映画監督 成島出 インタビュー | Deview-デビュー
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監督作『八日目の蝉』が日本アカデミー賞最優秀監督賞を含む10部門で受賞、映画『ソロモンの偽証』では新人・藤野涼子をはじめ多数の新人俳優を抜擢した成島出監督。5月27日公開の最新作『ちょっと今から仕事やめてくる』(全国東宝系ロードショー)では福士蒼汰、工藤阿須加という旬な俳優の起用で話題を集める。日本映画の第一線を走る監督に、俳優の起用へのこだわり、求める俳優像、俳優志望者に必要なことについて話を聞いた。
成島出監督
「チャンスは必ずある。それを見極める力も必要ですが とにかく稽古を積んで、先ずは『役者になる』ことが大事」
――映画『ちょっと今から仕事やめてくる』の作品作りにおいて、最も大事にしたポイントはなんですか?
「主演の二人とは初めてのお仕事だったので、二人の俳優としての演技力をいかに高められるかがポイントでした。3月からリハーサルやワークショップをスタートして準備をしていきましたが、本人たちも初めての経験で新鮮だったようです。映画の俳優としてどこまでやってくれるか…『八日目の蝉』のときの井上真央さんと似ていて、俳優として脱皮したい、一皮むけたいという時期だという認識があったので、彼らにとっていい意味で転機にしてあげたいという思いで寄り添いました」
――具体的には二人とはどんな準備をしたんですか?
「リハーサルをいつにもまして綿密に頑張りました。シナリオにない部分(実際にあるシーンの前の部分)を稽古としてやるんですが、やっていくうちにいいハーモニーを奏でるようになっていきました」
――今作のキャスティングでこだわった点を教えてください。
「『ソロモンの偽証』でもそうでしたが、今回は若い二人が初めてのキャスティングだったので、黒木華さん、森口瑤子さん、小池栄子さんら、成島作品の常連組と吉田鋼太郎さん、池田成志さんらのベテラン俳優で周りを固め、作品に安定感を出していく事を考えました。みんな本当に期待に応えてくれて助かりました」
――今回、映画には成島監督が指導しているVIVITの俳優たちも出演しています。
「VIVITの役者陣には本番前の稽古で代役をやってもらったりしていて、作品の中身を分かっているメンバーだったので現場では助かりました。若い役者達も現場にいることで勉強になる部分もあっただろうし、代役で第一線の役者と対峙して刺激になったと思います。いいものを見ると、何が悪いかが分かる。そういう経験をどんどん積んでいってほしい。そして演出や演技等に対して、自分なりに批評する目も持って臨んでほしい。今後も現場に起用して、その中からスターが出てきてほしいと思ってます」
――若い俳優たちに現場で指導をする際に大事にしていることは?
「やはり俳優の見極め。その俳優が、魚で例えるならマグロなのかイワシなのか。それぞれのネタを間違えず素材に応じた演出をする。寿司職人で言うと、新鮮な魚が旨いかというとそうじゃない。味を決めるのは、『手当て』と呼ばれる職人技であるのと一緒です」
――監督は、自身の作品にどんなタイプの俳優を起用したいと思いますか?
「役者というのは、シナリオに書かれていることの魂を伝える仕事。タイプというより、スクリーンに出た時に説得力がある人を起用したいと思っています。そして役者として進歩し続ける人。年齢に関係なくどんどん良くなってると思える人はたくさんいます。40歳、50歳を越えても進化し続ける人は魅力的なんです。樹木希林さんがまさにそうで、ガンの宣告後もどんどん進化し続けている。命と芝居を分け合ってるというか命を削って芝居をしてると感じて、凄まじい。俳優はそういう役者を目指してほしいですね」
――今回の募集で出会いたいのはどんな俳優ですか?
「年齢を問わず未来の映画界を背負って立つ逸材と会いたい。ワンチャンスは必ずある。そのチャンスをものにできるか! それまでにしっかり力をつけていられるか。チャンスが来るタイミングはそれぞれ違う。早い人もいれば、遅い人もいる。チャンスじゃないのにチャンスだと思ってしまう人もいる。チャンスを見極める力も当然必要ですが、とにかく稽古を積んで先ずは『役者になる』ことが大事」
――俳優志望者に普段から心がけてほしいこと。
「役者として大成するのは大変な道であるのは間違いないんです。トップで生き残ることができるのはほんの一握り。いずれにしても『実力』は必要で、まずは『役者になる』というのは『実力をつける』という事です。俳優の国家試験があったとしたら、合格できる力を持つことです。晩年で花咲く人もたくさんいる世界だし、志したなら簡単にあきらめず、努力を重ねていってほしい。トップに立つという事は苦しいことだが楽しいことだと思う。ぜひその経験を味わってもらいたい」
――ありがとうございました。

成島出 監督
なるしま・いずる●1961年山梨県生まれ。1986年、監督作『みどり女』でぴあフィルムフェスティバルに入選。1994年『大阪極道戦争しのいだれ』で脚本家デビュー。2004年『油断大敵』で監督デビュー。2011年『八日目の蝉』(主演/井上真央・永作博美)『連合艦隊指令長官山本五十六』(主演/役所広司)、2013年『草原の椅子』(主演/佐藤浩市・西村雅彦・吉瀬美智子)、2014年『ふしぎな岬の物語』(主演/吉永小百合・阿部寛 )2015年『ソロモンの偽証』前編・事件/後編・裁判(主演/藤野涼子)。2017年5月27日『ちょっと今から仕事やめてくる』の公開を控える。
映画『ちょっと今から仕事やめてくる』5月27日(土)より東宝系全国ロードショー

(C)2017 映画「ちょっと今から仕事やめてくる」製作委員会
 50万部突破のベストセラー小説の映画化作品。仕事のノルマが厳しく、青山隆(工藤阿須加)は精神的に追い詰められていた。疲労のあまり駅のホームで意識を失い、危うく電車に跳ねられそうになってしまう。すんでのところで隆を救ったのは、幼馴染みのヤマモト(福士蒼汰)と名乗る男。だが、隆には彼の記憶がまったく無かった─。大阪弁でいつでも爽やかな笑顔をみせる謎の男、ヤマモトと出会ってからというもの、隆は本来の明るさを取り戻し、仕事の成績も次第に上がってゆく。そんなある日、隆はヤマモトが深刻な表情で墓地行きのバスに乗車するところを見かける。不審に思った隆がヤマモトについて調べてゆくと、何と3年前に自殺していたことが分かる。それではヤマモトと名乗る、あの男は一体何者なのか?
一條恭輔&滝川ひとみ/「成島組のレギュラーになるのが目標です」
 映画『八日目の蝉』でアカデミー最優秀監督賞を受賞した成島出監督らが、所属俳優の指導を行なっている芸能プロダクション「VIVIT」。同社の第1回オーディションで合格し所属。5月27日公開の成島監督の最新作『ちょっと今から仕事やめてくる』(東宝:福士蒼汰・工藤阿須加)にも出演を果たした一條恭輔さんと滝川ひとみさんに、VIVITの俳優育成、そして成島監督の現場について聞いた。
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