2012年1月5日
水樹奈々はシングル曲の作詞をほぼすべて、自ら手掛けている。今年8月にリリースされ、オリコン3位となったシングル「純潔パラドックス」もそう。
この詞には“空谷(くうこく)”や“天泣(てんきゅう)”など古語が多く使われ、和歌のよう。自身が主演したアニメ『BLOOD-C』のテーマで、アニメでは毎話のサブタイトルが「あまつかせ」「ひとはいさ」など百人一首のフレーズから取っていたので、歌もならって文語調にしたのだとか。「主人公が巫女で刀で戦う、和のイメージだったし」と。
言うのは簡単だが、そんな言葉でどう詞を綴って行ったのか。 たとえば“空谷”は“空谷の跫音(きょうおん)”という言葉から取っている。意味の説明は省くが、アニメのシナリオから連想した、人がいなくて寂しい情景を表す言葉を探して本を何冊も読み、見つけたのだという。詞の中のたったひと言のために。
そんな言葉をいくつも探して一つの詞に…。気が遠くなる作業だ。しかも探したからと言って、イメージ通りの言葉が必ず見つかる保証もない。でも、彼女はやり遂げた。歌入れのギリギリ直前まで時間をかけて。 「詞が進まないと“そんな人間にベッドで寝る資格なし!”と床で寝たり、自分を追い込みました」
その追い込み方はやや意味不明だが、求めるものがあり、辿り着くために最も困難な道を行くか、妥協して歩きやすい道を行くかという状況で、水樹奈々は常に困難な道を行く選択をしてきた。
イチ声優が東京ドームにまで到達したのは、21世紀の音楽シーン最大の奇跡と言ってもいい。それは結局、目の前のことを一つ一つ妥協せず乗り越えてきた積み重ねで、行き着いた場所だった。大晦日には、これも初出場のときは奇跡に思われた紅白歌合戦に、連続3回目の出場を果たす。
(終わり)

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