2013年1月23日
ドラマと映画、あるいは音楽や文学などの最大の違いは、繰り返し鑑賞されるのを前提としてないこと。ドラマもDVD化はされるが、10数話を改めて見直すのは少数派。『ローマの休日』や『七人の侍』がモノクロ映画ながら、いまだ“名作”として愛されてるのに対し、ドラマは放送されたらおしまい。せいぜい高視聴率の数字が記録に残るぐらい。低視聴率だと批評すらされず忘れられる。
『ゴーイング マイ ホーム』最終回の視聴率は、下がり続けて4.5%まで落ちた前回から少し盛り返した。と言っても6.0%。ネットニュースでも「山口智子の復帰ドラマ最終回は6.0%」と失敗作扱い。
でも、観ていた者には山口うんぬんは関係なく、地味でも良いドラマだった。最終回では、阿部寛が父の通夜を仕切った後、1人棺の前で「もっといろいろ話しておけば良かった」とむせび泣き、妻の山口が自然な笑顔でハンカチを差し出しながら「後悔はそこに愛があったからでしょ?」と、肩を寄せたり。さり気ない暖かさが最後まで出ていて。
もちろん、CM収入で成り立つドラマは視聴率に背は向けられない。でも“作品”としては、視聴率がすべてでない。何度か取り上げたが『鈴木先生』は視聴率2%台続きながら、テレビ界の各賞を受賞し、映画版が公開中だ。
あれはテレビ東京だったから? そういう面もある。でも、冒頭挙げた『めがね』の源流も低視聴率ドラマだった。荻上直子監督がこの前に手掛けた『かもめ食堂』と共に小林聡美・もたいまさこ主演だが、これは日本テレビのドラマ『すいか』からの流れ。企画担当の霞沢花子氏が、スタッフとして参加していて。
『すいか』は平均視聴率8.9 %。小林はゴールデンタイムの主役には地味と言われた。でも、このドラマの空気感が映画に引き継がれた。『ゴマホ』もなかったことにされるのは惜しい。
(終わり)

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