撮影/加藤千絵(CAPS)取材・文/根岸聖子
『デ☆ビュー』をきっかけに夢を叶えた“デ☆ビューっ子”でもある彼女が、ディズニー映画『シンデレラ』の日本語吹替え版声優としてシンデレラの声に挑戦。さらに、日本語吹替え版の王子役・城田優とともに歌う、日本版エンドソング『夢はひそかに(Duet version)』では、美しいハーモニーを披露。映画の見どころはもちろん、今年でデビュー10周年を迎える彼女に直撃インタビュー!
「シンデレラストーリーとはいえ、“自分で掴んでいる感”があって、おとぎ話よりも好きです」
――映画『シンデレラ』は、とても子供も大人も楽しめる、ある意味、リアリティもあって上品な作品に仕上がっていましたが、主役のエラの吹き替えを担当することに決まったときは、どんな気持ちでしたか?
「アニメの吹き替えや、ナレーションなどの声の仕事が大好きだったので、ジブリとディズニー作品の吹き替えはずっと私の中の“二大憧れ”だったんです。ジブリ作品は以前、オーディションを受けたこともあったんですが、ダメで。“その夢を叶えるのは難しいかな”と思っていたところに、まさかのディズニー作品。しかもヒロイン中のヒロイン、『シンデレラ』に名前を挙げていただけて。最初は驚いて、あとから嬉しさがこみ上げてきました」
――不安はなかった?
「なかったです。本職の声優さんと同じようにはできないけれど、私に声をかけてくださったということは、私らしいアプローチで成立すればいいのかなと。上手くやろうとか、考えずに臨みました」
――エラ(シンデレラ)を演じた女優リリー・ジェームズさんの声を意識したりしたんですか?
「最初は意識しようと思ったんですが、声自体、もともと違うので。私の声はどちらかと言えば幼い印象だと思うのですが、意外と本編がクールというか、大人っぽいシンデレラだったので、そんなに子供っぽくならないだろうなと思いました。とにかく、実写の吹き替えは初めてで、わからないことばかりだったので、監督の言う通りに演じようと思っていて。でも当日、『そのままでいいです』と言っていただけて安心しました」
――収録は何日くらいかけたんですか?
「2日間です。普通は1週間ぐらいかけるらしいんですけど、私がバタバタしていた時期で。久しぶりに短い時間でガッと集中したので、終わったあとはグッタリしました(笑)」
――映像化された『シンデレラ』については、どう感じましたか? お城での舞踏会で会う前に、実は森の中で一度会っていたというエピソードとか、おとぎ話という以上に、とても説得力のある構成になっていました。
「そうなんです。一度森で偶然会って、話をして、相手の考え方が素敵だと思った上で、王子様がまた会いたいと思ってくれる。女のコのサクセスストーリーであり、王道のラブストーリーになっているんですよね。舞踏会を抜け出して、部屋で2人で話すところも好きなシーンで。コソコソと浮かれた気持ちでやっていたので、演じていて楽しかったです(笑)」
――表情にも出たりしてました?
「自分が実際に演じていたらそうなっていただろうくらい、顔に出ていたと思います。逆に、声だけで表現しようという意識は、今回あまりなくて。自分がリリー・ジェームズさんになったと思って、王子やお継母さんを正面に見ながらお芝居している感覚で声を入れてました。感情移入もしやすかったし、鳥肌が立つようなシーンもあったのですが、感情がトーンに出るか出ないかぐらいのギリギリな感じだったかもしれません。声に感情が大きく出た方がいいのかとも思いましたが、アニメではなく、実写ということもあったので、気持ちは動いても、無理やり声の抑揚にしようとはしなかったです。『もう少し出してください』と言われるかも、とも思っていたんですが、『大丈夫です』と言っていただいて。なので、自然に、無理なくやらせていただきました」
――シンデレラとなる主人公エラについては、いかがですか?
「今までのシンデレラ像は、“耐えて耐えて、それが最後に報われてよかったね”っていうような、女のコらしいイメージもあったけれど、エラは強いし信念もあるし、愛情も深い。現代の女性としても、素敵だなと思えるような人が、ちゃんと王子に見初められている。シンデレラストーリーとはいえ、“自分で掴んでいる感”があって、おとぎ話よりも好きです。まま母や義理の姉妹たちが舞踏会での出来事を話しているときに、エラがフフフってなる勝ち気なところも、魔法が解けたあとの楽しそうな様子も、本では描かれていなかったところは特に、演じていて楽しかったです」
――そして日本版エンドソング『夢はひそかに(Duet version)』では、王子役の城田優さんとデュエットを披露しています。レコーディングはいかがでしたか?
