映画『さよなら歌舞伎町』に見た女優人生いろいろ(3/5) | Deview-デビュー
2015年3月10日

 ラブホテルの1日を描いた群像劇『さよなら歌舞伎町』で、ポスターには前田敦子が染谷将太と2人で写っているが、劇中で彼女の印象は薄い。音楽プロデューサーを相手に枕営業をしつつ、ベッドシーンはなし。ラブホテルの映画で、他の女優は脱いで激しい行為も演じていただけに、不自然さが残った。

 もちろん、脱げばいいわけではない。だが、AKB48卒業後の前田はアイドルイメージをかなぐり捨て、女優業に打ち込んでると見えていたのに。『もらとりあむタマ子』で布団にうつ伏せで尻をかくシーンとか、大口を開けたアホ面でロールキャベツを食べるシーンで、ある意味ヌードより恥ずかしい姿も見せて本気を感じていたのに。

 『さよなら歌舞伎町』では1人だけ、アイドルとして守られてる感じがした。この逆戻り感。フルヌードまで行かなくても、ラブホでまったく肌を露出しないのは。前田敦子が脱ぐとなれば大ニュースで、本人より事務所の意向かもしれない。でも、これでポスターなどに一番大きく載っていては、客寄せパンダと見られても仕方ない。

 映画自体は見ごたえあった。人生のやるせなさに胸が震えた。一番印象に残ったのは韓国女優のイ・ウンウ。同棲している同朋の彼氏に内緒でデリヘル嬢をしていて、ブティックの開店資金が貯まり1人で帰国することを決めた。この日が最後のお勤め。常連客に天使のような振る舞いを見せながら、美しい裸身も晒していた。

 脱いだからいいわけでもない。でも、女優としての覚悟はやはり現れる。『ベロニカは死ぬことにした』の真木よう子や『蛇にピアス』の吉高由里子のヌードにも女優魂を感じた。脱いでないシーンでも気迫が違った。後の彼女たちの成功につながっている。それに比べたら『さよなら歌舞伎町』の前田敦子には、どうしても物足りなさを覚えた。

 一方、この映画には掘り出し物もあって…。(続く)


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