『桐島、部活やめるってよ』の10代役者群像(2/5) | Deview-デビュー
2012年8月14日

 かつて日本サッカーの象徴だった中田英寿が、結果的に最後の試合となったドイツ・ワールドカップのブラジル戦の後、センターサークルで仰向けに倒れ込んだまま、長々と宙を見つめている場面があった。

後に、この大会で引退すると最初から決めてたことを知り、サッカー人生の終わりにフィールドで大の字になってた彼の心情が、ほんの少し分かった。

自分がたかが部活を引退したときですら、喪失感は大きかったのだから…と。

 公開中の映画『桐島、部活やめるってよ』は、早大生だった朝井リョウによる小説が原作。

小説すばる新人賞のベストセラーで、青春モノ好きとして題名から気になっていたが、読みそびれたまま試写を観た。

 バレーボール部のキャプテンで成績も優秀、おまけに彼女は校内一の美女ときている学校のスター桐島が、突然部活をやめたとのニュースが駆け巡る話。

ならば、その桐島が主人公かと思いきや、映画に桐島という人物は登場すらしてない。

名前は何度も出てくるが、本人は学校に姿を現さず、彼女や親友も連絡が取れなくなっていて。

 騒動の波紋は、バレー部員、桐島の友達や彼女はもちろん、スターの桐島と何の接点もない、校内最下層の映画部にまで広がっていく。

その映画部で自主制作作品を撮る前田涼也役の神木隆之介が、主役のポジション。

橋本愛は、桐島の彼女の友達のバドミントン部員・東原かすみ役で、前田とは中学からの同級生の設定。

 青春映画に期待するものは、ある種の甘酸っぱさやホロ苦さだ。

高校生が部活をやめるのは一大事。

そこにフォーカスしたタイトルには甘酸っぱさの気配があったが、実際はそんなものは排除されていて。もっと生々しい青春が描かれていた。
(続く)


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