幕末の激動の時代を生き、翻弄された「彰義隊」の若く儚い一生涯 - 柳楽優弥×瀬戸康史 | Deview-デビュー
柳楽優弥×瀬戸康史

撮影/草刈雅之 取材・文/長島恭子 ヘアメイク/【柳楽】内田香織(Otie)、【瀬戸】須賀元子(星野事務所) スタリング/【柳楽】広沢健太郎、【瀬戸】小林洋治郎(Yolken)

柳楽優弥と瀬戸康史がW主演を務める映画『合葬』がついに9月26日に公開! 「新撰組」や「白虎隊」に比べ、あまり知られてこなかった「彰義隊」。鳥羽・伏見の戦い後、将軍の警護と江戸市中の治安維持を目的として有志により結成された彼らの数奇な運命を描く本作。幕末の時代に翻弄された若者たちを演じる2人に作品への想いを語ってもらった。
「柳楽くんは可愛くて、僕、大好きなんです。実はボケマシーン(笑)。面白いことも大好きだしね」(瀬戸)
柳楽優弥×瀬戸康史
――『合葬』は、杉浦日向子さんのマンガが原作となっている映画ですが、撮影に入る前、原作は読まれましたか?
瀬戸康史「はい、読みました。時代劇は“志”や“想い”がハッキリしている人をフィーチャーした作品が多いのですが、“彰義隊”の歴史上は名もなき隊士を描いたストーリーがすごく新鮮でした。それから、登場人物を間近で見てきたかのようなリアリティも魅力的で。この時代を生きていたんじゃないかとさえ思わせる、原作者の杉浦日向子さんはすごいです」
柳楽優弥「僕も原作を読んで臨みましたが、台詞一つとっても、リアリティと説得力のある作品だと感じました。僕は今まで、時代劇はどこかリアルから離れたところにあるというか、やっぱり現代劇とは違う“大げさ”なイメージを抱いていたんです。でも『合葬』には、リアルと本の世界にそれほど大きな隔たりを感じなかった。それはやっぱり、原作にある真実味や、青春や恋愛を描かれたことで、今を生きる僕らにも通じる部分が多くあったからだと思います」
柳楽優弥
柳楽優弥
――彰義隊についてはご存じでしたか?
柳楽「僕は今回、初めて知りましたが、そのおかげで作品の世界やキャラクターに、スッと入っていけた気がします。観る人も個々が持つイメージが強い新撰組や白虎隊と比べると、観やすいんじゃないかなと思います」
瀬戸「僕は知っていました。NHKの大河ドラマ『花燃ゆ』で、佐幕の彰義隊とはまた逆の立場にいる攘夷派の人物を演じていたんです。だから何となく存在は知っていました」
――今作では、逆の立場の役を演じられるわけですが、複雑でしたか?
瀬戸「そうですね。それに、何か、ちょっと運命的な感じもします。幕末に“日本を変えよう”と動いていた人たちは、それぞれが信念を抱き、それが正義だと思って戦っていたこと、日本を変えようと思っていた若者たちが、こんなにもたくさんいたんだということを改めて知りました。自分も“もう少ししっかりしなきゃいけないな”と考え方を見直すきっかけにもなりました」
柳楽「当時の若者たちが、国というか将軍のために動いたということは、無関心に生きていないということがイイですよね。そうやって真剣に考えて生きていたことが、とても大切だと思う」
瀬戸「そうだね。幕末も吉田松陰をはじめ、最前線で体を張ったり、真剣に考えていたりした人たちが、争いを繰り返すなかでたくさん死んでいる。だからこそ生き残った人たちにも、課せられた運命というか役割もあるというか。この映画を観ると、単純に“彰義隊の運命は悲劇でした”で終わるのはなく、生き残る人間に希望も感じられるんです」
柳楽「そこがこの原作のすごいところですよね。いかにもな“悲劇”ではなく、青年たちの儚い数ヵ月の話をサラリと描く。けれど、実は一度観ただけではすべてを把握しきれないほど深い」
柳楽優弥
――キャラクターについての印象は?
瀬戸「僕が演じる吉森柾之助は彰義隊の一人ですが、何だかフワフワした奴で、幕末にいること自体、すごく異質に感じました。逆に、現代っぽいというか、僕らにいちばん近い考え方を持つ人かなと思います。柳楽くんが演じる秋津 極は、柾之助と真逆で熱い意志を持つ男。柳楽くんと極は元々の性質に共通するものがあると思うし、“あの極がマンガの中から出てきた!”という感じたほどです。もちろん、撮影で一緒にいたのは約1ヵ月なので、柳楽くんのすべてを知っているわけではないですが(笑)」
柳楽「でも濃密な1ヵ月でしたよね(笑)。オダギリジョーさんやスタッフの方たちとよく一緒にご飯も食べに行って……何かもう、楽しかったなぁ」
瀬戸「そうだね!(笑)。とにかく、柳楽くんは極にピッタリで、“オレ、大丈夫?”っていつも不安でした」
柳楽「それを言ったら、悌二郎(岡山天音)とオレも『オレたち、今日、大丈夫だったのかな』って毎日言い合っていましたよ(笑)。自分なりにちゃんと役に向き合ってはいるんだけど、やっぱり、自分ではいいのか悪いのかわからないじゃないですか。特にこの作品は、原作も脚本も素晴らしいから、“足を引っ張りたくないな”って常に思っていたし、いい作品に関わる怖さも感じた。なのに、瀬戸さんはいつも冷静に見えて、“この余裕さは何なんだ!”と思っていたんです。それである日、瀬戸さんに『極を演じていてすごく不安なんですけど……』と聞いたら、『オレもだよ!』って返事がかえってきて。そのとき、すごく安心したんですよ。“ああ、瀬戸さんもそうなのか、同じ人間なんだな!”って」
