『ぴんとこな』玉森裕太のハネるとき(6/6) | Deview-デビュー
2013年9月2日

 『ぴんとこな』の恭之助(玉森裕太)は歌舞伎の名門の御曹司だが、やる気に欠けて稽古もさぼりがち。対照的に、一弥(中山優馬)は一般家庭から歌舞伎界のトップを目指し、あらゆる努力を重ねてきた。

 一弥にライバル意識を持った恭之助が急に稽古に打ち込み始めても、一弥には負けない自信が。でも2人で舞台に立つと、恭之助は楽しそうに踊り、観客も彼ばかり見ている。自分を応援してくれてるあやめ(川島海荷)さえも。そうさせるのが「ハネる」ということ。生まれ持っての華。

 実際そういうものはある。個人的に思い出すのが、上戸彩が中学生の頃に所属していたZ−1という4人組。全員「国民的美少女コンテスト」出身ながら、デビューしたての横一線で無名。そんな中でも、気づくと上戸にばかり目が行った。取材のソロ撮影でも、当時フィルムで上がってきた写真を見たら、上戸の分だけやたら多かった。カメラマンも自然とシャッターをたくさん切ってしまったよう。10年以上が経ち、今も芸能界で活躍しているのは上戸だけだ。

 『ぴんとこな』では、一弥は逆に「うまいけど華がない」と言われ、努力だけではどうにもならないものを持つ恭之助に敗北感を覚える。天才に勝つ術はあるのか? というテーマで歌舞伎のライバル関係を描くのも面白いと思った。そしたら、一弥が先輩の役者に「お前はお前で楽しめばいいんだよ」とか言われて、何となく持ち直して。何じゃそりゃ?

 “ぴんとこな”は「男らしさと憎みきれない色気を併せもつ二枚目の役柄」との歌舞伎用語。それは玉森にも中山にも漂うが、ストーリーに生きてない。歌舞伎も恋もハネない。自分は川島海荷がかわいいから観るけど、正直観ても観なくてもいいドラマ。それはジャニーズファンも一緒だろう。

 『半沢直樹』のような練ったドラマを、若者向けには作れないものか。若者じゃない人間が言うのもナンですが。
(終わり)


戻る
×