SMAが製作する初の音楽×俳優×映画のインディペンデントムービー『飛べないコトリとメリーゴーランド』。SMA所属の姉妹ユニット「チャラン・ポ・ランタン」が音楽を手掛け、映画初出演を果たす今作は、現実と現実逃避の世界が入り混じる、ポップかつビターで共感ポイントいっぱいの一本だ。主人公・羽田コトリを演じた岡野真也さんと、コトリの同僚で重要な役割を果たす比嘉のぼる役を演じた渡辺佑太朗くんにインタビュー! オーディションをきっかけにSMAに入った2人に、当時の話も聞いちゃいました。
理想と現実のギャップは社会に出る年齢特有のものちっちゃな共感を積み重ねてもらえたら嬉しいです
――完成した作品を観た感想はいかがですか?
岡野「私は自分のアラ探ししかしないんですけど(笑)。形になったことは嬉しいですし、一人の人間を主演として演じられたことを誇りに思うので、いろんな方に観てほしいです」
――この映画の主人公・羽田コトリが「読書好き」「あずき好き」というのは岡野さんをイメージした当て書きじゃないですか?
岡野「まったくもって私ですね(笑)。私はあずき全般が好きなんですけど、コトリが好物の豆大福を食べるシーンが映画のなかでよく出てくるので、撮影前から街で和菓子屋さんを見つけると、必ず豆大福を買ってました。撮影中は“こんなに食べることはもうないだろう”って思いながら、ずっと美味しく食べてました」
――実際にご自身と似通っているところはありますか?
岡野「私も、“本が友達”って思えるぐらい読書が好きですね。映画のように本の世界に入り込んで、ということまでは無いんですけど、日常生活で無くてはならないものというところは一緒だなと思いました。本に没入して、多少なりとも日々の行動が影響を受けることもありますね」
――渡辺くんが演じた比嘉のぼるは、最初の印象は“キモい”感じなんですけど、だんだんとイケメンに見えてくるという。
渡辺「僕はのぼるほど納豆好きではないです。脚本はそれぞれに当て書きっぽくしているので、のぼるはこういうキャラクターなんだなって台本を読んで思いました。監督とは、ちょっと話したくらいなので、監督が僕を見抜いたというか…。不器用で、上手いこと物事をこなせない感じとかは似てるなと思いますね」
岡野「佇まいが監督とすごく似ているんですよ、兄弟みたいでしたね。監督に“似てますよね”って言ったときに、“僕たちもそう思っていたんだ”って。監督はたぶんこの役が一番好きなんだと思いますよ」
渡辺「監督もそう言ってくださいました」
岡野「最後に持っていきますからね」
岡野「佇まいが監督とすごく似ているんですよ、兄弟みたいでしたね。監督に“似てますよね”って言ったときに、“僕たちもそう思っていたんだ”って。監督はたぶんこの役が一番好きなんだと思いますよ」
渡辺「監督もそう言ってくださいました」
岡野「最後に持っていきますからね」
――2人とも主人公たちと同世代(新社会人)ですから、映画で描かれる“初めて社会に出て感じる厳しさ”をリアルに感じることも多いのでは?
岡野「私は大学に通ったので、アイタタタと思うこともありましたよ。周りの友だちを見ても思いますし、自分自身を省みてもそうでした。理想と現実のギャップは、この年齢特有のものじゃないですか」
渡辺「理想と現実は全然違っていて、もっとこうしたい、もっとできると思っていても、意外と全然できなかったり。社会のことを知っているふりをしていながら、実はぜんぜん知らなかったという感じがリアルですね」
渡辺「理想と現実は全然違っていて、もっとこうしたい、もっとできると思っていても、意外と全然できなかったり。社会のことを知っているふりをしていながら、実はぜんぜん知らなかったという感じがリアルですね」
――コトリが現実世界の仕事や恋愛で打ちのめされたときに逃げ込む心象風景の描写。チャラン・ポ・ランタンの世界観が活かされて、セットも独特で面白いですね。
岡野「あのシーンはほぼその場で決めました。チャラン・ポ・ランタンのお2人にお任せしてましたね。“監督、こんな感じでいいですか?”みたいに小春さんがサラッとアコーディオンを弾いて、ももちゃんがパーッて歌って、そこに私がコトリとして入っていく…もうそれだけだったので。このシーンは現実世界でこんな嫌なことがあったからココに来た、ということだけ決めて。江波くん(成田凌)の悪口を言っちゃえ、とか、それを歌にしちゃえっていう感じで。こんなにポップなアーティストさんの世界観のなかに入れたことが嬉しかったです。その撮影の日は一番不思議な日でしたね。」
――自分が現実世界でカベにぶつかってグルグルしているときに、そこから抜け出す方法は?
