どん底を見てきた朝ドラのヒロイン(1/5) | Deview-デビュー
2012年10月17日

 演技している姿を「頑張ってるな」と思われたら、良い演技ではない…と言われる。役者自身の頑張りを感じさせるのは、役になり切って自然に演じられてない証拠だと。

 確かにその理屈、演技論としては正しい。でも、「頑張ってる」演技が良いと感じることも実際あって。たとえばアイドル映画のように、アイドルが役を演じる姿自体を鑑賞するのが目的に近い作品。AKB48勢がヤンキーに扮した『マジすか学園』などが典型的だ。ファン以外は引くこともあるが。

 あとは、演じる役もひたすら頑張ってる設定の場合。今月からスタートしたNHK朝ドラ 『純と愛』で、夏菜が演じてるヒロイン狩野純がまさにこれ。ホテルの就職試験の面接で、入社希望理由を「社長になりたいから」と話し、面接官である重役たちの態度に腹を立て「携帯ぐらい切っとけ! 履歴書でなく私たちを見ろ! それでもホテルマンか!」とまくし立てたりするキャラだ。

 夏菜の演技は肩に力が入り気味だが、純も肩肘張って生きてる子だから、空回りするほどの必死さは、むしろ役とシンクロする。そして、新人女優の成長ドキュメンタリーとしても観られるのが、朝ドラ本来の醍醐味。菅野美穂や竹内結子や石原さとみらも、新人時代に奮闘ぶりを見せてきた。

 このところ『ゲゲゲの女房』の松下奈緒、『おひさま』の井上真央、『カーネーション』の尾野真千子、前作『梅ちゃん先生』の堀北真希など、すでに実績ある女優をヒロインに起用することが増え、視聴率的にも当たっていた。夏菜は久々の原点回帰。かつ、過去にないほど必死加減が強い役。新人がハマるにはもってこいだ。

 ただ、夏菜のデビューは2006年。新人といっても芸歴はあり、現在23歳。朝ドラヒロインに辿り着くまで紆余曲折あって…。
(続く)


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