映画『るろうに剣心』のキャスティングの成功と問題点(6/6) | Deview-デビュー
2014年10月31日

 志々雄真実の率いる特攻部隊“十本刀”の筆頭で、剣心と互角に渡り合った瀬田宗次郎。米問屋の妾の子として生まれ、幼い頃から虐待を受け続けたため、感情を封印し、喜怒哀楽の“楽”以外が欠落している。そのため、あどけない顔でニコニコしながら人を殺す天才剣士…というキャラクターだ。

 この役を演じたのが神木隆之介。誰が見たってピッタリだろう。きれいな顔立ちと天才っぽさと。

本人は役が決まる以前から、原作の宗次郎が表紙の巻を読み、映画の続編があれば宗次郎を演じたいと「勝手に役作りをしていた」と語っている。

 外見のイメージが合っていても、何もせずに天才剣士ぶりは出せない。実際に役が決まってからは、ひたすら殺陣を練習したとか。宗次郎は剣心との最初の戦いでは刀を折って優勢で終わる。映画の前作から殺陣をやり込んでいた剣心役の佐藤健を、圧倒するぐらいにならなければ…と。確かに、2人の対決の目まぐるしいスピード感は圧巻だった。

 神木は実はかなりオタクとの噂もある。宗次郎を演じるに当たり、「アニメでの日高のり子さんの声のイメージも参考にしてます」と何かのインタビューで語っていた。

 21歳の神木だが芸歴は15年。子役時代は“かわいい男の子”役で引っ張りダコだった。ドラマ『あいくるしい』では本当に愛くるしかったし、映画『お父さんのバックドロップ』では健気さで泣かせた。

 声替わりをする頃には消えていく子役も少ない中、神木は高校生以降も『SPEC』の不敵なスペックホルダーや、大評判になった映画『桐島、部活やめるってよ』の冴えない映画部員など多彩に演じて、役者としての評価を高めている。それは単にキャリアの長さや、きれいな顔立ちのまま成長したことが理由ではないだろう。瀬田宗次郎と一体化した彼を観ると、そう思えた。(終わり)


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