岡野「気持ちが落ち込んだときは、三島由紀夫を読みます。今一番ハマッている世界なので。そこに入れてもらって、安心というか、読んだあとはスッキリします。だから読まなきゃ!って思います」
渡辺「僕は、自分で自分をすごく責めて、“お前そんなんじゃダメなんだ”っていう自分との対話をした上で、“そうだよね”ってなったときに映画とか非現実の世界に入ることでプラマイゼロにします。妄想したり、映画の世界に入ったり」
渡辺「僕は、自分で自分をすごく責めて、“お前そんなんじゃダメなんだ”っていう自分との対話をした上で、“そうだよね”ってなったときに映画とか非現実の世界に入ることでプラマイゼロにします。妄想したり、映画の世界に入ったり」
――お2人はドラマ『アゲイン』で共演して以来だと思うんですが、印象は変わりました?
岡野「特に普段と雰囲気は変わらないです(笑)。渡辺さんはしょっちゅう新潟のアンテナショップにふらっと行って来た、みたいな感じでアイスや笹団子をお土産で差し入れてくれて、すごくありがたかったです。ずっと豆大福ばかり食べているので、笹団子の草の味で味変して(笑)」
渡辺「岡野さんは『アゲイン』のときから変わらずすごく真面目で。没頭する力がすごいなって思いながら見てました」
岡野「こんなに隣で褒められるのはちょっと…(苦笑)」
渡辺「岡野さんは『アゲイン』のときから変わらずすごく真面目で。没頭する力がすごいなって思いながら見てました」
岡野「こんなに隣で褒められるのはちょっと…(苦笑)」
――映画の見どころについてのアピールをお願いします。
岡野「映画はコトリのちっちゃな一歩を描いてるんですが、日常生活でも周りからしたらちっちゃなことでも、本人にとっては一大事ということは沢山ある。それを感じる気持ちは大切にしたいなと、この作品を通して思いました。見終わった後に素直に自分の生活を振り返って、“ま、それもいいかな”って思ったり、そういうちっちゃな共感を積み重ねてもらえたら嬉しいですね」
渡辺「登場するいろいろなキャラクターに起こる出来事は、それぞれどんな人も通る道だと思っていて。同世代の人が観てくれたら“こういう痛さもあるよね”と思うし、大人の人が観てくれたら“こういう痛さも体験してきたな”っていう懐かしさもあると思います。必ずどこかに共感する部分があると思うので、幅広い世代の方に見ていただけたら嬉しいです」
渡辺「登場するいろいろなキャラクターに起こる出来事は、それぞれどんな人も通る道だと思っていて。同世代の人が観てくれたら“こういう痛さもあるよね”と思うし、大人の人が観てくれたら“こういう痛さも体験してきたな”っていう懐かしさもあると思います。必ずどこかに共感する部分があると思うので、幅広い世代の方に見ていただけたら嬉しいです」
“今日は頑張らなきゃ”って思わなくていいオーディション緊張してても、みんな優しいから助けてくれますよ
――岡野さんは、2005年の『スーパー・ヒロイン・オーディション ミスフェニックス』(蓮佛美沙子、土屋太鳳が輩出)のファイナリストに選ばれたことがデビューのきっかけですね。
