撮影/厚地健太郎 取材・文/斉藤貴志
乃木坂46のメンバーたちの輝きの裏の素顔に迫った『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』が、7月10日より全国公開される。福神の常連から『デ☆ビュー』読者だった生田絵梨花が語ってくれた。乃木坂46の清楚な美少女イメージの象徴で完璧に見える彼女にも、知られざる葛藤が…。
「『ミュージカル女優』は私の昔からの一番大きな夢。乃木坂46で経験していることが将来活きて来ると思います
」
――自分たちのドキュメンタリー映画を観て、特に胸に来たのはどの辺ですか?
「デビュー曲の『ぐるぐるカーテン』を(AKB48リクエストアワーで)初披露したときの映像には、自然と涙がこみ上げました。あとはオーディションのときですね」
――生田さんは当時から、中学生なりに洗練されて見えましたが。
「何か恥ずかしかったです。“ここは学校?”って感じのしゃべり方で。私、自分で言うのも変かもしれませんが、本当に真面目だったので。通っていた学校は、朝会で全校の前でしゃべるんです、私はそれが普通だと思っていたんです。でも他のメンバーを見たら、そうじゃなかった。あんなにハキハキしゃべらなくても良かったな……って(笑)」
――生駒里奈さん、白石麻衣さん、西野七瀬さん……と学校に馴染めず「変わりたい」とオーディションを受けた過去を振り返るメンバーが目立ちましたが、たぶん生田さんは学校は学校で充実していたんですよね?
「まあ、普通でした。特に目立たず、自己主張もせず、当たりさわりのないグループにいて。私は“変わりたい”というよりミュージカルがやりたくて、アイドルも歌って踊ることは同じと思って受けたので」
――コンプレックスもなかったんですか?
「学校で先生たちに、“この子は真面目でしっかりしていて”みたいなイメージがどうしても先行しちゃうんです。少しでもふざけたり失敗すると“どうしたの?”って他の人以上に言われる。そこは“どうしてかな……”という思いを抱えていたところはあります。真面目だけではない部分もあったんですけど、なかなか出せませんでした」
――乃木坂46に入って変わった面もありました?
「あります。お仕事や握手会で、今までの100倍ぐらいの人とコミュニケーションを取るようになって。もともと私は初対面の人にあまり心を開かず、かしこまっていたんです。それがこういう環境にいるお陰でフレンドリーになれて、すぐに自分を出せるようになりました。それは大きくて、歌の表現力にも繋がって、一番成長した部分だと思います」
――嬉しいでも悔しいでも、乃木坂46にいて感情が大きく波打った経験もあります?
「一番はプリンシパル公演かな。舞台は好きですけど、あのシステム(自己PRの観客投票から出演者と配役が決定)は精神的にキツくて。その分、自己PRの工夫を絞り出して、夜な夜なやったことのないモノマネを練習したり(笑)、修行にはなりました」
――負けず嫌いな自分が出たと?
「昔から負けず嫌いではあったんです。ただ、ゲームとかで負けると、そのゲームをやめていました。負けるくらいなら“やらない”と諦めて。乃木坂46に入ってから、諦めずに最後までやるようになったのも、変わったところです」
――他のメンバーから刺激を受けたことも?
「みんな、どうしたら自分が良く見えるか、表現力がすごくて。私は無頓着なところがあって、普段の生活もダサいし、髪もボサボサで化粧もしない。だから見せ方のセンスはみんなから学んでいます。オーディションのときから気になっていたのが、かずみん(高山一実)。当時から“ここで一句読みます”とか、人が普通やらないことをしていたり。アドレス交換したら、メモ欄に“昭和キャラです”と書いてあって、“もうキャラを決めているんだ!”って思いました」
――ドイツ生まれの生田さんと好対照と言われる、秋田生まれの生駒さんはどうでした?
「生駒ちゃんは、活動が始まってから一番グングン伸びて、どんどんキラキラしていきました。あと、すごいフォトジェニック。写真に撮られると別人に見えるような技をいっぱい持っていて、あんな人に出会ったことはありません」
――当初からセンターの生駒さんの隣りのポジションにいて、ライバル意識はありませんでしたか?
「うーん……。ライバルというより、お互いにないところをツッコミ合いながらやってきた感じがします。私は意外と常識がなくて、生駒ちゃんが“それダメだよ”と教えてくれたり。今や私より生駒ちゃんのほうが、東京のことも知っています。原宿とか詳しいです。私は行動範囲が狭いから、逆に教わっています」
――グループ内の自分の存在意義とかは考えますか?
「あまり意識していませんけど、ファンの方から“いくちゃんは乃木坂46のイメージそのものだね”と言っていただいています。それなら、私は自分のできることをブレずにやっていけたら」
――ある意味、学校で優等生に見られていたのと、同じ構図かもしれませんが。
「ファンの方にも最初はそう思われますけど、今はそうでない部分も冠番組ではいっぱい出しているし。そこも含めて好きだと言っていただけるので、両方のイメージを大事にしていきたいです」
――さっきの「歌って踊るのはミュージカルと同じ」という話は映画でも出ていました。逆に「歌って踊る」以外のアイドルの部分にはすぐ馴染めました?
「最初に戸惑ったのは、ミュージカルは自分と別人になって舞台に出ますよね。でも、アイドルは自分自身を出して、自分の言葉で伝えないといけない。そう思っていても、どうしても『定型文』で言ってしまったり、くだけた言い方で伝えられない。それは今でも悩みますね」
――アイドルならではのやり甲斐は、どんなところに感じますか?
