2012年2月7日
公開中の映画『しあわせのパン』は、北海道は洞爺湖ほとりの月浦という街が舞台。オーベルジュ式のパンカフェを営む夫婦を、原田知世と大泉洋が演じている。春夏秋冬、訪れる客との物語。
お調子者イメージを封印した大泉の寡黙な夫ぶりもいいが、原田知世のやさし気なたたずまいが、この映画の空気を作っている。
夏に訪れた客は、彼氏に沖縄旅行をすっぽかされ、1人で真逆の北海道を訪れたOL。仕事でも恋愛でも見栄を張って背伸びしてきた彼女に、原田が「素朴なパンもいいですよ」と語り掛けたり。OLの心が柔らかくなっていく。そして観ている者の心も…。
派手なアクションもSFXや3Dもないが、気持ちが暖かくなる映画。最初の“絆”の話ではないが、今こういう映画が染みる人は多いかも。その暖かみの中心に原田知世がいる。これも40代まで年齢を重ねたからこその空気感だろう。
かといって加齢感はなく、『時かけ』の頃に戻ったようなベリーショートの髪も似合う。撮影の合間、月浦の草原で写真を撮る後ろ姿に、大泉は「天使だ」と言ったとか。
ちなみにパンカフェで出てくる料理も、実においしそう。夏野菜のパーニャカウダ、冬野菜のポトフ、かぼちゃのポタージュ、リンゴのはちみつパン…観ていて腹が鳴る。仕事帰りにフラッとこの映画を観て、終わってから何かおいしいものを食べに行けば、いい1日になりそうだ。
あと、原田知世の隠し味は声。5分番組『生きるを伝える』などナレーションの仕事も多いが、この映画も冒頭、彼女が絵本を読むところから始まる。その透き通った声が心地よく耳に残り、ブレンディ…って感じだ。(終わり)

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