『黒服物語』中島健人の人の引きつけ方(2/5) | Deview-デビュー
2014年11月20日

 2009年に公開された佐々木希の初主演映画『天使の恋』は印象深い。当時21歳にして女子高生の役。

余命少ない35歳の大学講師とのラブストーリーで、演技経験のなかった彼女は芝居以前に滑舌もおぼつかなかったが、そんなことはどうでもよく思えるほど、圧倒的な輝きに溢れていて。

 それから5年、数々のドラマや映画に出演してきたが、その美貌に演技力が追い付いてこない。一部の酷評は言い過ぎで、『TOKYOエアポート』のダジャレ好きな管制官役など、なかなか面白かったが。とはいえ、現在出演中の『黒服物語』のキャバ嬢役はどうも物足りない。演技が上手いかどうかでなく、存在感が薄いのだ。ヒロインのポジションなのに。

 佐々木が演じるのは、舞台となってるキャバクラのNo.1キャバ嬢・杏子。主人公で3浪決定の予備校生だった小川彰(中島健人)が酔いつぶれた夜の街で彼女に出会い、ひと目惚れ。そして、同じ店の黒服に。

 店では杏子の指名は引っ切りなし。なけなしの金で指名する客もやさしくもてなす。一方、医者の息子でお坊ちゃん育ちの彰には「あなたはこの世界の人間ではない。辞めなさい」と厳しく言ったりも。でも、そのすべてがどうにも表面的に見える。与えられたセリフを言ってるだけというか。

 たぶん杏子役に求められるのはNo.1の気高さとやさしさに、その裏の厳しさも併せ持った女性像。

文字にするといろいろだが、要はひと目でNo.1と分かるたたずまいだ。同じ原作者(倉科遼)のキャバクラもの『嬢王』シリーズでは、蒼井そらや原紗央莉が担ったポジションで、彼女たちにはそれがあった。

 佐々木希は美しさはとび切りきりなのに、印象は弱い。セクシー女優にあった存在感が、なぜトップタレントの彼女に欠けるのか? 単に胸の大きさの問題ではないだろう。

 ともあれ、『黒服物語』の主人公は黒服役の中島健人。彼は観ていて面白い。(続く)


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