岡野「父親の強い勧めで受けたので、自分発信ではなく、芸能界への憧れもまったく無かったんですけど、オーディション自体がすごく楽しかったのを覚えています。審査員の方がすごく和やかな空気で、初めてのオーディションがここでよかったと思います。ずらっと大人の人が並んでいるんですけど、全然威圧感がなかったんです。私は親に言われて参加していたので、ちょっとだけ気楽な部分もあったんですけど。周りの女の子達が緊張しているのを見て、逆に私は大丈夫って思って、審査してくれていた方々と楽しいお話をしに行っていた感じでした。その気持ちは2次、3次と進んでも変わらなくて、さすがにファイナルは緊張しましたけど、“ああ今日も楽しかったな”と。当時、中学1年生でしたけど、そんなに沢山の大人が自分の話を聞いてくれるという機会はないですし、そういう威圧感のない、軽い空気を作ってくれていたんだと思います。あんまりオーディションが楽しいから、ファイナルのあと“もう一回違うところを受けよう”って密かに思ってました。それほど楽しかったんでしょうね」
――渡辺くんは一昨年のSMAの男性限定オーディション『ダンリョク』を受けて所属になりました。
渡辺「僕はずっと野球をやっていて、甲子園に出たいと思っていたんですよ。でも夏の最後の大会も始まっていないときに、チームの状況を見て、甲子園には行けないと思ったんですよ。これはムリだと思ってから、何にもやりたいことが無くなってしまって。この先何十年も何をもって生きていくんだろうって考えたときに、パッて“俳優になる”と。誰かに憧れていたというのもないですし、自分が行ける世界だとも思っていなかったんですけど、強烈になりたいって考えて、初めて見た事務所のホームページがなぜかSMAだったんです。それで、“もうここに絶対に入る”ってずっとSMAに履歴書を送ってたんですけど、ぜんぜん受かんなくて。男性限定の『ダンリョク』をやると知って、これで最後かなと思って応募したら受かることができたんです」
――オーディションを受けているときに心がけたことは?
渡辺「僕はイケメンでもなんでもないんで、とにかく目立たなきゃいけないと。前のりして新潟から東京に来て、原宿に行って、胸に『ふざけてない』って書いてあるTシャツを買ってそれを着てオーディションに行きました」
岡野「えー! スゴイ!(笑)」
渡辺「演技も歌も得意ではないので、とにかく目立とうと。『ふざけてない』Tシャツには“真剣だぞ”っていう気持ちも入っていて。前日にはカツ丼食べて、全部のゲン担ぎをして行きました。最終でも同じホテルに泊まって、文字入りのTシャツを着て、また同じ店でカツ丼を食べて、受かったときと同じ行動をして、最終に臨みました」
岡野「えー! スゴイ!(笑)」
渡辺「演技も歌も得意ではないので、とにかく目立とうと。『ふざけてない』Tシャツには“真剣だぞ”っていう気持ちも入っていて。前日にはカツ丼食べて、全部のゲン担ぎをして行きました。最終でも同じホテルに泊まって、文字入りのTシャツを着て、また同じ店でカツ丼を食べて、受かったときと同じ行動をして、最終に臨みました」
――オーディションを経て所属したSMAという会社について教えてもらえますか?
岡野「基本的に私たち主体で考えてくださいますね。学業にしても仕事にしても、勝手に決められてしまうことは無くて、必ず話し合いがあって、こちらが納得できるものを一緒に選択してくれるのはありがたいと思っています」
――特に印象に残っている選択は?
