映画『るろうに剣心』のキャスティングの成功と問題点(5/6) | Deview-デビュー
2014年10月30日

 原作者の和月宏伸が「扱いにくい」としていた、剣心の師匠・比古清十郎。原作では、剣心たちが志々雄一派との決戦に出向いた際、ヒロインの神谷薫たちが身を寄せる旅館・葵屋を守る役を担った。弟子の剣心に頼まれて。

 そこで十本刀の1人・不二と戦って倒したが、この不二は身長8mを越える巨人。さすがに実写映画では出てこないだろうと。そこは予想通りだったが、代わりにというか、福山雅治の演じる比古が剣心に稽古をつけるシーンがあんなに長いとは。

 奥義だけでなく生き方も剣心に説いていたが、「伝説の最期編」前半のこの2人のシーンは、正直退屈だった。早く戦いに行ってくれと。そのテンポ感のなさが「京都大火編」より拍子抜けした原因。結局、志々雄真実と戦うメインイベントはそれなりに描かれていたものの、セミファイナル的な剣心たちと十本刀の戦いは見どころが少なくなって。

 せっかく福山ほどの大物が出るわけだから(剣心役の佐藤健の希望だったとか)、カメオ出演ではもったいない。何しろファンの数がケタ違いだ。興収を考えたら、彼の出番を増やしたい事情はわかる。剣心との殺陣で、福山が相当に力を入れて臨んだことも見て取れた。

 でもやはり、作品内で比古はジョーカー。エースの剣心は別にしても、キングやジャック格の左之助や斎藤、敵ながら魅力ある十本刀をもっと描いていたほうが面白くなっていたはずと、原作ファンとして思う。

 ところで、十本刀の筆頭で剣心と二度に渡って戦った瀬田宗次郎を演じたのが、神木隆之介。これがハマリ役揃いの『るろ剣』の中でも一、二のハマりっぷりだった。(続く)


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