「アイドルって本当に何でもやるんです。コントとか、滝行とか、ドリアンアイスを食べるとか。“こんなはずじゃなかった!”ということもあります(笑)。でも、それは全部アイドルでなかったら経験できなかったし、経験する前と後では視野が変わりました。だから、いろいろなジャンルを経験できることが一番の良さかな」
――着ぐるみも抵抗ないと。
「あったりもしますけど(笑)、結局は、やっちゃうんですよね。やれば、それなりに得るものはあります」
――この映画では、メンバーのお母さんたちの言葉がナレーションに使われていました。生田さんには、「妥協しない性格で自分を追い詰めていた」とか。
「私は普段、お母さんに誉められないんです。注意されてばかり。だから、ナレーションで“頑張っていた”みたいに流れて、“ああ、わかっていてくれたんだ……”とウルッときました。なかなか聞けない言葉なので」
――特に、音楽学校や進学との両立に頑張っていたことがクローズアップされていて。今も毎日何時間かはピアノを弾いているんですか?
「そうですね。それはずっと続けています」
――出席日数に厳しい音楽学校で、徹夜明けでも登校していた……との話もあって。
「そういうことはよくありました。仕事から帰って、1時間とか30分仮眠して、栄養ドリンクを飲んで学校に行く。友だちが私の好きなチョコを買ってきてくれたりして、それで元気をもらって何とか凌いでいました」
――でも、やっぱり授業中は眠くなりますよね?
「なりました。けど、絶対に机に突っ伏さないように努力しています。突っ伏しちゃうと、完全に“私は寝ています。やる気ないです”みたいに見えるじゃないですか。眠くなっても、頑張って背筋を伸ばして座っていれば、誠意は見せられる。それで、ちゃんと姿勢を正したまま、ちょっと寝る(笑)、という感じでした」
――好きでやっていることとはいえ、体がキツイと感じたことも?
「ありましたけど、中3で乃木坂46に入って、ちょうど1stシングルの制作をしながら高校受験したんです。そのときが一番キツくて、でも、高校には合格できました。それがあったから、今は“何があっても大丈夫”と思えます」
――デビュー読者でも夢を追いつつ受験もあって……という人は多いと思いますが、ハードスケジュールのなかで生田さんは何が支えになったんでしょう?
「自分の性格的に、やらないと気が済まないので。その意地が一番強かったと思います」
――“学業に専念”という理由でグループを卒業するアイドルもいます。1コに絞る選択肢はありませんでした?
「大学進学の準備のために休業したときは、その辺のことですごく迷いました。でも、ライブや握手会でファンの人と直に接して声を聞くと“応援してくれる人がこんなにいるなら頑張ろう!”と思わせてもらう感じです」
――映画の最後に、改めて「夢はミュージカル女優」という話が出ていました。それは多才な生田さんにとって、いろいろな夢のうちのひとつですか? 特別な夢ですか?
「一番大きな夢です。アイドルとして4年間いろいろなことをやってきて、それでも将来的に一番やりたいのはミュージカル。舞台に引きつけられます。小学生のときに『アニー』を観てから、その気持ちはずーっと変わりません。目標にしていきたいです」
――日々のアイドル活動のなかで、その目標に少しずつでも近づいている実感はありますか?
「そうですね。乃木坂46をやることで“歌をより頑張りたい”とか、努力するようになったので。それがきっと生きてくると感じています」
――ピアノに関しては、どういう形に持っていこうと思っていますか?
「歌もピアノも音楽ということは一緒で、私は将来ずーっと音楽に接していたい気持ちもあります。歌手の方のバックでピアノを弾く活動もしていきたいし、自分がおばあさんになったときに音楽教室を開いて、歌もピアノも教えられるとか。何となくですけど、そんなこともできたらいいなと思います」
生田絵梨花
いくた・えりか●1997年1月22日生まれ、ドイツ・デュッセルドルフ出身、A型、160p。特技はピアノ。2011年に乃木坂46第1期生オーディションに合格。10thシングル「何度目の青空か?」でセンター。12thシングル「太陽ノック」が7月22日に発売。下町の女子ソフトボールチームを描くドラマ『初森ベマーズ』(テレ東/金曜24:12〜)にショパン役で出演。
いくた・えりか●1997年1月22日生まれ、ドイツ・デュッセルドルフ出身、A型、160p。特技はピアノ。2011年に乃木坂46第1期生オーディションに合格。10thシングル「何度目の青空か?」でセンター。12thシングル「太陽ノック」が7月22日に発売。下町の女子ソフトボールチームを描くドラマ『初森ベマーズ』(テレ東/金曜24:12〜)にショパン役で出演。
『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』
7月10日(金)全国46館にて公開
監督:丸山健志 配給:東宝映像事業部
7月10日(金)全国46館にて公開
監督:丸山健志 配給:東宝映像事業部
(C)2015「DOCUMENTARY OF 乃木坂46」製作委員会
結成3周年を迎え、着実に知名度を上げてきたアイドルグループ・乃木坂46。「AKB48の公式ライバル」として、ひたすら走り続けてきたメンバーたちの素顔に初めてスポットを当てたドキュメンタリー映画。密着取材で明かされる幼少時代、オーディションを受けた本当の理由、秘密の場所と時間。さらに、彼女たちに寄り添ってきた母親から明かされる真実。インタビューを重ねながら、それぞれが背負ってきた辛い思い出や、知られたくなかった過去の数々を振り返る。彼女たちの人生はオーディションに合格した瞬間から大きく動き出した。そこに待っていたのは、まぶしい光と陰の新しい世界。そして、同じように孤独と戦ってきた新しい仲間たちだった。