『Nのために』榮倉奈々と若手俳優たちの切なさ(5/5) | Deview-デビュー
2014年12月10日

 クライマックスに入る『Nのために』で、2004年に起きた高層マンションでのセレブ夫婦殺害事件の真相が明かされていくようだ。

時間軸の入り組んだドラマで、最初は希美との関係が分からなかった犯人(実は違うらしい)の西崎真人(小出恵介)と、居合わせた安藤望(賀来賢人)は共に、希美と同じボロアパートの住人だった。

 小出は月刊デ☆ビューの誌上オーディションからデビューして、もう9年目の30歳。

『ROOKIES』の御子柴キャプテンや『JIN−仁−』の綾瀬はるかの兄などを演じてきた。賀来は25歳で、朝ドラ『花子とアン』のヒロインの兄役など、こちらも出演作多数。だが、榮倉や窪田同様、ここまで目を見張る演技は個人的には記憶にない。

 劇中の2004年の時点で、西崎は小説家志望の留年大学生。我が道をブレずに行く芯が通っているが、実は子供の頃に母親から虐待を受けていた。夫のDVを受けるセレブ妻の野口奈央子(小西真奈美)との悲しい共鳴のような恋が痛々しい。安藤は上昇志向の強い大学生で、登場人物では唯一陰を持たないが、希美への恋心は報われずにいる

。  希美、成瀬、西崎、望。すべての“N”の切なさが募っていく。そして、全員が居合わせた殺害事件の真実は? いつの間にか最も目が離せないドラマになっていた。ベテランではない4人の役者が、純粋に演技で魅了しているのも意外となかったこと。

 何度も繰り返すが、この4人がここまでデキる役者だとは思わなかった。それぞれアイドル的人気もある分、演技が過小評価された面もあるにせよ、『Nのために』で全員一気に開花したのはなぜか?

 それぞれ培ってきたものは当然あって、タイミングが重なったのかもしれない。それ以上に、演技は互いの出方を受けてのやり取り。良い演技には、より良い演技で返す。そんな相乗効果で良さを引き出し合っているようだ。実に絶妙なキャスティングだった。最終回までに、切なさを越える何かも生まれるだろうか。(終わり)


戻る
×