「同じ日に別々のブースに入って録ったんですが、難しかったです。オリジナル版はもともと、リリー・ジェームズさんが一人で歌っているんです。だから、後半に向けて伸びる感じとか、彼女のテンポに合わせてオケがついていて、それに合わせて歌わないといけない。私たちがそのオケに歌声をはめる形だったので、こちら側が気持ちよく歌ったらオケからハミ出てしまったりすることもあって(笑)。英語と日本語の違いもありますし、2人とも必死で合わせてました。あんなに難しいレコーディング、初めてでした」
――えぇ!? ミュージカル慣れしていて、歌の達人でもある2人が!
「お互い、ミュージカル人間なので、合わせるとかハモることには慣れているんですけど、オケに合わせることはあまりないので。生オケでも録音でやるときも、大体はテンポに合わせてるんですね。でもテンポではなくオケに合わせないといけなくて、どこにどう言葉をはめてもいいけど、お尻は帳尻合わせないといけない。お互い難しくて『どうする!? どうする!?』って言ってました(笑)。いろんなパターンを合わせて、なんとか仕上がりました」
――他には、どんなことを話してましたか?
「ミュージカルをやってきた人間として、若手でもっと頑張らなきゃね、と。幅広い人にミュージカルに興味を持って欲しいんです。お互い、ミュージカル界を盛り上げたい意識は同じなので、こういう作品を一緒にできたのは嬉しかったです。映画を楽しむと同時に、相乗効果でミュージカルに興味を持ってくれる人が出てきてくれたら嬉しいですよね」
――以前のインタビューで、『映像作品に出ることの影響力を実感した』と言ってましたね。
「はい。映像で知って興味を持って、舞台に来てくださる人が結構いて。この間も舞台『いやおうなしに』で、小泉今日子さん、古田新太さんと私と、朝ドラに出演していたキャストがいたことで、地方公演にもたくさんお客さんが来てくれたんです」
――高畑さんは早い時期から“舞台に立ちたい”という夢を持っていたということですが、当時から、歌うことが得意だったんですか?
「全然! たいして歌えもせず、ダンスも踊れず、お芝居もしたことなかったんです。今思えば、よくあれで目指したなと(笑)。だからオーディションでも、私よりもスキルの高い子はたくさんいました。でも、そのときは『できないところがよかった』って言われて(笑)。可能性を評価してくれたみたいなんですね。とはいえ、デビューしてからはすごく大変でした」
――そこからがスタートで。
「いろんなレッスンを受けて思ったのは、特に歌は、先生によって言うことが違うんです。いいところは吸収しながら、あとは自分のスタイルというか、オリジナルですね。私の歌い方は、声楽科を出ている人に比べたら、ちょっとクセがあるし、ミュージカルだと通用しづらいんです。作品を選ぶ歌い方ではあるんですが、歌が上手い人はたくさんいるから、自分の個性があってもいいんじゃないかなと。そこを気に入ってくれる人がいれば、それが本望だと思ってました」
――今年でデビュー10周年を迎えますが、振り返ってみていかがですか?
「『問題のあるレストラン』で演じた、救いようのないキャラクターのなかに共感できる部分を見つけられたときも嬉しかったし、今はどんな役でもやってみたい。まだまだ体力もあるし、多少の無理もきくし(笑)。『今のうちにたくさんやっておいたほうがいいよ』と先輩たちにも言われてるんです。10代の頃はもっとトガッていて、『私はこうなの!』って見栄を張ってたけど、今は人の話も聞くようになりました(笑)。いろいろ言ってもらえるのも今のうちだ!と。私の場合、10年の間にもそんなに波がなくて、少しずつお仕事が増えてきたんです。これまでゆっくり地道にやってきたので、これからもたぶん、地道にやっていくんだろうなぁという感じです(笑)」
たかはた・みつき●1991年12月14日生まれ、大阪府出身。ホリプロ所属。05年に開催された『山口百恵トリビュートミュージカル プレイバックpart2〜屋上の天使』のオーディションで1万人近い応募者の中から主演の座を射止めた、まさにシンデレラガール。ドラマ『問題のあるレストラン』のBlu-ray BOX&DVD-BOXが5月20日に、映画『アオハライド』のBlu-ray&DVDが6月17日に発売。10周年を迎える今年は、年末にライブを行う予定。
映画『シンデレラ』4月25日(土)全国公開
誰もが知っている『シンデレラ』のロマンティックなイメージはそのままに、シンデレラの勇気と優しさから生まれる“奇跡の愛”が感動的に描かれていく。古くから語り継がれるおとぎ話を、これまでとは違った視点で描き直した今作では、“自分を救ってくれる男性を待ち続ける”という受け身なヒロインのイメージを一新。自らの意思で行動し、勇気を持って運命を切り開く、新たなシンデレラ像が誕生。日本語吹替え版の声優は、エラ/シンデレラを高畑充希が、王子/キットを城田優が担当。