部分も持ち合わせていると思います」
――あれだけ強そうに見えても。
「日常でも、無愛想な人だなと思っていた人が、仲良くなるとめちゃくちゃ優しかったり、優しい感じで近づいてきた人が“土壇場で手のひらを返す!?”みたいなことはあるじゃないですか。そういう意味で、媚空は実は熱いものを持っている人なのかなと。私の中では武士とか、“漢(おとこ)”というイメージがあります」
――秋元さんも第一印象的には……。
「『冷たそう』とか言われます。20代前半のときは(AKB48チームKで)キャプテンをやったりしていたので、“きちんとしてなきゃ!”という意識が強すぎて。10代の子とかに会うと『怖い』とよく言われていました。最近は直ってきましたけど」
――もともと『牙狼』のTVシリーズのゲストとして演じていた役で、主人公として映画化されると聞いたときはどう思ったんですか?
「ビックリですよね。すごくありがたいことですけど、ここまで猛プッシュされたことは今までなかったので、嬉しさと同時に戸惑いが襲ってきました。ソワソワするというか。自分がそう思うということは、10周年の『牙狼』を観てきて同じように思う方もいるでしょうし、期待値も高くなる。成長した自分を見せなきゃいけないと、決意しました」
――エンディングで流れる主題歌『繊月〜光と闇の傍で〜』も歌っています。
「本当にこんな好待遇ないですよ! この映画では秋元才加がギューッと詰まっています。監督さんや多くのスタッフさん、素晴らしい出演者さんの中でここまでやらせていただいて。作品が出来上がって、たくさんの人に観ていただくためにどうするか?というのもあるので、ドキドキしています」
――でも、自信作になったのでは?
「まず今、特撮映画でCGにこれだけ制作費をかけて作ることって、なかなかないだろうなと。撮影中も薄々感じていましたけど、完成したのを観て、スタッフの方々の力の入れ具合、10周年記念作品に対する期待が改めてわかって、怖くなりました。でも、その世界に自分が居られることに感動もしました」
――これまで『牙狼』を観ていなかった人も楽しめそうですね。
「十分楽しめると思います。アクションやCGにも注目してもらいたいし、『白か黒か。人間の心はそんなに単純じゃない』という台詞もあって。世の中にもいろいろグレーゾーンがあるなかで、自分で選んで生きていく。“本当の強さとは、優しさとは何なのか?”映画を観て感じたことを日常生活に持ち帰って、考えてもらえたらと思います」
秋元才加
あきもと・さやか●1988年7月26日生まれ、千葉県出身。フレイヴ エンターテインメント所属。AKB48卒業後、女優として、映画『奴隷区 僕と23人の奴隷』(主演)、映画『マンゴーと赤い車椅子』(主演)、舞台『国民の映画』など、数多くの作品に出演。現在公開中の映画『ギャラクシー街道』、放送中のドラマ『別れたら好きな人』(フジ系)に出演中。
あきもと・さやか●1988年7月26日生まれ、千葉県出身。フレイヴ エンターテインメント所属。AKB48卒業後、女優として、映画『奴隷区 僕と23人の奴隷』(主演)、映画『マンゴーと赤い車椅子』(主演)、舞台『国民の映画』など、数多くの作品に出演。現在公開中の映画『ギャラクシー街道』、放送中のドラマ『別れたら好きな人』(フジ系)に出演中。
劇場版『媚空-ビクウ-』
11月14日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
11月14日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
10周年を迎えた、雨宮慶太による『牙狼』シリーズ最新作。2014年10月より放送された『牙狼−魔戒ノ花−』第18話「紅蓮」にゲストとして登場した新キャラクター・魔戒法師の媚空を主人公に、新たな世界観と物語を描く。
外伝でもスピンオフでもなく、新たなヒロインを軸に構築された世界観となっており、入心の術をはじめとする斬新な映像表現や秋元才加の肉体美と身体能力を存分に活かしたアクションシーン、推理や謎解きを絡めたミステリアスな物語の展開など、これまでにない魅力に満ちた意欲作。
闇斬師。それは闇に堕ちた魔戒騎士や魔戒法師を斬るもの。その素性は誰にも知られず、恐れられていた。孤高の闇斬、女魔戒法師・媚空。彼女が抱える、悲しき性とは――。