瀬戸康史
瀬戸「そりゃそうでしょ!(笑)」
柳楽「でも、すごく安心したんですよ! 瀬戸さんって、何か相談したくなる人なんです。現場でも瀬戸さんがいると、3人(柳楽さん、岡山さん)がまとまるというか、落ち着くし、僕がボケたり好き勝手言ったりしても、ちゃんとまとめてくれる。なんだろう……大人力?があると思います」
瀬戸「え、大人力って(笑)」
――そんな風に頼られていたと知ってどんな気持ち?
瀬戸「いや、すごく嬉しいです。本当に柳楽くんは可愛くて、僕、大好きなんですよ。一見すると彼はボケそうな要素を一切、感じさせないでしょ? でも、その実、ボケマシーン(笑)。面白いことも大好きだしね」
柳楽「うん、大好き(笑)。『合葬』の現場ではみんな、撮影中とその前後の、緊張感とリラックスした雰囲気の切り替えが見事でしたよね」
瀬戸「確かに。特に時代劇の現場はスムーズかもね。衣装着て、かつらをつけて……、段々、身なりが整っていく間に、徐々にエンジンがかかるんです」
瀬戸康史
瀬戸康史
――時代劇に馴染みが薄い、『Deview/デビュー』世代の若者たちにこそ、この映画をオススメしたいポイントは?
瀬戸「時代や年代こそ違うけれど、変わらないものってあるんだなと共感できるところです。例えば自分の居場所や恋やいろんなことに悩んで、迷って、定まらない人っていると思います。もちろん、その渦中にいるときはすごくつらいんだけど、この作品を観ると、人は迷ってもいいし、迷ったり立ち止まったりする時間もすごく大切なんだなと感じます。それから僕は本当に、柾之助、極、悌二郎という、育った環境も性格も違う三人が愛おしくて。演じていても、彼らをずっと見ていたいなという気持ちになりました」
柳楽「青春を描いた現代劇はたくさんあるけれど、『合葬』も単なるチャンバラ劇ではなく、青春群像劇なんです。しかも、幕末という時代だからこそ出せた良さや色気もある。やっぱり死が身近にある分、確実に今よりも毎日を真剣に生きようという気持ちが出るからかな。刀を腰に差しているのが普通の世界だから」
瀬戸「日常生活に緊迫感があるから、人の本心みたいなものが出やすいのかもね。あと、『合葬』というタイトルもいいよね。耳慣れなくてハッとさせられる」
柳楽「しかも、漢字のタイトルに、あえてローマ字で読み方を添えたタイトルデザインもめっちゃお洒落。時代劇だけど、音楽はアーティスティックな一面があるし、色々な面で、ギャップがあって、クリエイティブな作品だと思う。とにかく、一場面一場面に深みがあり、何回観ても新たに気づきがあるんです。ぜひ、たくさんの人たちに見てもらいたいです」
柳楽優弥×瀬戸康史
――では最後に、役者としての醍醐味を感じる瞬間を教えてください。
瀬戸「僕は、もちろん演じているときもですが、作品に関わっている仲間と飯を食べているときです。いろいろな話しをするなかで、一つの作品を作りあげるために、みんなが真剣に向き合っていること感じた瞬間、役者になってよかったと感じます」
柳楽「あ、オレも! 常に台詞を覚えたり、役作りの不安が常にあったりするけれど、料理したり、食べたりしている間って、そういう気持ちを忘れられるじゃないですか。何か、そういうとき、安心しますよね」
Profile
柳楽優弥
やぎら・ゆうや●1990年3月26日生まれ、東京都出身。スターダストプロモーション所属。舞台『NINAGAWAマクベス』(10月3日までBunkamuraシアターコクーンにて上演)に出演中。映画『ピンクとグレー』(2016年1月9日公開)に出演。2016年初夏に公開予定の映画『ディストラクション・ベイビーズ』で主演を務める。

瀬戸康史
せと・こうじ●1988年5月18日生まれ、福岡県出身。ワタナベエンターテインメント所属。今年で俳優デビュー10年目。10月22日より上演される舞台、Dステ17th『夕陽伝』で主演を務める。
映画『合葬』
9月26日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
『合葬』
『合葬』
(C)2015 杉浦日向子・MS・HS/「合葬」製作委員会
鳥羽・伏見の戦いの後、将軍の警護と江戸市中の治安維持を目的として有志により結成された「彰義隊」。当初は高い志を持って結成され、江戸の民衆からも慕われた彰義隊だったが、幕府解体とともに、将軍慶喜が水戸に追放されると、隊は強硬派と穏健派に分裂、義憤にかられた強硬派は次第に反政府的な武力集団へと変貌してゆく。彰義隊には多くの市民、ことに普通の若者たちも参加していた。『合葬』は、自らの意思で彰義隊に入隊した青年・極(柳楽優弥)と、養子先から追い出され行くあてもなく赴くままに入隊した柾之助(瀬戸康史)、彰義隊の存在に異を唱えながらもそこに加わらざるをえなかった悌二郎(岡山天音)の、時代に翻弄された数奇な運命を描く。
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