2015年1月14日
美少女アイドルとして一斉を風靡してから、映画で主演女優賞を獲る実力派へうまく転身した20代を経て、30代の宮沢りえはドラマや映画から遠ざかっていた。その間、野田秀樹、長塚圭史、蜷川幸雄らの演出する舞台に毎年出演していた。
30歳で初めて、野田秀樹の舞台に立ったときのことを、彼女は東京新聞掲載のインタビューでこう振り返っていた。
「演劇の方(舞台役者)の表現力に圧倒されて悔しくもあって。自分の将来のビジョンとして40歳になったときに舞台に立っていられる人間になりたいと、目標を持ちました」
そのために実践と経験が必要と、舞台に立ち続けたのだという。確かに、ごまかしのきかない環境の中で、確実に演技力は磨かれる。小日向文世、佐々木蔵之助、阿部サダヲなど劇団出身の役者を見ればわかる通り。
ただ本格的な舞台となると、稽古は1ヵ月以上前から行う。それでいて、テレビなどと比べて観てもらえる人数は限りがあり、ギャラも高くない。ビジネスとしては割りが合わない。そんな世界に、日本中に名を知られ、すでに映画で演技力を評価されていた宮沢が身を投じたわけだ。
そして現在、7年ぶりに主演した映画『紙の月』が公開中。バブルがはじけて間もない1994年、銀行の契約社員として働く平凡な主婦が、遥か年下の大学生と不倫関係に陥る。苦学生の彼への学費援助に始まり、豪勢な逢瀬を重ねるうちに金銭感覚が麻痺して、顧客の預金を使い始めて…。
原作は『八日目の蝉』などの角田光代、監督は『桐島、部活やめるってよ』で映画賞を総なめにした吉田大八。原田知世が主演したドラマ版が面白かったこともあり、観に行くことにした。25年以上興味のなかった宮沢りえの主演映画を初めて…。(続く)
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