岡野「地元の高校に進学することを決めたときです。同年代で役者をやっている子は、進学を機に上京するケースが多かったんですけど、地元にいたいという選択に対して、快く“いいよ”と同意してくれたのが、今思えば良かったなと思います。今の自分の性格にしっかり自信もあるので、田舎の高校に行ったという選択は間違いじゃなかったと思います」
――スタッフと所属タレントの間が近い感じがしますね。
岡野「事務所のなかでもいたるところで声をかけていただけますね。同郷の方が結構多くて、田舎の焼き肉屋さんが美味しいよとか、ローカルな話を気さくにしてくださるのも面白いですね。最初にオーディションを受けたときから、印象は変わってないです」
渡辺「困ってるときや悩んでいるときに手助けをしてくれます。岡野さんが言ったように僕たち主体でやらせてもらえるんですけど、役の演じ方に悩んでいるときに、アドバイスや新しいアプローチをいただけたりするのが助かっています」
渡辺「困ってるときや悩んでいるときに手助けをしてくれます。岡野さんが言ったように僕たち主体でやらせてもらえるんですけど、役の演じ方に悩んでいるときに、アドバイスや新しいアプローチをいただけたりするのが助かっています」
――SMAは40周年を記念して、所属アーティストとスタッフが一体になって代々木公園で大きなフリーイベントを行いました。SMAにはお祭り好きなイメージがあります。
岡野「いい事務所ですよね! 私たちもこの映画のトークショーで参加しました。あんなことを無料でしてしまう事務所なんですからね。あと、いい意味ですごくフレンドリーです」
渡辺「末恐ろしいな、と」
岡野「(笑)」
渡辺「アーティストさんもそうですし、スタッフさんも何か楽しいことをやろうという気持ちが強いからこそ、いろんなイベントができるんだろうな」
岡野「私たちと一緒に楽しんでくれている感じがします」
渡辺「末恐ろしいな、と」
岡野「(笑)」
渡辺「アーティストさんもそうですし、スタッフさんも何か楽しいことをやろうという気持ちが強いからこそ、いろんなイベントができるんだろうな」
岡野「私たちと一緒に楽しんでくれている感じがします」
――これからSMA Teens Audition『HuAHuA』に応募しようと考えている人にメッセージをお願いします。
岡野「『ふあふあ』って書いてあるので、あまり“今日は頑張らなきゃ”って思わなくてもいいオーディションだと思うんですよ、きっと。今の自分にも言えることなんですけど、気張って行っても後には反省しか残らないので。私も最初はすごくボーイッシュなTシャツにGパンみたいな格好で行って、それでもきっと、楽しく話してる面を見てくださったんだと思うので、飾らずに行ったらいいと思うんです」
渡辺「何かを上手くやれなくても、スタッフさんたちはそれを見抜いて選んでくれると思うので、飾らずに一生懸命やればいいと思います。それで落ちても運が悪かっただけで、別にその人がダメだからということではないと思うので。力ますにフラっとやってくれればいいと思います」
岡野「オーディションに行ったら何とかなります。緊張しててもみんな優しいから助けてくれますよ」
渡辺「何かを上手くやれなくても、スタッフさんたちはそれを見抜いて選んでくれると思うので、飾らずに一生懸命やればいいと思います。それで落ちても運が悪かっただけで、別にその人がダメだからということではないと思うので。力ますにフラっとやってくれればいいと思います」
岡野「オーディションに行ったら何とかなります。緊張しててもみんな優しいから助けてくれますよ」
撮影/厚地健太郎
岡野真也●おかの・まや/1993年2月22日生まれ、栃木県出身。2005年『スーパー・ヒロイン・オーディション・ミスフェニックス』でファイナリストに選ばれ芸能界入り。映画『Another』(2012)、『俺俺』(2013)、『恋文X』(2014)他多数出演。ドラマ『アゲイン』、『ハードナッツ! 〜数学girlの恋する事件簿〜』などレギュラー出演以外にもゲストでも多数出演。その他、CMや舞台などでも活躍中。
渡辺佑太朗●わたなべ・ゆうたろう/1994年3月14日生まれ、新潟県出身。2013年SMA初の男子オーディション『ダンリョク』のファイナリストに選ばれ芸能界入り。昨年、映画『5つ数えれば君の夢』(2013/山戸結希監督)でデビュー後、ドラマ『アゲイン』ではレギュラーでチャンクマ役を演じて強い印象を残した。
7月4日(土)より新宿シネマカリテにてモーニング&レイトショー!
大学生の羽田コトリは大好きな豆大福を食べながら本を読むことが一番の楽しみだったが、居候先の叔父の勧めでインターンとして出版社で働き出す事に。そこで出会った江波と恋に落ちたコトリは、今まで味わったことのない幸福感や充実感を得るが、いつしか心配、嫉妬、独占欲に苛まれ、ふわふわと現実逃避世界と現実世界を行ったり来たりしてしまうようになり…。カリテ・ファンタスティック! シネマコレクション 2015 にて6月6日先行上映。