『Nのために』榮倉奈々と若手俳優たちの切なさ(2/5) | Deview-デビュー
2014年12月5日

  映画化された『告白』などで知られる湊かなえの小説が原作のドラマ『Nのために』は、当初構図がわかりにくかった。

話の軸は2004年に東京の高層マンションで起きたセレブ夫婦殺害事件だが、描かれるのはその5年前の瀬戸内海の小さな島での出来事から、犯行を自供した男が懲役を終えて出所する10年後にまで渡っていて。

 三つの時代が交錯するうえ、瀬戸内海での話には犯人の男もセレブ夫婦も出てこないため、主人公の杉下希美(榮倉奈々)とどんな関係なのか見えない。ただ、登場人物たちがみな、名前の頭文字にNが付くという。

 2000年の瀬戸内海の島では、裕福な家庭を突然追い出された高校生の希美が、精神崩壊しそうな母親の面倒に苦しみながら、ギリギリの生活をしていた。友達もそんな境遇に陥った希美から離れていった。

 そんな中で、クラスの前の席に座る成瀬慎司(窪田正孝)だけが、変わらず接してくれて。希美が「他の島が邪魔で水平線が見えない」と話すと、高台の小屋に連れて行ったり。彼は島で一番の料亭の一人息子だが、継ぐつもりだった料亭は経営不振で閉店になり、進路について悩んでいた。

 辛い現実の中で、希美と成瀬は島の畑道を自転車で2人乗りしたり、大学進学の資料を取りにフェリーで街に出たり。「大人になったら、どうなっとるんやろ。今より楽しいとええなぁ」。瀬戸内海の美しい光景を背に、そんな他愛ない会話をしながら。恋愛的な感情は出さず、友達の距離のままで。

 入り組んだストーリーはさておき、2人がまぶしくて切なかった。小さな幸せを探す互いの想いが寄り添う一瞬。辛い日々だからこそ、何でもない時間が宝石のように輝いていて。そんな場面で泣かせる榮倉と窪田。いつからこんなに良い役者になっていたのか。(続く)


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