2012年8月2日
『ヘルタースケルター』の撮影密着ドキュメントで、沢尻エリカが現場を勝手に飛び出す場面があった。「分かってくれないなら戻らないつもりだった」「映画が完成しなければ大問題だけど、そうなったら女優を辞める覚悟はしていた」などと話していて。
とか言われてもね。率直な話、周りのスタッフには迷惑千万な女優だろう。だが、外野で見てる分には面白くもある。
映画の中で出た「スターは奇形だから興味深い」という意味で。
そして沢尻は「りりこを演じるのがどれだけ辛いか。どんどん不安になっていく」とも語っていた。現場を離れても、深層心理で役とつながっている。家に返っても役のことを考え、台詞の練習に没頭して「寝た記憶がない」と。
ここでまた、『ダークナイト』でジョーカーを演じ、薬物中毒死したヒース・レジャーを思い出した。
彼も冷酷非道なジョーカーの役作りに打ち込み、「疲れてるのに眠れない」と語っていたから。演技は突き詰めると、そこまでやらないといけないものなのか。
演技に限らず、表現者が10伝えようとしたら、どう頑張っても観る側に伝わるのは3か4に過ぎない――という話がある。伝わるものを10にしたければ、30も40も出さないと。そこまで行くと、命を削る世界なのだろう。沢尻の「役が抜けない」との休業理由も納得はできる。
それだけ打ち込んだ映画も結局、観る側には娯楽、あるいは暇つぶしに過ぎないという宿命。
そこも、全身整形までしながら大衆に飽きられていくりりこと、リアルに重なった。
沢尻自身、女優としての性と同時に、スターの座への執着もあるはずで…。
(続く)

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